ゆめ…
〈ユメノ視点〉
「・・・・ッ!?」
パッと目を覚ますと
薄暗い部屋が視界に入り
少し荒くなっている自分の息に
胸に手を当て「ゆっ…夢…」と呟いた
「ハァ…ハァ……ニーコ…」
布団から立ち上がり
居間の方へと走っていくと
明かりの消えた暗い廊下が
さっきの夢をより思い出させる…
( ・・・やだ… )
明かりをつけて縁側のカーテンをパッと開くと
窓からニーコやピーコのいる小屋が見え…
いつも通りの小屋にホッと胸を撫で下ろした
「・・・・もうすぐ… 」
小屋の直ぐ隣りに目を向けて眺めていると
「そろそろ1回忌だな」と後ろから聞こえてきた
「・・・・・・」
アオシ「・・・・・・」
おじさんは私の隣りに立って
ニーコの眠る場所に顔を向けたまま
「アイツは一番お前にそっくりだったな」と
笑いながら言い…
服の袖で涙を拭きながら
「最初の子だからね」と私も笑って答えた
ニーコが亡くなってもうすぐ一年になる…
ピーコも…タマちゃんもマルちゃんも…
もう一人のニーコも可愛くて
私の大切な子供達だけど…
「・・・卵…」
アオシ「・・・・・・」
「初めて…ニーコが卵を産んだ日ね…
怖くて…なかなか手が出せなかったの…」
アオシ「・・・・・・」
おじさんが私の手を握ってきたから
その手をぎゅっと強く握り返しながら
あの日の…初めてニーコを可愛いと思った日を
思い出しながら話した…
「ずっと…離れた場所から眺めてたら
ニーコが…自分から卵から離れて…
私がニーコを怖がっているって…
気付いて…わざと卵から離れてくれて…」
アオシ「・・・・・・」
「・・・ッ…にーこ…」
恐る恐る卵に近づいて行き
手を伸ばして卵を拾い上げて
やっと、おじさんの朝食に卵が出せると
喜んでいると少し離れた場所から
ジッとコッチを見ているニーコに気づき
その姿は少しだけ寂しそうに見えた…
( ・・・まるで卵を産ませる道具みたいだ… )
ピーコの事は手に抱いて
「ピーコ!」と話しかけてあげていたのに…
ニーコには、卵は産んだかなと
遠くから様子を伺っているだけで
体に触れてあげていなかった…
「・・・おっ…おっ……おいで?」
弱々しい声でニーコに手を差し出して
「おいで」と呼んでみると
ニーコはしばらくコッチを見た後に
決して早い歩きでは無い速度で
私の側に様子を伺う様に近づいてきた
きっと…
私も怖かった様に…
ニーコも怖かったんだ…
知らない場所にいきなり連れてこられ
広い庭にポンっと投げ出されて…
( ・・・寂しかったよね… )
「・・・ごめんね…ニーコ…」
そう言って頭の後ろの部分に
軽く手を当てて撫でてあげると
一歩私に近づいて来たから
「ふふ…」と笑って
「卵、ありがとうね?」と
初めてニーコを誉めた日だった…
アオシ「アイツはお前と過ごせて幸せだったと思うぞ」
「でも…ッ……デモッ…」
私がニーコを一人にしたから
あんな事になったんだ…
寂しがって甘えていたんだから
出かけないで側にいてあげればよかった…
「ゅめ……見たの…」
アオシ「・・・夢?」
「また…また……あんな事になるッ…ュメ…」
だーさん達が作ってくれた小屋は頑丈で…
そうそう壊れたりはしない…
大丈夫だって分かっていても
夜…皆んなを小屋に入れて鍵をかける時に
いつも不安になる…
アオシ「・・・柵で覆われているし
今は…アイツら4人もいるんだぞ?
マルやピーコなら野犬くらい追い払いそうだろ?笑」
おじさんがピーコを名前で呼んでくれた事が嬉しくて
「たしかに」と笑いながら
おじさんの胸に自分の顔を寄せ
「お姉ちゃんがきっと守ってくれるよね」と
少し山の型をしているニーコのお墓を見ながら呟いた
アオシ「・・・早く寝るぞ
お前がそんな顔だと腹のガキもそうだし…
アイツらも不安になるぞ?」
私の頬についている涙を拭き取りながら
そう話すおじさんの眉も下がっていて
急に布団から抜け出した私を
心配して探しに来たんだと分かり
「ごめんなさい」と謝ると…
アオシ「・・・なら…安心させろ…」
「・・・どうやッ!」
どうやってと問いかけ様とすると
唇は直ぐに塞がれて
暑い吐息と共に離された唇を
見つめていると
「体調はどうだ?」と問いかけられた
「・・・いい…です…」
アオシ「ふっ…少し付き合え」
ニッと笑った顔でそう言うと
居間の明かりを消して
私を寝室へと連れて行き…
おじさんはキツく私を抱きしめながら
ただひたすら…アツい口付けだけをくれた…
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