幸せ…
〈アオシ視点〉
カズコ「鳥屋に入って行ったよ」
この町は良くも悪くも
全てが筒抜けていて
夢乃の使っているシャンプーだの…
買い出しの内容を見て
夕飯はおでんだと伝えてきたり…
プライバシーなんてものはほぼほぼねぇ…
アオシ「・・・餌はまだあるはずだ…」
餌も、夢乃がオヤツだと言っている
トウモロコシも在庫はあった筈だと思い
何故、鳥屋に行ったのか少し疑問に感じた
( ・・・・・・ )
昨日の夜、読経を早めにきりあげて
夢乃のいる寝室へと行くと
布団の中でスマホを眺めている夢乃の姿があり
俺を見ると「今日は早いね」と言って笑っていたから
体調も悪くなさそうだなと思った俺は
部屋の明かりを消して
夢乃の上へと覆いかぶさり
久しぶり深いキスをした
最後に抱いたのは10月末頃だったから
夢乃を抱かなくなり
もうそろそろ3週間になる…
自分でも不思議に思う程
夢乃を求めていて
夏過ぎからは
親父達のいるこの実家でも
夢乃を抱いて眠る事が多く…
夢乃もいつもの様に
俺の背中へと腕を回してきたから
口付けながら手を服の中へと進ませると
突然「ヤッ…」と言って
俺の胸元を強く押してきた
( ・・・・・・ )
夢乃が俺に向けている想いを
疑った事はないし
俺が思っている以上に
( 多分…
ここ最近の
夢乃の行動は少しおかしく…
頭の中を何度か
よぎっては消えてを繰り返している言葉があり
夢乃に問いかけ様かと思っていた…
( ・・・・・・ )
鳥屋の入り口に足を踏み入れると
翔の姿もあり
奥に目をやると弥来を抱き上げている
夢乃の姿が見えた
ショウ「なんだ待ち合わせだったのか?」
翔の言葉に顔をコッチに向けた夢乃は
俺を見るなり直ぐに顔を逸らし
昨日の事を気にしているんだろう…
トウキ「やっぱり子供を作る気はないのかい?」
夢乃の就任式に顔を出した黄瀬から
そう問いかけられた俺は
小さな花束を弥来から差し出され
笑って受け取っている夢乃を見ながら
小さくタメ息を吐いたのを覚えている
寺でも外でも…
少しでも人の目が無くなれば
手を握ってきて「蒼紫」と甘えてくる夢乃は
まだまだ半人前の坊守で…
手がかかるガキで…
( ・・・・母親なんてガラじゃねぇ… )
アオシ「・・・持つな… 」
そう小さく呟いてから夢乃へと近づいて行き
10数キロの重さはあるであろう弥来を
夢乃の手から取り上げて
「ゆめちゃんがいい」とぐずっている
弥来を抱きかかえたまま
夢乃がさっきまで眺めていた
雛鳥達を見下ろした
( ・・・・・・ )
俺の何にそんなに惹かれて
寺へと戻って来たのか
ずっと不思議だった…
「ココにいるのッ…あたしの…
アタシの幸せは…蓬莱蒼紫なのッ」
( ・・・お前の幸せが俺なのならば… )
夢乃は…
俺を好きだからこそ…
俺に言えないんだろう…
「・・・夢乃… 」
名前を呼んで夢乃の方へと顔を向けると
不安そうな瞳で俺を見上げていて
( こんな顔をさせているのも俺だな… )
アオシ「・・・お前…妊娠してないか?」
そう問いかけると
夢乃は「えっ…」と呟き…
小さく肩を揺らしながら
目からポロポロと涙を零し出した
「・・・ッ…ごっ……ゴメン…ナサイ…」
自分の腹に両手を当てて
「ごめんなさい」と口にする夢乃を見て
やっぱりかと思い夢乃に近づこうとすると
泣いてる夢乃を見て「ゆめちゃん」と
騒ぎ出した弥来が手と足で俺を
ゲシゲシと蹴りだり
「おろちて」と連呼している
アオシ「・・・・・・」
弥来を地面におろしてやると
夢乃の足元に抱きついて
「ゆめちゃん、いたいなの?」と
心配そうに下から見上げていて
「じゅーちょくワルイの!なかちたの!」と言って
俺に怒りだした弥来に
「はぁ…」とタメ息を吐いた
2歳の弥来にですら
夢乃が泣いている原因が俺だと分かっているのに
夢乃の不安や悩みに気付いてやれなかった
自分自身に眉を寄せ
頬に大きな涙の粒を流している
夢乃に手を伸ばした
お前の幸せが俺な様に…
俺の幸せは…
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