余韻…
〈ユメノ視点〉
「・・・ふぁ〜…」
まだ陽が昇りきる前の
涼しい風の吹くなかアクビを溢しながら
洗濯物を干していた
( ・・・おじさんも眠いかな… )
昨日は私の25歳の誕生日で…
台所で洗い物を終えてお風呂に行こうとすると
おじさんから呼び止められ
「上がったらソッチにいろ」と言われた
私が使っていた部屋を寝室にしていて
おじさんの部屋は
今まで通りおじさんが読経をあげたり
作業をする仕事部屋となっている
おじさんが読経を上げる側で
足袋の留め具の縫い付けや
お義母さんから指示された
坊守の作業をする事もあり…
寝室の方に居ろって事は
そう言う日なのかなと思い
念入りに髪と身体を洗って
麻梨子から誕生日プレゼントで送られて来た
可愛い下着を身につけて部屋へと戻ると
寝室には既におじさんの姿があり
「読経は?」と問いかけると
テーブルにあるグラスに氷を入れ出し
「早く座れ」と言ってきた
( ・・・あっ… )
おじさんが手に取った
ボトルのラベルを見て
おじさんが何を
作ってくれようとしているのかが分かり
ニッと笑っておじさんの隣りに腰を降ろした
「・・・アタシ…毎年コレがいい…」
アオシ「毎年?笑」
「毎年!だって…
蒼紫さんからの最初のプレゼントだもん…笑」
カランッと音を立てた
紫色のグラスが私の前に置かれ
「懐かしいね」とおじさんに顔を向けると…
アオシ「懐かしいって言っても
5ヶ月前にバーで飲んでるだろうが」
おじさんの言葉に「えっ?」と
口にした瞬間
おじさんの誕生日にこのカクテルで
お祝いしていた事を思い出し
「なんで!?」と自分の頬に両手を当てた
アオシ「ギムレットとコレで
俺の誕生日を祝ってたんだろ?」
「・・・おしゃべり坊主…」
ギムレットを飲んでいた相手が
おじさんに話したんだと分かり
顔をグラスへと向け
おじさんと目を合わせづらくなった…
( ・・・ひっ…引いたかな… )
ちゃんと付き合ってもいないあの時期に
自分の誕生日に思い出のカクテルを飲んで
勝手にお祝いされていたと知り
気持ち悪いと思われたんじゃないかと不安になった…
「・・・・・・」
アオシ「一人でバーなんかにいれば
変な男共が寄って来るだろうが…」
聞こえてきた言葉に
ゆっくりと顔を上げると
眉を寄せて不機嫌気味な表情をしているおじさんに
「気持ち悪くないの?」と問いかけた
アオシ「・・・・・・」
「・・・引いた…よね…」
アオシ「・・・そう思ってんだったら
お前の誕生日にコレを作ったりはしない」
そう言って自分のグラスを手にとり
私の前に差し出して来たから
私も自分のグラスを手に取り
おじさんのグラスの前へと差し出し
カツンと乾杯をした
「ん!美味しい!」
アオシ「花の匂いは嫌いじゃなかったのか?笑」
「コレだけは好きなの!笑」
普段はお酒なんて飲まないし
式の後に連れて行ってもらった
旅館で少し飲んだのが最後だけど
おじさんが作ってくれる
紫色のカクテルは
マスターが作ってくれた物よりも甘くて
ドンドンお酒が進み
バーで透輝さんに会った話とか…
久しぶりにゆっくりと
おじさんと話をした気がする
アオシ「ナンパ?黄瀬がか?笑」
「そうよ!21〜22歳と思ってたみたいで
蒼紫さんの事をロリコンって言ってた!笑」
アオシ「ふっ…かもな…笑」
てっきり眉を寄せて
否定するのかと思ったら
おじさんは酔っているのか
機嫌良く笑っていて…
アオシ「俺が1番好きな…
お前のガキくさい部分…どこか分かるか?笑」
「好き」の言葉にドキッとして
何も言えずに
近づいてくるおじさんの顔を
見つめていると
「知りたいか?」と
意地悪な笑みを見せるおじさんに
「知りたい…」と
手を握って答えた
( 好き……しかも1番って… )
アオシ「・・・教えてやるよ」
そう言ってグラスをコトッとテーブルへと置き
「その為に早く終わらせたんだからな」と
私の耳元で囁くと…
「・・へっ………ひゃッ!?」
首筋から鎖骨にかけて
生暖かい感触を感じ
思わず声をあげると
身体が宙に浮き
直ぐ後ろにある布団へと
ドサッと降ろされ
アオシ「俺はガキみてぇに
布団の中でダダをこねて
手間のかかるお前が1番好きだからな」
「・・・ッ!」
お寺に帰ってきてから
私と同じ様にお酒を飲んでいないから
久しぶりのアルコールに酔って普段くれない
こんな言葉を口にしているかもしれないけれど…
「・・・・はぁ…」
( 昨日のおじさんは本当に甘くて… )
飲みかけのカクテルをグイッと口にいれると
口移しで私の口へと運んで飲ませてきて…
「まだ寝るな」と言って
長い時間愛してくれた…
昨日の甘い余韻に浸っていると
足元にカツカツと鈍い振動を感じ
「ん?」と顔を下げると
ピーコが目を覚ませとでも言うかの様に
サンダルを
「もうッ!ママは今
パパとの思い出に浸るので忙しいの!」
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