到着…

〈ミツタロウ視点〉









夢乃ちゃんは…

集中治療室へと入り…




俺たちが予想した通り

あまり良い状態ではなく

いつ…そうなってもおかしくないらしい…







ショウ「・・・弥来…連れて来てやればよかったな…」






窓ガラスから見える夢乃ちゃんを見ながら

翔がそう言って顔を下へ向け

小さく揺れてる肩に手を伸ばした 




今から…

親戚の子の元へ迎えに行ったとしても…





間に合うかもしれないし…

間に合わないかもしれない…






ミツタロウ「・・・俺さ…

    実は、初めて夢乃ちゃんに会った日…

    蒼紫の婚約者だとは知らずに

    Kショップまで道案内してて…

    めちゃめちゃ可愛い子だなって…

    凄く緊張したんだよ…」






ショウ「ふっ…皆んな知ってるから安心しろ…笑」







俺の中じゃ

だいぶ大きなカミングアウトだったが

翔の笑う声を聞いて「へ?」と

下を向いてまだ泣いている翔に顔を向けると

「バレバレだろ」と笑っていた






ショウ「お前が夢乃ちゃんに惹かれてんのは

   商店街中が知ってるし…

   蒼紫も多分気づいてる」






ミツタロウ「えっ!?蒼紫も??」






俺が大きく声を上げると

反対隣りにいた鳥屋のおじさんから

「皆んな知ってるよ」と声をかけられ

自分の顔が一気に熱くなっていった







ショウ「はぁ…うちの弥来もメロメロだったし

  夢乃ちゃんには魔性の魅力ってやつがあるんだろ」







3歳児と同じ扱いをされ

「一緒…」と頬を引き攣らせていると

隣りから「俺らとおんなじさ」と聞こえ

肩がガクッと落ちた…







ショウ「・・・俺は…どっちかつーと…

   夢乃ちゃんを見てる

   蒼紫を見てる方が楽しかったからな…」






ミツタロウ「・・・・・・」







翔の言いたい事は

分かったし…俺もそう感じていた…





夢乃ちゃんを連れて帰って来た蒼紫は

今までの蒼紫とは少し違い

いい意味で人間臭くなった気がする…





感情を顔に出す様になったし

俺たちとも…よく話す様になった…







ショウ「蒼紫はどうすんだよッ!?

   あんた父親なら分かるよな?

   蒼紫にとって夢乃ちゃんがどんなに大切かッ!?」







翔がさっき蒼紫のオヤジさんに

食ってかかった言い方をしていたのも…

分からなくない…





翔は…おちゃらけた性格に見えて

友達思いで熱い友情ってやつを持っているんだろう…






部屋の前に何人も立ち続けるわけにはいかず

俺と翔は離れたベンチのある所へと歩いて行くと

エレベーターから麗子が出て来て

「赤ちゃんは大丈夫みたいだよ」と言い

ちょっとだけ様子を見に行こうとかと

エレベーターに足を向けると…






アオシ「ハァハァ…ッ……夢乃はッ…」






隣りのエレベーターのドアが開き

息をきらせた蒼紫の姿があった






ミツタロウ「おっ…おせーよッ!」






夢乃ちゃんのいる部屋へと案内しようとすると

「蒼紫」と蒼紫のオヤジさんの声が響き

「来なさい」と廊下の向こうに

さっき手術室から出て来た

ドクターと一緒に立っていた







蒼父「・・・話がある…」






アオシ「先に夢乃の顔を見てから…」







蒼紫は顎に垂れている汗を

手で拭き取りながらそう答え…





「部屋は?」と俺に

夢乃ちゃんの部屋へ案内しろと言っているが

「蒼紫」とおじさんの声がもう一度響き

ゆっくりと顔を向けると

「来なさい」と険しい顔を向けていた








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