揶揄いたい…
〈ショウ視点〉
ツヨシ「翔!弦蒸寺のあれなんだっけ?
弥来の面倒見てくれてた…」
ショウ「夢乃ちゃんのか?」
従兄弟の剛兄ちゃんが
近づいて来て夢乃ちゃんの事を
訪ねてきたから何だと不思議に思っていると
ツヨシ「そうそう!夢ちゃん!笑
確かもう直ぐなんかあるんだよな?」
「夢ちゃん」と言う呼び方に
弥来が家でも「ゆめちゃん、ゆめちゃん」と
騒いでいるんだと分かり
「坊守の就任式か!」と答えた
ツヨシ「それだ!
弥来の事で世話になったから
祝いを持って行けって言っててさ」
ショウ「あー…」
蒼紫の…
住職の就任式とは違いそこまで
参列者もいないだろうからな…
ショウ「俺が行って来るよ」
満太朗を誘って一緒に行こうと思い
そう返事をすると
その日のうちに祝い袋を持って現れた
剛兄ちゃんの足元には弥来の姿もあり
「ゆめちゃんは?」と問いかけてきた
ツヨシ「だから!ゆめちゃんはいないぞ!
ゆめちゃんのお祝いを持って来ただけだ」
ミライ「・・・おうわい?」
弥来は1か月以上経った今も
夢乃ちゃんの事を忘れてなく
俺の顔を見ると必ず
夢乃ちゃんはいるかと聞いてくる…
( 麗子の事はすっかり忘れてたのにな… )
ショウ「弥来!夢乃ちゃんに会いたいか?笑」
そう問いかけると弥来はパチッと
目を大きく見開いて
「あうたい!」と両手を上げ
「ゆめちゃん、ゆめちゃん」と
壊れたオモチャの様に連呼している…
ツヨシ「おい!揶揄うなよ
帰ってからもダダをこね続けるだろうが!」
ショウ「いや、揶揄ってねーよ!笑
市場に出せない傷ものの野菜があるから
届けに行こうかなって思ってた所だったし」
先月、満太朗の店で
弥来がした夢乃ちゃんのぷりんの話を
たまたま会った蒼紫に笑いながら話すと
腕組みをしたまま
片眉をピクリと釣り上げていて
「母親に抱っこされてろ」と小さく呟いていて…
あの蒼紫があんな顔をするなんてと
正直面白くてたまらなかったから
弥来と夢乃ちゃんを会わせたら
どんな表情をするんだろうと考えていた
ショウ「寺に行った後家まで送り届けるよ」
そう言って祝い袋を受け取り
弥来を連れて弦蒸寺へと向かうと
駐車場の手前にある坂道を覚えているのか
「はぁやく」と足をバタつかせていて
駐車場に車を停めると俺が野菜を降ろすのも待たずに
「ゆめちゃーん」と走って行ってしまった
ショウ「あっ!こら待て!」
野菜はたてまえで
蒼紫の表情をみたいが為に
訪れていた俺は野菜に伸ばしかけた手を引っ込めて
「弥来」と叫びながら後を追って行くと
家の近くで弥来に追いつき
「先に行くぞ」と揶揄って通り過ぎようとしたら
「あぁ〜ん」と眉を下げて手を伸ばしてきた
俺に抱っこを強請るなんて珍しいなと
思いながらトテトテとしか進まない弥来の体を
抱き上げて庭に入って行くと
鶏達が俺を見て一斉に鳴き出し
「なっ…なんだ」と足を止めていると
「ピーコ?」と縁側から夢乃ちゃんが顔を出した
ミライ「ゆめちゃん!」
「弥来君だぁ!笑」
夢乃ちゃんを見るなり
ジタバタと暴れ出し
降ろせと言っているのが分かったが
弥来の事も揶揄いたくなった俺は
抱き上げている手に力を入れて
縁側の方へと近づいて行くと
「どうしたんだ」と蒼紫を出て来て…
ショウ「あっ…夕飯中だったか?悪いな…笑」
縁側の直ぐ奥にある居間には
おじさん達の姿もあり
「こんばんは」と
まだ明るい空の下で挨拶をしていると
「ゆめちゃん」と夢乃ちゃんに両手を伸ばして
抱っこをせがむ弥来に「ダメだぞ」と言った
ショウ「夢乃ちゃんは
このおじさんの奥さんなんだから
もう抱っこは出来ないんだぞ?」
きっと奥さんなんて意味は全く分かってないだろうが
ダメだと言われた事を理解したようで
「やぁあ!」と泣き出す弥来は
夢乃ちゃんに手を伸ばし続けていて
面白いなと眺めていると
「ガキを揶揄うな」と呆れた声を漏らす蒼紫に
「バレたか?」とニッと笑いが出た
「弥来君、おいで!笑」
笑いながら両手を差し出してきた夢乃ちゃんに
弥来を渡すと「久しぶりだね」と
弥来の顔を覗き込んで話しかけていて
1か月ぶりに会う夢乃ちゃんに
急に照れだしたのかギュッと抱きついて顔を隠している
照れていたのも最初だけで
「みらね!パァパとしょうのおうちにね」と
夢乃ちゃんに話をしだしたから
「車に野菜乗ってるからついて来いよ」と
蒼紫に言って一緒に駐車場へと歩いて行きながら
「子供は就任式後くらいか?」と問いかけた
ショウ「夢乃ちゃん、子供好きそうだし
いい母親になるんじゃねーの?笑」
アオシ「・・・そうだな」
あまりいい声色じゃないなと
少し驚いて蒼紫に目を向けると
何かを考えている様に見えたから
それ以上は何も言わずに
野菜を持って弥来達の所へと戻ると…
ミライ「ゆめちゃん、ぎゅうなの」
弥来が夢乃ちゃんに甘えて
プリンとやらに
顔を埋めて幸せそうに笑っていた
「お前も明日早いだろ」と弥来を抱き上げて
スタスタと駐車場へと歩いて行く蒼紫の背中を見て
「プッ」と吹き出しながら
「ハイハイ帰りますよ」と後を追った
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