ママゴト…

〈アオシ視点〉









アオシ「・・・・・・」






お参りを終えて寺へと戻り

和菓子屋の紙袋を手に

夢乃と弥来みらいの元へと歩いて行くと

庭で鶏が各々好きな場所で過ごしていた






( 家の中で遊んでいるのか? )






昨日の昼間に

一度戻って来た時には

鶏達と庭に出て遊んでいたが

今日はその姿がなく

寝ている鶏もいる様だったから

足音を消して縁側の方へと行くと




縁側前の廊下に

夢乃と弥来の姿を見つけたが

声をかける事をやめた…







アオシ「・・・・鶏といい…

   仲良く皆んなで昼寝か?笑」







2時半を過ぎた今…

昼食を食べ終えて

胃袋の満足感と一緒に

睡魔に襲われたんだろう…






アオシ「・・・・・・」






二人の寝顔を見ながら

昨日満太朗から言われた事を思い出し

「子供…か…」と小さく呟いた…






トウキ「おチビちゃんは

   君が…と言うか…

   このお寺に子供を望んでいない事は

   ちゃんと分かったうえで

   コッチに戻って来たからね…」







( ・・・子供は…正直望んでいなかった… )







ミツタロウ「夢乃ちゃんはいいお母さんになりそうだな?笑」







夢乃に対して

そんな風に思った事は一度もない…

鶏相手にママゴトみたい真似をして

「ママ」なんて言っているが…





お袋から今だに「夢乃さん!」と

あれこれ小声を言われては「はい…」と

こうだれている姿を度々たびたび見るし

時には唇を尖らせ「煩いんだから…」と

ぶつぶつと一人言を言い…





外でも俺の袖を掴んで歩きだがるし

夜も暑苦しい中

わざわざ俺の足の間へと座って

まるで小学生のガキが

その日学校であった事を

夕飯を作っている母親の隣りで

ペラペラと話すかの様に

「今日ね」と俺に話しかけてくる





そんな夢乃になんて言葉を

連想した事はないし

むしろ子供の様な性格をしている夢乃に

手がかかるとすら思っていた…






( ・・・・だが… )






アオシ「お前何してんだ?」





俺が夜の読経をしている間

居間でカタカタと音を立てる夢乃を

不思議に思い近づいて行くと

押し入れから出したミシンを使って

何かを作っていた





「あっ…うるさかった?」






アオシ「・・・・なんだ…コレ…」






テーブルにあるのは…

多分…仏壇の飾り用品に見立てて作った

なんとも不細工な…





( ・・・ぬいぐるみでもねぇし…なんだ… )





家にあった要らない布を使って

縫われたその物体を手に取り

眉を寄せながら眺めると

「本物は…硬いから…」と言って

自分でも不出来な出来栄えだと分かっているのか

恥ずかしそうに唇を突き出している





弥来が仏間にある

りんを夢乃の真似をして

チンと鳴らそうとして遊びたがるらしく

弥来用に固くないクッション風の

りんを作ってやっているようだった…






寝ている側には

夢乃の作った仏具セットが広げられていて

縁側の前でコレを使って

奇妙なママゴトをしていたんだと分かり

「ふっ…」と小さな笑いがでた






普通は食べ物や車なんかを使って

ママゴトをするんだろうが

線香の香るこの縁側で

こんな物を使って遊び

鶏達と仲良く昼寝をしている夢乃に目を向け

「はぁ…」と笑いを含んだ息を溢し

少し顔に垂れた長い髪を退けて

夢乃のこめかみに唇を当てた







( ・・・お前のいるここは暖かい… )




















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