頑張るから…
〈ユメノ視点〉
「・・・ッ…ごっ……ゴメン…ナサイ…」
そう口にした瞬間
トクン…と胸の奥に小さな痛みを感じ
お腹に手を持っていって
「ごめんなさい」と
今度はおじさんにではなく
お腹の子に謝った
「ごめんなさい」
こんな言葉を口にしている
ママなんてきっといない…
来てくれて嬉しいのに…
堂々と伝えてあげられない
ママを許してと思いながら
おじさんとお腹の子…
二人共に謝っていた
「ゆめちゃん」と私を心配している
弥来君に「大丈夫だよ」と言って
いつもの様に抱っこしてあげたいのに
自分のお腹を抱き締める様に
手をギュッとお腹に当てたまま
離す事ができないでいると
左の頬によく知る手の温もりを感じた
アオシ「・・・・・・・」
おじさんは何も言わないまま
涙を親指で拭き取ってくれていて
その目は怒ってもいないし
私を責める事もなく…
ただ…ジッと見つめている…
「・・ハァッ…ッ……ばる…カラ…」
話そうとすると
ヒクッと泣いている肩が揺れて
上手く話すことが出来ず…
自分が思っている以上に
息を上げて泣いているのが分かった
( ・・・頑張るから… )
お腹にある手にギュッと力を入れて
ママ…頑張るから…と
お腹の子に胸の中で語りかけ
おじさんの目をしっかりと見上げた…
「ぼうッ…坊守のお仕事も…ちゃんと頑張るから…
無駄遣いもしない…しッ…家事だって…ッ…モット……」
アオシ「・・・・・・」
「もっと頑張るからッ……だから…」
自分の下唇がフルフルと小さく震えていて…
足も…弥来君がギュッと抱きついていなければ
もっと震えていただろう…
アオシ「・・・・・・」
おじさんは私から少し目線を落とし
私の両手が添えられている
お腹を見つめた後に
左手をお腹へと伸ばしてきて
優しく手を当てると
「検査はしたのか」と問いかけてきた
「きのッ……検査…やくでッ……」
私の言葉を聞き
「そうか」と言った後も
おじさんの顔はお腹へと向けられていて…
私もヒクッと上がる息を
なんとか落ち着かせようと
顔を下に向けていると
「ほせぇ腕だな…」と
少し笑いの混ざった声が耳に聞こえ
おじさんを見上げると
口の端を上げて笑っていた
アオシ「・・・だが…お前達を…
支える位はちゃんと出来るから安心しろ…笑」
「・・・ッ……もっと食べて…」
おじさんが私と…この子を…
夫として、父親として支えてくれると
言っているのが分かり
止まりかけていた涙がまた溢れ出てきた
「ギュッ…てしてッ…」
お腹にあった片方の手を
おじさんの袈裟へと伸ばし
甘える様にそう言うと
翔さんや、だーさんが見ている前で
私を抱きしめ「母親になるんだろうが」と
泣いている私を揶揄うおじさんの背中を
両手でギュッと抱きしめた
来年の夏あたりには
きっとママになっているんだろうけど…
まだ…まだまだ…
おじさんに甘えていたかった…
おじさんは私を連れて病院へと行き
エコー写真を持って家へと帰ると
檀家さん達から知らせを聞いた
お義母さんが夕飯を作って待っていてくれて…
父「一年かかったな…」
「・・・・あっ…笑」
私を見て小さく笑っているお義父さんが
一年前の私が発した
生意気なあの言葉の事を言っているんだと分かり
「まだから、やっとになりました」と笑って答え…
この日の夜…
私はおじさんの腕の中で
長く…長いキスを…ひたすらねだって甘え続けた…
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