朝…

〈ユメノ視点〉









( ・・・髭…生えないタイプなのかな? )






目の前にある

白くて綺麗な寝顔を眺めながら

口元周りに人差し指をチョンと当てて

チクチクとした髭の無い肌を触っていると

眉がピクリと動き

起きるかなと手をパッと離した






「・・・・・・」






怪訝そうな表情は直ぐになくなり

まだ夢の中にいるのか

瞼は閉じたままで少しホッとした





昨日の夜の事を思い出すと

自分でも恥ずかしくなってきて

肩にある毛布をグッと上に持ち上げて

顔のほとんどを毛布の中へと隠し

「はぁ…」と小さく息を漏らした…





別に…初体験ってわけでもないし…

ああ言う行為を

気持ち良いと感じた事だってある…





( ・・・だけど… )





「・・・んーッ…」





毛布をギュッと顔に当てて

小さな唸り声をあげた…





彼が私の中にはいってきた瞬間…

自分の身体が小さく跳ね…

驚いたおじさんは目を見開き

私を見下ろしていて…





その視線に耐えれず

顔を隠す様に両手を顔の前へと持ってきて

ギュッと目を閉じると

「手をどけろ」と聞こえてきた…



でも、恥ずかしさで一杯の私は

「ヤダ」と言って更に強く両目を閉じた…






優しい愛撫中に…

おじさんに手を当てられ

クチュッと自分の耳に届いた音も恥ずかしかったけれど

挿れただけでどうにかなる女なんて…

はしたないしガツガツどころか

痴女の様に思われたんじゃないかと不安で一杯だった







( 最悪だよ… )






こんな事初めてだし

どんな風に振る舞ったらいいのか分からないし…






アオシ「・・・・・・」






ほんの数秒の沈黙すらも

長く感じていると

自分の手首をグッと掴まれたのが分かり

「ダメッ」と抵抗してみても

あっさりと退かされてしまい

唇に熱い吐息混じりのキスを感じた





いつもよりも

熱をおびたキスに

彼の余裕のなさを感じ

自分の中にあった恥ずかしさは

少しずつ薄れていき

唇が離れた時にはそっと目を開けていた







「・・・・・・」






アオシ「・・・悪るいが

   そろそろコッチもつれぇからな…」








小さく動いたおじさんの口から

出てきた言葉の意味が分からず

「へっ…」と言いかけた瞬間…

まだ熱い疼きの残る身体わたしの中に

貫く様な甘い快感が広がり

「ヒャッ…」と違う声を上げ…






そこからは唯々…

おじさんの背中に腕を回して必死に

おじさんの…蒼紫さんの名前を呼んでいた






( ・・・・・・ )






あんなに…

情事中にあんなに誰かの名前を呼んだり

顔も何も気にせずただひたすら

求めて鳴いたのは初めてで…





「・・・引いちゃった…かな…」





今までの私は

ベッドの中で誰かから

求められても

どこかで演技をしていた気がする…




鳴き声は可愛く…

乱れた髪もさりげなく整えたり…




自分でも気付かなかったけど

あんなに余裕なく乱れたのは

おじさんがきっと初めてだ…




今までだって

ちゃんと付き合っていて

好きな相手だったのに…




おじさんとの情事は

他の誰とも違っていた…





( ・・・・・・ )





毛布を少し下げて

目元だけ出しおじさんの寝顔を眺めようと思うと…





アオシ「・・・・・・」





「・・・ッ!?」





さっきまで閉じていた筈の瞼は開いていて

ジッとコッチを見ていたから

驚き固まっていると





アオシ「・・・・なんじだ…」





そう小さく呟いて

枕元のスマホへと手を伸ばし

「4時か…」と独り言の様に言うと

またコッチに顔を向け

「習性だな」と小さく笑っている




スマホのアラームは6時にセットしていて

早い朝食を済ませて

8時までには此処を出る予定になっているのに

毎朝4時前にはいつも起きているからなのか

私とおじさんは自然と目が覚めたようだ





「・・・もうちょっとで

  ピーコ達を庭に出してあげなくちゃ…」





夜の行為後だし…

恥ずかしく感じた私は

目線をおじさんの首元にずらして

そう言うと「好きだな鶏…」と

笑い混じりの声が聞こえ

視線を少し上げると

優しく笑っている顔が見えた





( ・・・・・・ )





この人が自分の旦那さんなんだと思うと

急に甘やかしてほしくなり

「蒼紫…」と昨夜の様に名前を呼んだ…





息の乱れる中

「あっ…ぉし…」とおじさんの名前を呼ぶと

動きを止めたおじさんが私の顔を見つめながら

「やっとか…」と呟き

汗で頬に張り付いた髪を退けると

深いキスがふってきて…




きっと…

私が初めて「夢乃」と言われて

喜んでいた様に

おじさんもずっと

名前で呼んでほしかったんだろうなと思った…





おじさんはもう一度スマホに目を向けて

「アッチじゃ無理だろうしな」と小さく笑い

私の腰をグッと抱き寄せると




アオシ「今晩はゆっくり寝ろ」




そう耳元で囁き…

お寺では決してありえない

午前4時に…

また、おじさんの腕の中で熱く抱かれた…
















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