間接キス
歩花を連れ、海の方へ歩き出す。
広い駐車場に差し掛かり、そこには軽自動車の“エフリイ”とか“アトレイ”など車中泊向けの車が
中でも中型から大型のキャンピングカーが
でも、俺としては『X-VAN』でも十分だと思っている。――ただし、ひとりなら。ソロ車中泊なら『X-VAN』が最高峰とネットでも評判だ。でも、もしも歩花と車中泊をするなら、断然キャンピングカーが良い。残念ながら購入するお金なんてないけど。
精々観察くらいしかできず、もどかしい気持ちで更に先へ進む。
穏やかな海には防波堤が橋のように伸びている。多くの釣り人で
少し進んだ場所にベンチがあったので、そこへ腰を下ろす。歩花も密着するように俺の隣へ。
「俺も釣り具があったら、釣りしたいなぁ」
「うんうん、わたしも興味ある。というか、魚を釣って自分で
「釣りは、小学生の頃に少しだけ
「うあー、それ聞くとちょっと怖いかも」
「でも、釣りはアリだね。道具なんて釣具屋か最低限なら百均で簡単に
「そうなの~? 知らなかった」
「この副港なら、アジとかメバルが釣れるようだし、練習してもいいかもな」
「うん。何事も挑戦だよねっ。あ、ちょっと
歩花は、楽しそうに立ち上がり近くの自販機へ向かった。コーラを購入し、戻ってきた。俺の分はなしかぁ、自分で買おうかなと席を立とうとすると、歩花に止められた。
「ん、どうした」
「ちょっと待って、お兄ちゃん」
行く手を
「へ……歩花?」
「はい、お兄ちゃん。飲んで」
「えっと……」
この缶、たった数秒前に歩花が口をつけていたやつだ。つまり、これは“間接キス”となるわけだが……。
「
「あ、ああ……でも」
俺はついつい、歩花の口元を見つめてしまった。歩花の唇はツヤツヤの桜色。
傷もなく――おそらく、そこへ重ね合わせた男はまだいないはず。少なくとも彼氏はいないようだし、だからこそファーストキスの経験もないと信じたい。
「わたし、キスした事ないよ」
「え……歩花」
「間接キスもはじめて。お兄ちゃんにあげるね」
嘘偽りのない純粋な笑顔を俺に向ける歩花。そこには一点の
俺は思わず息を飲む。
歩花の
いいのか、兄妹だぞ。
――しかし、
血は繋がっていないし、精々親戚という
俺が歩花をどう思うか、だ。
だが、俺は恋愛経験が浅いどころか
――いや、それよりだ。
――そうだ、俺は歩花と出会ったあの時から……ずっと意識して。うわ、思い返すだけで顔が真っ赤になった。……あぁ、クソッ。もう勢いだっ。
缶に口をつけ、俺は勢いでコーラを飲み干した。
「……う、美味かった」
「お兄ちゃんのえっち♡」
「な、なんでだよ。兄妹なんだから……ふ、普通だろ」
恥ずかしくなってきて、
「お兄ちゃんってば顔が赤いよぉ。そんなに歩花の間接キス……良かった?」
「う、うぅ……」
この甘々な声……脳が
歩花には
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