怖いくらいに…
〈ユメノ視点〉
「・・・ふぅ…」
年間行事の案内書を書き終え
筆を置いて安堵の息を吐いた
「もうこんな時間だね…
今日の夕飯は何にしようか?笑」
15時を回っている時計に目を向けて
お腹を撫でながらそう声をかけ
「よいっしょッ」と立ち上がり
庭にいるピーコ達を見ると
皆んな好きに過ごしていた
「ふふ…お姉ちゃん達は皆んなゆっくりしてるわね」
そう笑っているとニーコが私に気付いて
近づいて来たから
縁側から降りてニーコの背中を撫でようとすると
私の足の上にパッと飛び乗ってきて
甘える様に顔を擦り寄せている
「ずっと抱っこしてないからね…」
おじさんから「鶏を抱いて歩くな」と言われ
一緒に並んで歩く様になり
1か月程経っていて
ニーコもきっと甘えたいんだろう
「パパは心配症だからね?笑」
ニーコを抱っこして歩いていると
躓いた時に手を上手くつけないからと
抱っこを禁止にされていた
「パパには内緒よ」と言って
ニーコを抱き上げて庭を歩き
遠くの山を眺めながら
「寒いね」と肩を小さく震えさせた瞬間
「抱くな」と機嫌の悪い声が耳に届いて来て
しまったと思い振り向いた
アオシ「・・・・・・」
「・・・お帰りなさい…」
眉を吊り上げて腕を組んで
近づいて来たおじさんは
ジロリとした目で私を見た後
その鋭い視線を少し下にいる
ニーコへと向けて更に眉をピクリとさせている…
アオシ「・・・甘やかすな」
「・・・今日はたまたまだもん」
おじさんは私が妊娠してから
甘いというよりも過保護になってきていて
お寺から出さない様にするし
夜も「早く寝ろ」と言って
布団に入れようとしていて…
アオシ「ハァ…何かあったらどうするんだ」
「・・・何もないわよ…」
アオシ「・・・・・・」
「ニーコやピーコ達のママでもあるし…」
お腹の子は大切だけど
ニーコ達も大切な子供だもん…
アオシ「・・・貸せ…」
ニーコを降ろさないでいると
おじさんが手を伸ばして来て
ニーコを私の手から抱き上げ
「俺で我慢しろ」と不機嫌な顔で
ニーコに語りかけている
「ふふ…いいなぁニーコ…笑」
なんだかんだ言って
ニーコ達に甘いおじさんに
頬を緩ませて袖を掴み
「お寺までお散歩しよッ!」と
おじさんの肩に頭を寄せた
アオシ「このまま行く気か?」
「妊婦は適度な運動しなきゃいけないの!笑」
ニーコを抱っこしたままのおじさんと
お寺まで歩いて行くと
お義父さんが庭にいて
私達を見て小さく笑い
「寒くなる前に母屋へと帰りなさい」
とおじさんの様な事を言ってきから
「パパにそっくりなおじいちゃんですね」と
お腹を撫でながら言った
怖いくらいに幸せな毎日に
おじさんの顔を見上げてそう伝えると
「そうだな」と呟いて
顔を私の耳に寄せ…
アオシ「俺もたまに怖くなる」
小さく囁かれた言葉に
袖から手を離し
おじさんの腕に手を添えて
「家に帰ろう」と微笑んだ
怖いくらいに幸せだなんて
きっとこれ以上にない位に幸せだからこそ
そう…思えるんだ…
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