今回だけは…

〈アオシ視点〉










アオシ「・・・・・・」






「あっ…あとね…アレなんだっけ…

 あっ!マルちゃんがねピーコのオヤツ取っちゃって」






アオシ「・・・・・・」






夢乃はもうかれこれ40〜50分近く

どうでもいい話をぐるぐると繰り返していて

1つ終われば、また1つと…

話を終わらせようとしない…






( ・・・・・・ )






旅館に着くと

「凄い!凄い」と浮かれて

スマホで写真を撮ったりなんかしていたが

温泉に浸かり部屋で夕飯を食った辺りから

急にソワソワと目を泳がせだし

もう寝るだけになった今…

襖の後ろに敷かれた布団へと行こうとはせず

座椅子に座ったまま話をやめないでいる…






「来月辺りには皆んな卵生み出すし」






アオシ「・・・・・・」






この話は…3回目になるし

流石に「そうだな」とは出てこず

ジッと夢乃の顔を見ていると

俺の視線に気付き

パッと下に顔を向けて

「お義母さん達…何してるかな…」と

ボソボソと呟いていて…

顔が赤く染まっていた





( ・・・コイツはたまに…謎だ… )






アッチに送り届けようと思い

「出掛けるぞ」と誘えば

下着を並べ立てて選んでみたり




いつもと違うボディーソープの匂いを身に纏って

俺の部屋に押しかけて

「一緒寝よう」と布団に誘ってきたり…





変な小細工を企んで

福引に行ってみたり…






「・・・・半年も…一緒に寝れないんだよ…」






計画が上手くいかなかった時は

不貞腐れていたが…





いざそうなるとモジモジと座椅子に付いている

座布団の端の糸を意味もなく引っ張ったりしている






( ・・・初めてじゃねぇ筈だが… )






俺はゆっくりと腰を上げ

夢乃に近づいて行くと

分かりやすい位に肩をビクッと動かして

さっきまで引っ張っていた紐をぎゅッと掴んでいる






アオシ「・・・・・・」






奥の襖を開けて夢乃の隣りに腰を降ろし

何も言わないまま抱き上げると

夢乃は顔を俯かせたまま

俺の首へと腕を回し抱きついてきたから

足を布団の方へと進め

並んで敷かれている布団にゆっくりと夢乃を降ろすと

何も話さず赤い顔を俯けていた






アオシ「・・・鶏の話は終わりか」






そう問いかけると

口の端がギュッと動き更に顔を赤くしている






アオシ「・・・・・・」






緊張して体をこわばらせている

夢乃に手を伸ばし浴衣の襟元をスッと

人差し指で撫でると

自分の浴衣の袖口をギュッと握りしめていて…

正直…想像とは違った…





俺とどうにかなろうと企んで

アレコレしていたのは知っていたし

そう言う雰囲気になれば

いつもの様にキスをねだってきて

甘えてくるかと思っていたが…






( ・・・・・・ )






誰かと寄り添うつもりがなかったからか

こう言う事に対しての欲求は

そんなに強い方でもなかった…




求められた時に気が乗れば抱く位で

自分からどうこうしようなんて考えた事はない






腰に結ばれている帯紐へと

手を降ろしていき

帯の端を軽く掴むと

目をギュッと閉じて

夢乃の中で激しい音を立てているであろう

心臓の音がコッチにまで聞こえてきそうだった






( ・・・初夜…だしな… )






同じ布団で寝た事はあっても

キス以上の事は一度もしていなく

俺と夢乃にとって…

その名の通り今日が新婚初夜になる






アオシ「・・・いいかもな…」






俺の呟きにそっと目を開けて

「ぇ…」と小さく口を開いた夢乃の目を見つめ…





特別な今日くらいは…

俺から求めてやろうと思い

「あんまダダこねんなよ」と言って

掴んでいた帯紐をシュッと解いた
























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