紫…

〈ユメノ視点〉










マリコ「わぁお…和風だね…」





「カラコンありがとう!」





マリコ「・・・・・・」






口紅を何色にしようかなと

自分と麻梨子のポーチの中を覗き込み

「やっぱり真っ赤かな…」と

麻梨子の口紅を手に取り

「どう思う?」と顔を向けると

鏡の中の私をジッと見ている麻梨子と目が合い

「ん?」と問いかけた






マリコ「いや…夢乃の白無垢…

   なんかいいなって?笑」






「えー?笑」







数ヶ月後には

教会のチャペルで綺麗なウエディングドレスに

身を包む麻梨子が何言ってるのよと笑っていると

麻梨子は口をギュッと閉じたまま

ニッコリと微笑んでいて

「やっぱりいいよ…」と少し震えた声を出した






マリコ「黒髪も…よく似合ってる…笑」





「・・・・ふふ…

  今日からは黒髪の夢乃になるからね?笑」






おじさんの隣りに立って

少しでも釣り合う様にと

髪を黒く染め…





メイクも…

大好きな甘いドーリーメイクは辞めて

おじさんが好きなナチュラルで

落ち着いたメイクをする様にした






マリコ「・・・フランス人形だったのにね…笑」





「日本人形もいいでしょ?」






去年までの私は

黒髪があまり好きではなかった…




年をとっていけば

自然と明るい髪色でなくなっていくだろうし

若いうちは目一杯

好きにオシャレを楽しもうと思っていたから





( ・・・だけど… )






黒くした髪を

おじさんが似合ってるって言うかなって…

落書きじゃないメイクを

可愛いって言ってくれるかなって…




そう思うだけで

ワクワクするし

自分自身…幸せな気持ちだった…






マリコ「カラコンは…OKなの?笑」






「今日だけは特別よ!

 写真はずっと残るし…

 普段よりも綺麗に写らないと!笑」






真っ黒なカラコンを付けるのは初めてで…

まだ少し違和感はあるけれど

綿帽子の間から見上げるおじさんには

ちょっとでも可愛く見られたいもん






マリコ「・・ホントに…運命の出会いだったのかもね…」






麻梨子の言葉に

「縁線です」と占い師から言われた事を思い出し

「今回は…何を言われても引かなかったかもね」と

笑いながら呟くと「え?」と

鏡の中の私を覗き込む麻梨子に

「蓬莱蒼紫は私の運命の相手だもん」と言った





占「この人…運命の相手ではありません!」






あの一言で

私は桔平との未来が見えなくなり

ちゃんと話し合う事もしないまま

引っ越しの準備を始め…







アオシ「結婚考えてた相手を

   今日初めてあった占いババアに

   ちげぇって言われればアッサリと

   別れようとしたり…バカかお前は?」







( ・・・今なら絶対… )







「運命の相手じゃない」と言われても

おじさんの手は絶対に離さないし…





「今度は…離れない…」






私が選んだ人が…

間違いなく運命の人だから…






マリコ「・・・あの夢乃がね…笑」






さっきから後ろでしんみりしている麻梨子に

「もう!」と言ってティッシュを一枚取って渡すと

目頭にティッシュを当てながら

「アッチもバッチリ準備しといたから」と言い

私の口の端もニッと上がった







「ちゃんと紫にしてくれた?」






マリコ「濃ゆいパープルじゃ…

  ちょっとアレかなと思って可愛い感じのにしといたよ」






「ありがとう!笑」







マリコ「でも…何も下着まで紫にしなくていいのに…

   しかも…初めての夜に…」






「・・・いいのッ!

 紫は私とおじさんの運命の糸だし…」







初めてのカクテルも…

おじさんが買って来てくれた和菓子も…

全部紫だったし…






( ・・・なによりも… )







「紫は…おじさんの名前だから!笑」






麻梨子は縁線のカラーである紫を

「縁起わるくない?」と言っていたけど

私にとっての紫は蓬莱蒼紫そのもので…

1番運命を感じる色だった…







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