ゴッコ…

〈ユメノ視点〉









ミライ「ぴーちゃん…おうでなの」






洗濯物を干していると

弥来君がピーコの後を追いかけていて

いつもはワガママなピーコが

逃げ回っているのがなんだか可笑しくて

「ふふ…」と笑ってしまった






( おいでって言ってるのかな?笑 )






「弥来君はピーコが好きね?」






私の言葉にピタッと走る足を止めて

「んー?」と顔をキョロキョロとさせると

「まーちゃん…」と呟き

今度はマルちゃんを追いかけだした





見ているコッチは微笑ましいけど

マルちゃん達は嫌かなと思い

空になった洗濯籠を手に取り

「弥来君」と声をかけた






「一緒にあまぁーい卵焼きを作ろうか?」





ミライ「・・・たまやき?」





「そっ!ふわふわの卵焼き!笑」






頬っぺたに手を当てて

フワフワとジェスチャーを交えて伝えると

「うわうわ?」と言って

嬉しそうにコッチに駆け寄って来たから

「おいで」と抱っこをして

台所へと連れて行き

今朝産んだばかりの卵を2個とって

弥来君に差し出した






「これはピーコとニーコが産んだ卵よ」






ミライ「ぴーちゃん…と…にーちゃん?」






と言う事がいまいちピンときていないようで

頭をコテっと曲げて「ぴーちゃん?」と

卵を一つ手に取り不思議そうに眺めている






( まだ早いか… )






キョトンとした顔から

おじさんの様に眉を寄せて

考える顔を見せたかと思えば

またキョトンとした表情へと戻り

「ゆめちゃん、はぁやく」と

卵を差し出してきた






「ふふ…そうだね、早く食べたいね!」






ボウルを出して卵を割っていると

「ゆめちゃん、ゆめちゃん」と

私のスカートを引っ張ってきて

「みらもやる!」と両手を上げているから

弥来君を抱っこして

ヒビを入れた卵を渡してあげて

ボウルに中味を溢させてあげた






ミライ「でけた!笑」






「ね!できたね!」






弥来君はやっぱりタマちゃん達とは少し違って

成長をゆっくりと見る事ができる





初めはピーコ達の毛を引っ張ろうとしていて

慌てて止めに入り…





「見て見て!ゆめちゃんの髪の毛」





自分の髪を軽く掴み

自分で自分の髪を引っ張りながら

「痛い!やめて、やめて」と

痛がるフリをすると

弥来君はジッと見た後に

手を自分の髪へと持っていき

私の真似をして髪を引っ張っていた





ミライ「イタイなの…」






「ね?痛いね?

 ニーコ達も痛い、痛いだから

 優しくナーデナーデってしてあげようね」






ミライ「・・・・・・」






パチパチと目を瞬きさせた後に

タマちゃんへと近づいていき

右手でタマちゃんの背中を撫でながら

左手で自分の頭を撫でていて





どんな感じなのか

自分で試しながら撫でている姿に嬉しく感じた…






( お母さんって…こんな感じなのかな… )






お砂糖を沢山使った卵焼きを

まな板の上に落としてから

包丁で切っていくと

「じゅーちょく」と弥来君が言い

「え?」と顔を向けると

腕を組んでコッチを見ているおじさんの姿があった






「あれ?お帰りなさい」






今日は15時過ぎまでお参りの筈だけど…

何かあったのかな…





おじさんは居間のある扉側に立っていて

足袋の替えを取りに来たのかと尋ねると

「いや…」とだけ答え

コッチを見続けている…





どうしたんだろうと思っていると

スカートを引っ張られる感触がして

顔を下に向けると口をアーンと開けた

弥来君の姿があり

「味見する?」と切った一つを手に取って

口の中にいれてあげると

頬に手を当てながら「うわうわ」と

さっきの私の真似をして

美味しいのか

もう一度アーンと口を開けてきた





「ふふ…縁側に座って食べようか」




ミライ「じゅーちょくも?」





おじさんの方へと走って行って

一緒に卵焼きを食べるかと尋ねている

弥来君にクスリと笑ってから

お皿に卵焼きを乗せて縁側の方へと行くと

ピーコが近づいて来た





「ピーコもオヤツが欲しいのね」





まだお昼前で

オヤツの時間ではないけれど

今日だけは特別に

少しだけトウモロコシを庭にパラパラと撒いて

「さっ食べようか」と

フォークを持って待っている弥来君達の元へと行き





「蒼紫さんには甘すぎるかも」





そう言って笑いながら

おじさんの膝に座っている弥来君に

卵焼きの乗ったお皿を差し出すと

フォークをグサリと刺して

「またやきなの」と口にほうばっている




私は甘い卵焼きが好きだけど

おじさんは至ってシンプルな卵焼きが好きみたいで

朝食で作るのは出汁巻きか塩を少しだけいれた

卵焼きばかりだった




私達の子供だったらどっちの卵焼きを

好きになるんだろうと考えそうになり

小さく首を振って「蒼紫さんもどぉーぞ」と

卵焼きを掴んだ箸を口元に持って行くと

いつもなら絶対に開いてくれない口を開けて

私の差し出した卵焼きを食べている





( ・・・ピクニックみたい… )





ダメだと分かっていても

ツイツイ…

頭の中で勝手に

家族3人で公園に行き

お弁当なんかを食べたら

こんな感じなのかなと想像してしまう…





アオシ「あめぇな…笑」





少し眉を寄せて笑いながら言うおじさんに

「オヤツみたいでしょ」と言って

私も自分の口へと卵焼きを運び

「んー!」と

久しぶりに食べる甘い卵焼きに笑みを溢した





ミライ「じゅーちょく、じゅーちょく!

   コレね、コレ!みらがやったの」





卵焼きを指差して

自分が卵を割って入れたんだと話す

弥来君を笑って眺めているおじさんを見て

たとえだとしても

こんな風に3人で笑って

卵焼きを食べている事がとても幸せに感じた…







( 弥来君…また遊びに来てくれないかな… )









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