抽選会…
〈ユメノ視点〉
「・・・はぁ…」
ピーコ達のご飯とオヤツを買いに来たけど
だーさんが「いいよ!いいよ!」と言って
トウモロコシの代金を受け取ってくれず
手にある抽選会の補助券は数が足りない…
( ・・・どうせなら補助券をガバッと… )
なんて厚かましい事が頭をよぎり
ダメダメと首を横に振りながら
トボトボと歩いていると
「夢乃ちゃん?」と知っている声に呼び止められた
「・・・あっ!翔さん!」
ショウ「買い出し?寺まで送って行こうか?」
ピーコ達のご飯の入った重たい袋は
後でだーさんが届けてくれるし…
「大丈夫です」と笑って答えると
翔さんは私の手にある補助券を見て
「あー!抽選行くの?」と言って
ゴソゴソとポケットに手を突っ込み
「いる?」とクシャクシャになった
補助券を3枚差し出して来た
「いっ…いいんですか!?」
そう言ってパッと翔さんの手にある
補助券を受けると
翔さんは少し驚いた顔をして
「そんなにしたかったの?」と
笑って首を傾げていたから
前におじさんから卑しいと言われた事を思い出し
まずかったかなと顔を下に向け
「す…すみません」と謝った…
ショウ「いや!こんなシワだらけの補助券…
普通なら眉を寄せるだろうからさ
まさか、そんなに喜んでくれるなんて
思ってなくてね…笑」
「実は…足りなくて
どうしようかと悩んでいたから助かりました…笑」
翔さんがおじさんの様に
変な意味で驚いてないんだと分かり
ホッとして笑いながら
だーさんからオヤツ代をサービスしてもらい
ひける予定だった福引が出来なくなった話をすると
「そーいう事か!」と笑い
ショウ「・・・で!何を当てたいの?
炊飯器?それとも米20キロとか?」
他の景品をあまりちゃんと見てなく
炊飯器も当たるんだと驚いていると
翔さんは「知らなかったの?」とまた笑い出し
「俺もついて行こうかな」と言い出して
一緒に並んで酒屋さんの方まで歩いて行こうとしだした
( ・・・補助券…返してとか言わないよね… )
他の景品も中々魅力的だし
抽選会場に着いて「やっぱり返して」なんて
言い出すんじゃと、また失礼な事を考えながら
酒屋さんまで歩いて行き
お店の前に着くとお向かいにある
お米屋さんから満太朗さんが「どーしたの?」と
私と翔さんを交互に見ながら声をかけて出てきた
ショウ「人妻と内緒のデートだよ!笑」
ミツタロウ「おまッ!何バカな事言ってんだよ!
蒼紫が聞いてたら殺されるぞ!」
翔さんの軽いノリの冗談に
私も内心眉を寄せたけれど
満太朗さんの口から出てきた
おじさんが怒るという言葉に
口の端が伸びて行き
頬が緩んでいった
( おじさん怒ってくれるかな…笑 )
前よりも甘くなった気はするし…
キスも…お願いしたら必ずしてくれる…
でも…ヤキモチを妬いてくれる姿は
想像出来なくて…
満太朗さんの言うように翔さんに怒ってくれるかなと
一人で笑っていると「福引に来たんだよ」と
怒る満太朗さんに笑って説明をしている
翔さんの声が耳に届きハッとして
酒屋さんの入り口にある
大きなポスターを見上げると
特商の温泉チケットはまだ出ていないようだった
「良かった!まだある!笑」
ミツタロウ「どれが欲しいの?」
「ふふ…内緒です」
手にある10枚の補助券にチュッとキスをしてから
和子おばちゃんに近づいて行って
「お願いします」と券を差し出すと
「あら!弦蒸寺の」とこの前の
就任式での事をニヤニヤとした顔で
聞いてくるけど…
( もうッ!今は噂話よりも温泉よ… )
おばちゃんにニコニコとした愛想笑いを浮かべて
「10枚ありますか?」と聞き
早く回したいのとアピールをしても通じず…
カズコ「はぁーあの時はビックリしたよー
大きな声で帰れって!笑」
「おばちゃん抽選を…笑」
動く口は止まらなく…
私とおじさんの言い合いを口にしながら
ニヤニヤとした顔でまだ話しているから
補助券を「1枚、2枚」と目の前で数えだし
「10枚!ねっ!10枚ありますからね!」と言って
目の前の抽選機の取手を掴んでグルグルと回すと…
カチッと機械の穴から赤い球が落ちてきて
コロコロと転がっていき
「赤?」と呟くと
さっきまで五月蝿く話していた和子おばちゃんが
「あら!?」と言って
カランカランと鈴を鳴らし出した
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