心配…

〈ユメノ視点〉










「あっ!待って!」






庭にいるピーコ達の鳴き声が聞こえ

おじさんが仕事に行こうとしているのが分かり

水筒を持って台所から小走りで出て行くと

「走るな」と眉を寄せて私の方へと

近づいて来るおじさんに頬を緩めた






「はい、水筒!」






アオシ「・・・買い出しには行くな」







差し出した水筒を受け取ると

私のお腹に目線を落として

「買って来る物があれば連絡をしろ」と言い…





まだ妊娠が分かって1日しか経っていないのに

すっかりパパになっている…






「まだお腹も大きくないし…

 先生も普通に生活していいって…」






アオシ「片道1時間の距離は普通じゃねぇ…」







おじさんは

一年前とは本当に別人みたいだ…





寒くて買い出しに中々行かない私に

「さっさと行け」と眉を寄せていたのに





結婚してからは

時間帯が合えば私を車で拾ってくれる様になり





妊娠した今では

買い出しに行くなと言っていて…

ドンドン甘く…過保護になっていく






「ふふ…パパは心配症ですね?笑」






自分のお腹に手を当てながら

そうお腹にいる子供に話しかけると

目の前にいるおじさんは

「着物も脱げ」と言って

機嫌の悪い顔をしている






「着物は下腹を締め付けないから

 大丈夫だってお義母さんも言ってたじゃない」






朝着物の着付けをしていると

お義母さんが部屋へと現れ

いつもよりも締め付けを緩めた

楽な着付けをしてくれて

全く苦しくなかった






アオシ「・・・動きづれぇし…

   こんなじゃり道じゃつまずくだろうが…」






「お義母さんも着物を着て

  このじゃり道の上で生活をしたまま

  蒼紫さんを産んだんだから大丈夫よ!笑」






アオシ「・・・・・・」






納得をしていない表情で

目を細めているおじさんに

「早く行かなきゃ」と袖を掴んで

一緒に駐車場まで行こうとすると

「見送りはココでいい」と言って

袖を掴む手を離そうとしだしたから

「ヤダッ」と言って両手でギュッと掴んだ






「また数時間は会えなくなるんだし

  見送りは駐車場までするの!」






アオシ「・・・・マル!マルッ!」







私の言葉に小さくタメ息を吐くと

庭の草を突いているマルちゃんを呼び出し…






アオシ「お前もついて来い」






「・・・・マルちゃんも?」






「アッチに行っていろ」や…

私が普段タマちゃん達に話しかけている横で

「うるさい奴だな」と揶揄う事はあるけれど…





こんな風に名前を呼んで

おじさんが話しかけているのは珍しいから

驚いて見ていると

マルちゃんと一緒にニーコも寄って来だし

「お前はココにいろ」とニーコに言っている

おじさんに「なんでニーコはダメなの?」と

問いかけた…






アオシ「ニーコ《こいつ》はお前にしょっちゅう

   抱き上げられているだろうが…」







「・・・へ?」







アオシ「マルなら鳴き声もでけぇし

   足も速いから何かあっても大丈夫だろ」







おじさんがマルちゃんについて来いと

言っている理由が分かり

「ボディーガードなの?」と笑いながら

おじさんの顔を覗き込むと

「さっさと行くぞ」と顔を背けられ

照れているのが伝わってきた






家から駐車場まで1〜2分程の距離しかないのに

何かあった時の心配をしている

おじさんに可愛く感じ…






「マルちゃん、おいで!」と言って

おじさんの袖を掴み

いつもよりもゆっくりと遅い速度で

駐車場まで…6人で歩いていった







アオシ「・・・なんで全員ついて来てんだ…」






「ふふ…皆んな見送りたいのよ!笑」








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