勘違い…

〈マサル視点〉










「必ず…後生大事にしますので…

 蓬莱家に嫁がせてください」






( あの夢乃がな… )






急に何を言い出したのかと思い

ビックリして口を空けて眺めていたが…






「無理矢理小屋にいれたら…

 まるでお仕置き部屋みたいじゃない…

 夜…寝る為のピーコ達のお部屋なのに…」






夢乃は…

少し変わった…



考え方はまだまだ子供だし

彼氏が挨拶している最中に急にしゃしゃりでたり…

全然…大人の女じゃないけれど…





( ・・・母親になったからか? )





隣りで食事をしている夢乃に目を向け

悪阻つわりはまだなのかと思い

パクパクと天ぷらを頬張る姿に

首を傾げていると

「まぁまぁ一杯」と父さんが

お義兄さんの渋い親父おやじさんに

瓶ビールをかざしていて

楽しそうに飲み出していた





あの後…

挨拶を済ませた後に

しばらく寺の中を見て周り

夢乃の飼っている鶏達を窓から眺め…




夕食はお義兄さん達が予約していた

座敷の店へと案内されて

両家揃って楽に食事をしている…





父「夢乃も一杯だけ飲むか?

  乾杯だけでもどうだ?」





父さんの言葉に

アルコールはマズイだろと慌てて

「いやいや新婦がビールは」と止めに入ると




夢乃は「ビールか…」と小さく呟き

何か考えた顔をして「今日はいいかな」と

笑って答えていて

「兄ちゃんが代わりに飲んでやるからな」と

父さんの行き場のなくなった

瓶ビールに空のグラスを傾けたが






父「いやいや、こう言うのは形だけでも

   「乾杯」ってやっとくもんなんだぞ?

   一口ちょろっと飲んで残りは

   まさるに渡せばいいんだから」






「・・・でも…」






夢乃は実家に帰って来た時なんかに

父さんのツマミに手を伸ばして

よく晩酌の相手をしていたから

父さんなりのスキンシップのつもりなんだろうが

今の夢乃には…






マサル「父さん…ほら…

   体調とかもあるだろうし…」






妊娠してますなんて言いづらいよなと思い

夢乃に目を向けると唇に天ぷらのカスをつけて

「ん?」と呑気な顔をしている…






( こいつは… )







父「そうか…じゃあ…

   そろそろ蒼紫君に相手にしてもらおうかな?笑」






マサル「父さん!こんな所でやめろよ!」






父さんは一人で飲むよりも

誰かと楽しく飲むのが好きなタイプで…

「飲みニュケーションだぁ!」なんて

アルハラまがいなノリをよくする…




お義兄さんはこの町の住職だし

いくら結婚の顔合わせの場でめでたいからって

こんな所でベロベロにさせるわけにはいかず

止めなければと夢乃の時よりも鼻を荒くして

お義兄さんを守ろうとすると






アオシ「・・・はい…宜しくお願いします」





マサル「・・・えっ??」






お義兄さんは少し俯いた後に

顔を上げてそう言うとスッと立ち上がり

着ていたスーツを脱ぎ出し…





( ・・・ぇっ?・・エッ!? )





ネクタイを解いてどんどん

上の服を脱ぎ出すから

俺も父さんも…相手側のご両親も驚いていると






母「・・・あら…笑」






「ちょッ!ダメ!!脱いじゃダメッ!」






お義兄さんはブラウスのボタンも外しだし

細いウエストラインには腹筋の程よい筋が入っていて

母さんが口に手を当てて楽しそうな声を上げた瞬間

夢乃がバンッと立ち上がって

お義兄さんの身体を隠そうとブラウスをグッと掴んだ





「ダメ!なんで見せるのよッ!」





アオシ「・・・なんでって…」





お義兄さんは驚いた顔で夢乃を見ているが

立ち上がってギャーギャー騒いでいる

夢乃とお義兄さん以外は皆んな固まっていて

「申し訳ございません」と

俺たちに謝る向こうのお母さんにうちの母さんは…






母「いえ…ふふ…目の保養ですよ…笑」






マサル「・・・・・・」






なんつぅー返しをしているんだと

自分の母親に少し引いていると

「ダメッ!ダメ!」と顔を真っ赤にして怒る夢乃は

「私もまだ見てないのにダメッ」と怒っていて

また皆んな「ぇっ…」と固まった…






マサル「・・・・お前…妊娠してるんじゃねーの?」





「なんの話よッ?」





マサル「いやだって…」





急に寺に嫁ぐなんて聞いて

てっきりおめでた婚ってやつかと思っていた俺は

さっきの夢乃の言葉が理解出来ずにいた…





( ・・・結婚…するんだよな? )





おめでた婚じゃなかったにしても…

いい年齢の男女二人が交際をして…

結婚に辿り着くまでに

まだ裸を見ていないなんて事は…




いや!ない!!

いつの時代だよ…




きっとアレだ!

恥ずかしいから真っ暗にしてとか何とか

五月蝿いタイプなんだろうと

必死に自分の頭を整理していると…





「妊娠なんてするわけないじゃない!

 婚礼の義が終わるまで

 何もしないって言われてるんだらッ!」






父「・・・・・・」





マサル「・・・・・・・」





母「・・・・・・」






夢乃の叫び声が響いた後…

皆んな…どう反応していいか分からず

目を泳がせていると

「お義父さん一つ伺っても?」と

お義兄さんが声を振るわせながら問いかけてきて…




お義兄さんが夢乃の吐いた嘘を魔にウケて

プロレスの手合わせをしようと

服を脱ぎ出した事が分かり…






アオシ「・・・夢乃ッ!」





「・・・訂正するの…忘れてて…」






俺たち家族の前で

夢乃を怒鳴るお義兄さんに

兄である俺も…

父さんと母さんも何も言えず

黙々箸を進めた…


















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