お疲れ様…
〈ユメノ視点〉
「・・・わぁ…」
おじさん達が持ち帰ったお布施を
お母さんと計算しながら
思わず声が漏れてしまった…
( ・・・こんなにあるのに… )
この数日間
おじさんは朝早くからお参りに出て行き
1日に何十軒と回っていて
遠方の方にはお義父さんが変わりに
行くほど忙しかった…
( ・・・それでも… )
短期間で沢山のお布施が集まっても
コレが毎月続くわけじゃないし
来年には少なくなっているのかもしれない…
きっと今年は
水戸家と岸家の分がないから
それなりに下がっているはずだ…
春からお母さんと一緒に
お寺の帳簿付けをやりだしていて
千円札、五千円札、一万円札…
お金の本当の価値が
ちゃんと分かった気がする…
このお寺にはお金が無いわけじゃない…
お義母さんは必要最低限のお金で
生活費を回していて
きちんと貯金をしている
結納の席で差し出された金額も
私が想像していた金額とは
だいぶ違い正直驚いた…
着物だってそうだ…
9月から私が着る着物を
数着準備してくれたけれど…
母「品格が必要になりますからね」
と言って
落ち着いた色合いの
いい着物も選んでくれた…
ただ良い物を着れるばいい
と言うわけじゃない事はちゃんと分かっている
可愛いだけじゃダメなんだ…
いつかは自分自身で
おじさんの坊守に相応しい坊守になりたい…
でも、今の私では
まだまだだから…
あの着物達に助けてもらわないといけない…
母「いつかは色々と手直しも必要ですからね」
お布施の金額を帳簿に書き込みながら
そう呟くお義母さんに
「手直しですか?」と問いかけると
お義母さんの横顔は笑っていて…
母「五右衛門風呂じゃお風呂にいれる時大変よ」
「・・・お風呂?」
母「私も蒼紫の時苦労したわ…笑」
お義母さんの言う手直しが
私達の子供が産まれた先の話なんだと分かり
「熱いですからね」と笑って答えた
温度調整の出来ないあのお風呂で
赤ちゃんだったおじさんを洗うのは
毎日大変だっただろうなと思った…
( ・・・・・・ )
お義母さんに眠る挨拶をしてから
おじさんの部屋へと向かい
聞こえてくるお経に耳をかたむけた
「・・・あなたがいればそれでいい…」
あの日…
お寺の石階段を駆け登りながら
胸の中で何度もそう…呟いた…
麻梨子や透輝さんは…
私が色々と捨てて
おじさんの手を取ったと思っているけれど…
「・・・全然違う…」
おじさんの手を掴んだ私の両手は
おじさんで…蒼紫さんでイッパイで…
他の物を掴む余裕なんてないんだよ…
お経が止まり
また読み出すかなと
動かないでいると目の前の襖が開き
「どうした?」と立っているおじさんの姿が現れ
ギュッと抱きついて「お疲れ様でした」と伝えた
アオシ「・・・・・・」
自分の背中と頭の後ろに
おじさんの手の温もりを感じ
もっと強く抱きついた
焼き刺す様な陽射しと蒸し暑い気温の中を
全身を黒で纏ったあの格好で
休みなく動き回るのはキツかった筈だ…
最終日の明日は
お寺でのお盆の締めくくりのお経をあげてから
お盆の行事は終わりとなる…
「お疲れ様です…蒼紫さん…笑」
アオシ「明日が終われば…次は秋の彼岸会と…」
おじさんは私の体を少し離し
顎を持ち上げて「お前の就任式だな」と言って
優しい顔をしていた
「ふふ…ちゃんとエスコートしてよ?笑」
アオシ「早く草履に慣れろ…笑」
お義母さんの言う通り…
いつかは色々と手直しがいるだろう…
台所や縁側…
昔の作りで少し段差が高すぎるから
10年後…20年後の
お義母さん達の事を考えると…
お義母さんの考えとは
少し違った手直しが必要になるから…
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