頼み…

〈ユメノ視点〉









「おはよう!二人とも卵産んだのね」






小屋の扉を開けて

ピーコとニーコを褒めてあげると

ニーコはいつもの様に私の足元へと寄って来て

背中を撫でてほしそうに佇んだから

「おはようニーコ」と言って

背中を優しく撫でると…





コケーッと怒った鳴き声をあげた

ピーコがコッチに走って来て

クルクルと私の周りを走りだし

「やきもち妬きのピーコさん」と

笑いながら片手を差し出すと

走る足を止めて

手の近くをウロウロとしだした





( ・・・うちは三女が1番の甘えん坊ね…笑 )






ピーコを見ながらクスリと笑って

長女であるニーコの方へと顔を向け

「賑やかになったね」と声をかけると

「またソイツと話してんのか」と

おじさんの声が聞こえ…





「ソイツじゃなくてニーコ!…もぅ…」






おじさんはタマちゃんとマルちゃんの事は

「タマ子」「マル子」と呼ぶくせに

ピーコとニーコの事は名前で呼んでくれない…






少しだけ目を細めて

「呼べるか」と呟くおじさんに

唇を尖らせながらムッとした顔を向けると

おじさんはニーコの前に腰を降ろして

かまぼこ板についている土をはたいてあげていた






( ・・名前は呼ばないのに1番可愛がってるのよね… )






何だかんだ言って

おじさんも長女であるニーコが可愛いみたいで

かまぼこ板が曲がっていれば真っ直ぐと縦直してあげたり

今みたいに土を取ってあげている…






「・・・・ふふ…」





アオシ「・・・なんだ…」






そんなパパの姿を見せるおじさんに

嬉しさを感じ笑って見ていると

おじさんも照れた様に小さく笑っていて

こんな毎日がずっと続いてほしいなと思った






母「夢乃…あなた一度婦人科に行くといいかもよ?」






「婦人科?」






式に参加してくれたお母さん達に

数日経ってお礼の電話をいれた時に

お母さんが「んー…」と悩む様な声を出して

言いにくそうにそう言ってきた






母「・・・浄岳寺のお坊さん…

   ほら見える住職の!」






「あぁ…その人がどうかしたの?」






母「あなた達の子供の事を聞いたら

  難しい顔をして…何も言わなかったのよ…

  だから…一度婦人科で診てもらった方が

  いいんじゃないかと思ってね…

  今はいろんな治療もあるわけだし…」






( ・・・・・・ )






私とおじさんの間には

きっと沢山の子どもができる…






「マルちゃん!スリッパは突いちゃダメよ!笑」






イタズラ好きなマルちゃんは

小さい頃のピーコにそっくりで

一日に数回は注意をしている






アオシ「マル子はコイツにそっくりだな…笑」






おじさんも同じ様に思っているようで

ピーコを見て笑っていて…



私たちの可愛いこども達は

きっとこの5人だけでなく

もっと、もっと沢山になるだろう…






おじさんが子供を望んでいない事は

透輝さんから聞いて知っているし…

全部分かった上で

私はこのお寺に戻ってきた






お母さんは別の意味で悩んだみたいだけど…

きっと、浄岳寺のお坊さんには

私とおじさんの考えが分かったんだろう…






ウチのお母さん達も…

お義父さん達も…

皆んなが私たちの子供を

楽しみにしている事は分かっている






「・・・いつかは…

  雛鳥から育ててみたいな?笑」






アオシ「ふっ…そうなったら

   益々コイツが五月蝿くなるだろうな」







おじさんの足元で

草を突いているピーコを見て

二人で笑っていると

車のエンジン音が近づいて来ているのが聞こえ

「誰だろ?」とおじさんに顔を向けた






アオシ「・・・なんかあったか?」






おじさんは直ぐに立ち上がって

坂道を登って来ている車が

入ってくるであろう駐車場へと歩いていき出したから

誰かの急な不幸事でもあったのかと思い

私も小走りで後を追って行くと…






「・・・・翔さん?」






駐車場に停まった車はよく見る軽トラックで…

農家のお仕事をしている翔さんは

私達の様に早朝から起きて畑にいるはずなのに

なぜ、此処にいるんだろうと不思議に思って

車から降りて来た翔さんを見ていると…





ショウ「悪いな…ちょっと頼みがあってさ…」





夜明け前の空だけど

このお寺の周りに家はなく…

私たちもお義母さん達も

皆んな起きているのに小声で話す翔さんに

更に不思議に感じていると

「頼み?」とおじさんも小声で問いかけていた






ショウ「あー…どっちかって言うと…

   夢乃ちゃんに…頼みたい事があるんだよ…」






「・・・へ?」






てっきり、住職であるおじさんに

何かお願いに来たのかと思っていたから

「私…ですか?」と驚いていると

車の中から「しょーおッ」と泣き声が聞こえてきた






( ・・・・子供? )






翔さんは車に走って行き

助手席のドアを開けて

「大丈夫だぞ」と

2歳位の小さな男の子を抱っこしていて…





「翔さん子供いたの?」





独身のはずじゃ…と

おじさんに顔を向けると

「そう言う事か…」とタメ息混じりに言い

私の方へと顔を向け

「お前…子守りできるか?」と問いかけてきた







「・・・・初めての子守りは…ピーコとニーコよ?」






アオシ「・・・・・・」







そう言うと

おじさんは更にタメ息を吐いて

男の子を抱っこしている翔さんに顔を向け

「人間は初めてか…」と呟いていた










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