違う!
〈ミツタロウ視点〉
ショウ「よっ!繁盛してるか?」
暇な昼下がりにぼーっと
時計を眺めていると
翔の笑い声が聞こえてきて
ゆっくりとダルけのある動きで顔を向けると
翔の横…というか足元には
先週夢乃ちゃんと歩いていた
あの男の子の姿もあった
ミツタロウ「あれ?その子…」
男の子の右手には
駄菓子屋の袋が握られていて
もう片方の手には…
( ・・・羽…だよな? )
白い羽が握られていて
鶏の毛かなと不思議に思って見ていると
「夢乃ちゃんに見せたいんだとさ」と
翔が呆れた顔で男の子を見下ろしている
ミツタロウ「夢乃ちゃんに?」
膝を曲げて男の子に目線に合わせて
「どうして見せたいの?」と問いかけると
俺から羽を取られると心配しているのか
羽を胸元に隠しながら
「んー…」と眉を寄せていて
「取らないから大丈夫だよ」と笑うと…
ミライ「ゆめちゃんなーで、なーでって…
こうはイタイなのよぉ」
自分の髪を引っ張りながら
イタイと眉を下げて
説明してくれているけど…
( ・・・なんだ?? )
ショウ「夢乃ちゃんに褒められたいんだと」
ミツタロウ「褒める?毛でか?」
ショウ「
腰に手を当てて
「毛なんて早く捨てろ」と言って
駄菓子の小袋をビリッと破くと
バリバリと円盤型のスナック菓子を食べている
( ・・・菓子クズ… )
小さな菓子クズを店の入り口に
ポロポロと落としながら
立ち食いをしている32歳の男に
冷めた目を向け
菓子袋を開けないで
鶏の毛を見ながら「ゆめちゃん…」と呟く
2歳の男の子を見て
「はぁ…」とタメ息がでた…
( 2歳児でも立ち食いしねぇのに… )
あと数日でお盆になるし
夢乃ちゃんはお寺の作業で忙しいだろうしな…
翔の言う夢乃ちゃんには
しばらく会えないの意味は
何となく分かったが…
ミツタロウ「この前会った時も思ったけど…
夢乃ちゃんにえらく懐いてるんだな」
ショウ「そっ!約束の1週間が終わって
朝、久しぶりに自分家で目を覚ましたら
夢乃ちゃんがいないって
泣いて探し回ってたらしいからな?笑」
「へぇ…」と呟き
父さんが言っていた抱っこ癖を思い出し
「今日は言わないんだな」と
ずっと自分の足で地面に立っている
男の子に目を向けると「なにがだ?」と
手についた菓子クズを舐めながら
問いかけてきた翔に眉を寄せ
この前の話をすると…
ショウ「抱っこ癖??んなもんねーよ!」
ミツタロウ「そうなのか?」
汗臭い男には抱っこを頼まないのかなと思っていると
俺の考えが分かったのか
「いやいや、
手を振りながら否定していた
( 母親にも言わないのか? )
レイコ「あれ?翔君がいる」
更に不思議に思っていると
店の入り口から顔を覗かせた麗子が
「こんにちは」と俺の様に膝を曲げて
男の子に話しかけだした
やっぱり女性は母性本能ってやつがあって
小さな子を見るとこんな風になるのかなと
夢乃ちゃんの姿と重ねて見ていると
レイコ「弥来君大きくなったね?」
ショウ「2歳だからな、もうだいぶ重いぞ」
麗子は男の子を知っているようで
ニコニコと笑って話しかけているけど
男の子は目をパチパチとさせて
不思議そうに麗子を見ていた
レイコ「忘れちゃったの?笑
桜祭りで鬼ごっこしたじゃない」
ミライ「・・・ごっこ?」
ショウ「1日だけだったし4ヶ月も前だからな…笑」
人見知りなのか
恥ずかしいのか…
男の子は翔の足に隠れる様に立っていて
「可愛い」と言って
おいでと手を差し出しても
男の子は様子を伺っているようだった
( 抱っこ癖はやっぱり違うのか… )
レイコ「よーし抱っこだぁ!笑」
そう言ってヒョイッと男の子を抱き上げると
男の子はキョトンとした顔で
目をパチパチとさせ
抱き心地が悪いのか手の位置をペタペタと
何度も変えて「ん〜」と眉を下げた
ショウ「なんだ?トイレか?」
ミライ「ちがうの!ゆめちゃんとちがうの!」
「違う」と連呼し…
ペタペタと手を当てながら
「ぷりんなの」と言っている男の子に
「プリン?」と皆んな顔見合わせると
ミライ「ゆめちゃんのココ…ぷりんなの」
レイコ「・・・・・・」
ミツタロウ「・・・・・・」
一気に…
何の事を言っているのかが皆んな分かり
ピシッという音が聞こえたかの様に
麗子の眉がピクピクと動いている…
ショウ「まっ…まぁーしょうがねぇな!
夢乃ちゃん結構あるんだな?笑」
何で夢乃ちゃんにだけ
抱っこを
さっきまで可愛く見えていた
この男の子に妙な羨ましさを感じていると
男の子を床に降ろした麗子が
「歳とったらそのプリンも垂れるわよ」と
捨てゼリフを吐いて
「ふんッ」と出て行ってしまい…
ショウ「弥来!夢乃ちゃんはどんなプリンなんだ?」
ミライ「んとねー、やぁらかなの」
ミツタロウ「・・・・・・」
純粋無垢な2歳児に
なんて説明をさせているんだと
改めて翔に冷ややかな目を向けた…
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