見かけない…

〈ミツタロウ視点〉









父「蒼紫!じゃなかった…若住職!笑」






月参りに来た蒼紫と店の入り口で

話していると奥からオヤジが出て来て

「夢乃ちゃんは元気か」と問いかけだした






( また…鼻の下を… )






9月にあった

夢乃ちゃんの就任式には

おじさん連中の参列者達が多く…

うちのオヤジも店番を母ちゃん一人に任せて

和菓子屋のおじさん達と来ていて…





父「よっ!待ってましたぁ!」





まるで大衆劇場にいるかの様に

黒い着物を着て挨拶をしだした夢乃ちゃんに

拍手を送りながら

ニタニタと気色の悪い笑みを浮かべていた…






息子である俺は

それは、それは恥ずかしく…





「すみません…すみません…」と

蒼紫の両親に頭を下げて謝って回り…






「ご挨拶に伺いました」と

就任式の数日後に淡い黄緑色の着物に

身を包んだ夢乃ちゃんが前坊守である

蒼紫の母ちゃんと一緒に現れた時も

「黒も良かったが今のも良い!」と言って

夢乃ちゃんと記念撮影までしていた…






いい歳越えた

おっさんのそんな姿を見ながら

こうはなりたくないと

強く思ったの事を今でも覚えている…







父「最近コッチに全然来ねぇから皆んな心配してるよ」







以前は買い出しだったり

Kショップの由季ちゃんと話す為に

2日に1回は商店街に訪れていたけど

坊守になってからは数日に1回と…

夢乃ちゃんの姿をたまにしか見かけなくなった







アオシ「ありがとうございます

   中での仕事が続いてるようで」






父「着物だとコッチに来るのも大変だしな…」


   

   




オヤジの言葉に蒼紫も

少し考える様な顔を見せたから

オヤジと同じような心配をしていたんだろう…






父「冬は冬で寒いし

   夏は夏で汗びっしょりだろうよ」






アオシ「・・・・・・」






参りに来た蒼紫を奥の仏間にも遠さず

ぶつぶつと夢乃ちゃんの心配を口にしていたオヤジが

「あっ!」と声を上げ…






父「まさか、ついにおめでたか?笑」






アオシ「はっ?」






顎に手を当てて真剣な表情をしていた

さっきまでの顔は無くなり

ガマガエルの様にニーッとニヤケながら

蒼紫の肩をバシッと叩き

「だからあんまり来させないのか?」と

驚いて目を丸く見開いている蒼紫に

ニヤニヤと問いかけている






父「夏の式からも結構経つし

   もうそろそろじゃないのか?笑」







アオシ「・・・・・・」







蒼紫の反応からして妊娠はきっと違うんだろうが

就任式も終わったし…

俺もそろそろかなと思っていた






父「夢乃ちゃんなら大丈夫!

   いい母親になるだろうし

   新妻から新米ママになっても大丈夫だ!」






ミツタロウ「・・・・・・」






いい母親は翔の親戚の子供と一緒にいる所を

見た時から思っていたから納得できるが…





( 新米ママのくだりはよく分からないな… )






何が大丈夫なんだと

呆れた目をオヤジに向けながら

小さくタメ息を吐き

黙ったままの蒼紫へと視線をうつすと…






アオシ「・・・・・・」



 



( ・・・なんだ? )






蒼紫は顔を少し下げ

顎に手を当ててまた何かを考えている様だった…







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