いい奥さん…

〈ミツタロウ視点〉









ミツタロウ「ん??」






母ちゃんから頼まれた洗剤を手に

由季ちゃんの店から帰っていると

前の方から夢乃ちゃんと小さな子供が

歩いて来ているのが見えた






( ・・・あれは… )






何となく見覚えのある顔に

小走りで二人に駆け寄って行くと

男の子は両手を上げて

夢乃ちゃんに抱っこをせがんでいて

「はいはい」と笑いながら

抱き上げている夢乃ちゃんを見て

走る足が止まった…





妙に…

慣れている感じがあり






( ・・・まるで… )






ぼーっと眺めていると

男の子が俺の視線に気付き

「ゆめちゃん…アレ!」と

俺を指差して来て

夢乃ちゃんも「ん?」と俺の方へと顔を向けた






「あー満太朗さん…笑」






ミツタロウ「いや…えっと…」






何故か普通に挨拶が出来ず

痒くもない頭の後ろをかきながら近づいて行き

「その子…」と男の子の顔を覗くと

「ヤッなの」とプイっと顔を背けて

夢乃ちゃんの首に顔を埋めている…






「翔さんの親戚の子なんです

 弥来みらい君ご挨拶しましょ?笑」






ミツタロウ「あー!未来みくさんの子供か!」







どこかで見た事あると思ったら

翔の従兄弟の子だったのかと思い

モジモジと顔を向け

「こん…ちにわ」と言う男の子に目を向けた





「ふふ…よくできました」






言い間違いが可愛くてたまらないのか

男の子をギュッと抱きしめながら

褒めている夢乃ちゃんにいいなと思った…





( ・・・こんな… )






父「こんな嫁さんがほしいなぁ?笑」





自分の声が漏れたのかと思い

「へ?」と口に手を当てると

ゲラゲラとした笑い声が後ろから聞こえてきて

頬をピクリとさけながら振り返った





ミツタロウ「・・・配達は終わったのかよ…」






後ろには鼻の下を伸ばした

父さんの姿があり

「夢乃ちゃんはいいママになるな」と

二人に近づいて行って

「車で来たのかい?」と尋ねだした






「いえ、今日は風も吹いていたし

  ちょっとお散歩しちゃいました」






ミツタロウ「えっ?お寺から?」







大人でもキツイ距離の筈だと

驚いて男の子を見ると

「ゆめちゃん、オチャチャ…」と言い出し

「そうだね」と男の子を地面へと降ろし

肩にかけていたバッグの中から

幼児用の水筒を取り出し

カチッとストローを出すと

「はい、どーぞ」と男の子に渡している





ゴクゴクとお茶を飲んでる男の子の額についた汗を

タオルハンカチで拭いてあげている姿は

もう母親にしか見えず

さっき父さんが言った言葉をもう一度

自分の胸の中で呟いた






父「ずーっと歩いて来たのかい?」





「途中何度か休憩しながらだったので」と

笑って答える夢乃ちゃんに「あい!」と

水筒を返すとまた直ぐに「ゆめちゃん」と

両手をあげる男の子を見て

お寺からここまで

半分以上は夢乃ちゃんに

抱っこされながら歩いて来たのが何となく分かり

腕がキツくないのかなと心配をした






父「抱っこ癖がついちまったな…笑」





「抱っこ…癖?」





父「子供にはよくある事だよ…笑」






父さんも俺と同じ用に

夢乃ちゃんの腕を心配し

「寺まで乗せて行こうか?」と言い出したが

「大丈夫です」と笑って断る夢乃ちゃんに

「遠慮せずに送ってもらった方がいいよ」と

言っていると「いたいた!」と

翔の声が聞こえて来た





ショウ「夢乃ちゃん、今日も悪いね!」





土のついた作業着のまま現れた翔は

夢乃ちゃんにお礼を言いながら走ってきて

「よ!満太朗!」と手を上げた







ショウ「そう言うわけで

  3日前から夢乃ちゃんに世話になってんだよ」







ミツタロウ「・・・そう言う事か…」







商店街で待ち合わせをしていた様で

翔が夢乃ちゃんの腕の中にいる男の子に

「帰るぞ」と手を差し出したが

男の子は数秒考えた後に

「ゆめちゃんがいいの」と

また顔を背けていて中々帰ろとはしなかった







ショウ「明日も夜明け前から会えるだろうが…

   ほら!パパもママも待ってるぞ?」






10分ほどダダをこねていたが

最後は翔に抱っこされたまま帰って行き

「ヤッパリ送ろうかい」と

父さんが夢乃ちゃんに言うと

「いえ…」と言って

キョロキョロと顔を振りだして

「あっ!」と声をあげた





なんだろうと夢乃ちゃんが向けている

視線の先に目を向けると

少し奥にある通りから蒼紫が出てきたのが見え

時間的に最後のお参りが終わったのかなと思い

なぜ散歩がてらに商店街に来たのかが分かった






( ・・・・なるほどな…笑 )






夢乃ちゃんは「失礼します」と頭を下げて

蒼紫の方へと走って行き

袈裟の袖を握って

楽しそうに笑って話しかけている







父「ヤッパリいい嫁だよな夢乃ちゃんは…」







隣りで腕組みをして

顔を強く縦に振りながら話す父さんに

眉が少し寄ったが

今回も…父さんと同じ事を思っていた





さっきまでは

ママの顔に見えた夢乃ちゃんの笑顔は

今じゃ、新婚さん全開な

幸せそうな笑みを溢していて

あんな奥さんだったら

毎日が幸せだろうなと

蒼紫を羨ましく感じた






父「蒼紫のところも直ぐだろうな?」






ミツタロウ「・・・・半年後位かな?」






父「お前は想像力が足りんな?

   夢乃ちゃんはいい身体してるし

   蒼紫も毎晩お盛んだろう?

   直ぐにできるぞ!笑」






ミツタロウ「・・・・なんの想像力だよ…」



















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