式…

〈ミツタロウ視点〉









ミツタロウ「・・・綺麗…だったな…」






32歳の年になるし…

結婚式にもそれなりに参加してきて…



ウエディングドレスを身に纏っていた

新婦の子達は皆んな綺麗で可愛かったけど…






( ・・・1番だったかもしれない… )






ショウ「なんでお前が惚けてるんだよ!笑」






ミツタロウ「いや、別に…

    いい式だったなって…」






ビールグラスを手に

隣りに座って来た翔に

「飲み過ぎじゃないか?」と

赤くなった顔を見て言うと

「いいんだよ、めでたい日なんだから!」と

手酌で瓶ビールをグラスにコポコポと注ぎ

「カァ!」と美味そうな声をあげている






ショウ「満太朗も飲めよ!」





ミツタロウ「・・・・・・」






俺は今のこの集まりが不思議だった…

式は昼過ぎには終わり…

式に参列していた人間が集まって

小料理屋を貸し切っているが…






ショウ「ほら!グラスだせよ!

   せっかくの二次会なんだからさ?」






ミツタロウ「・・・二次会…か?」






普通…世間一般の二次会とはだいぶ違い

まわりの席へと視線を向け

「打ち上げだろ…」と小さく呟いた






ショウ「まぁー主役がいねーからな?笑」





ミツタロウ「・・・・・・」






式が終わった後…

蒼紫と夢乃ちゃんは少し離れた

温泉旅館へと迎い

この集まりには参加していない





父「蒼紫のヤツもついに童貞卒業だな!笑」





男「若住職はこう…

  サラッとしすぎてるからな…大丈夫なのか?」






( ・・・・・・ )






至る席から聞こえてくる会話に

顔を下げて「はぁ…」と呆れていると

隣りに座っている翔が「今頃…」と

気持ち悪い笑い声を漏らしていて

更にタメ息がでた…






ショウ「しかし…蒼紫もちゃんと考えてたんだな」






ミツタロウ「え?」






ショウ「泊まりに行った宿だよ

  あんないい宿、急には押さえられないだろうし

  数ヶ月前から予約してたんだろ」






泊まりに行った温泉旅館は

夢乃ちゃんが福引で当てた宿よりも

格段に良い宿で…






ミツタロウ「新婚旅行にも行けないだろうしな…」






町からそうそう離れられないだろうし…

蒼紫からの夢乃ちゃんへの気遣いなんだろう…







ショウ「個室の露天風呂で

   二人仲良くやってんだろ…笑」






ミツタロウ「・・・・・・」







幼なじみのそんな話を

よくもまぁそんなベラベラと話せるなと

目を細めて引いていると

「麗子とも大丈夫そうだしな」と

乾燥してカピカピになっている

枝豆に手を伸ばしている翔に

「そうだな…」と答えて

瓶ビールを手に取り

自分のグラスへと注いだ





麗子の家は弦蒸寺の檀家ではなくなり

蒼紫の家とも微妙な雰囲気で

式には参列しないと思っていたが…





指輪の交換の時

後ろの参列者達が小さく騒ぎ出し

なんだと顔を向けると

着物を着た麗子の姿があって

まるで就任式の時の夢乃ちゃんの様に

皆んな異様な目で見ていた





女「式を壊しに来たのかしら…」





女「えー…」






聞こえて来る声に

たまらず麗子に駆け寄ろうとした瞬間

「遅いですよ」と夢乃ちゃんの声が広間に響き

「え?」と顔を夢乃ちゃんと蒼紫の方へと戻すと

麗子の方を見てニッコリと笑っている

夢乃ちゃんの姿があった






「遅刻です…お姉さん…笑」





レイコ「ホント…可愛くない…」






麗子はそう言うとツカツカと

前の方へと歩いて行って

「蒼君の事…傷つけたら許さないから」

と夢乃ちゃんに言いだした





レイコ「絶対に…ッ…許さないから…」






「・・・約束します…

  最後まで私が守ります」






麗子は着物の袖を目元に当てているから

きっと泣いているんだろうと

後ろから眺めていると

「ぁお…くんッ…」と

肩を小さく上下させながら

「ぉめッ…で……う…」と祝いの言葉を送っていた





( あんな麗子を見たのは初めてだった… )





29歳の麗子があんな風に

人前で涙を流す事なんて

そうそうある事じゃないし…

泣き顔を見たのは子供の頃以来な気がした…







ショウ「・・・なげー初恋だったからな…」






ミツタロウ「・・・・そうだな…」






いくら真っ直ぐと

長い時をかけて誰かを一途に想ったとしても

必ず振り向いてもらえるわけじゃない…






ショウ「アレだな…

   夢乃ちゃんは可愛いけどさ…

   蒼紫は多分…

   夢乃ちゃんの親父さんが言った様な面に

   惹かれていったんだろうな…」






ミツタロウ「・・・・・・」







式の終わりかけに

それぞれの両親に頭を下げていると

夢乃ちゃんのお父さんが

「蒼紫君…」と声をかけ…






父「夢乃は…

  末の…一人娘だったし…

  私もだいぶ甘やかしてしまってね…

  なんだろうな…

  どこにでもいる極々普通の家の

  普通のなんだけど…

  父親の私から見たら…

  可愛い…たった一人のお姫様でね…」






アオシ「・・・・・・」






父「大事、大事に育てすぎて

  料理も洗濯も…きっと家事なんて全くダメで

  コチラの家にも迷惑をかけてると思うよ…

  ワガママな面もあるし…

  父親である私よりも…

  家内や兄のまさるよりも自分、自分な所があって…」






「・・・お父さん…」



  

  


父「お世辞やご機嫌とりなんて

  器用な真似も出来ない子だからね…」






夢乃ちゃんのお父さんは

途中呆れた様に笑って話していて

夢乃ちゃん本人は「止めてよ…」と

顔を赤くして恥ずかしがっていて

何となく聞いてる俺たちも笑が溢れていた






父「だからね…

  嘘やお世辞が言えないワガママなこの子だからこそ

  君を好きだと言ったあの言葉に

  父親である僕は自信を持って送り出せるんだよ…」

 

   




「・・・・・・」






父「蒼紫君…どうか…

  幸せにしてやってほしい…」





  



数時間前の式を思い出し

「はぁ…」と息を漏らして

結婚っていいなぁと思っていると

翔も同じ事を考えていた様で

「婚活パーティーってやつに行くか?」と

スマホを取り出して検索しだした





( ・・・結婚…早くしたいな… )






幸せそうに微笑みあっていた

夢乃ちゃんと蒼紫の姿にフッと笑って

「今頃何してんだろうな」と

何気なく呟いただけだったが…






ショウ「いや…お前…

   しんみりとした話の後にまた下ネタかよ…」






つい数十分前までは

スケベオヤジみたいな顔をして

「お楽しみ中だろ!」と笑っていたくせに

今じゃ「マジひくわ…」と言うような目で

俺を見ている翔にイラッときた…
















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る