憧れ…

〈ユキ視点〉









夢乃さんを初めて見た時は

「とっ…都会の人だ!」と

メイクや髪型や服…全部がテレビや雑誌の中で見る

キラキラと輝く人達と同じに見えた…





いつも良い匂いがしていたし

セーターとデニムを着てるだけでも

なんかオシャレで…

可愛いピアスと大きなお団子ヘアに憧れて

真似をしてみても夢乃さんみたいにはならない…







父「大学に行く金も頭もないんだから

  外に就職しないんなら店を手伝え」






そう言われてこの何もない田舎町に居続けるだけの

何もない毎日だったけれど…

夢乃さんがこの町に…

あのお寺に来てからはちょっと違う…





色々面白い話を聞かせてくれるし

鶏も…夢乃さんが飼っていると聞けば

なんだか犬や猫を飼うよりも…

変わっていて…よく思えたし…






カズコ「あら!由季ちゃん!

    今日はどうしたの?何かあるの?」






ユキ「いえ…早く目が覚めて…暇だったから…」







前は…

朝起きて寝癖が大して付いていなければ

軽くクシでといで店に出るか

寝癖が激しい時は

一つ結にした髪をヘアゴムに留めて

雑なお団子頭風にしていただけだけど…





夢乃さんから教えてもらった

お団子ヘアをチョコチョコ頑張っている…






ユキ「・・・ピアス…開けようかな…」






そう呟いていると

「由季ちゃんおはよう!」と

夢乃さんが買い物に現れて

「おはようございます」と背筋を伸ばして

夢乃さんの髪型をチェックすると…






ユキ「かっ…可愛いです!!」






「今日は色々あって

 テンション上がらなかったし手抜きだよ?」






今日のヘアアレンジはハーフアップで

夢乃さんいわく「手抜きのクルリンパアップ」

らしいけどガッツリ編み込まれてないラフさが

余計にオシャレに見える






ユキ「すごいなぁ…

  あの蒼紫さんも泣いちゃうわけですね…」






思わず口に出てしまい

慌てて口に手を当てると

夢乃さんはパチパチと瞬きをした後

「あぁ!就任式ね!」と笑い出した





蒼紫さん…なんて名前を呼んだ事もなかったし

たまに帰って来ているのをチラッと見ても

無愛想なおじさんだなとしか思ってなくて…





餅つきの事を伝えようと

呼び止めた時も怖かったし…





ニコニコと優しい夢乃さんと

あの怖い蒼紫さんじゃ不釣り合いだよと

商店街の皆んなとは逆の考えだった…






( だから…ビックリした… )






両親に連れられて

蒼紫さんの何とか式に行った時に

いなくなった夢乃さんが現れたのにも…

無愛想な蒼紫さんが泣いて夢乃さんと

仲良く手を繋いで現れた事にも…







「いやぁ…なんか年下の由季ちゃんに

  あんな恥ずかしい所見せて…ごめんね?笑」







首を少し傾けて謝る仕草すらも

オシャレに見える夢乃さんに

蒼紫さんもきっとメロメロなんだろうなと思っていると…






「ん!?何これ??」






レジの横に貼ってある

福引きのポスターに目を止めた夢乃さんは

ジッとポスターを見上げていて

「あぁ!商店街の福引です!」と説明をすると

「特商…温泉なの?」と頬を赤くして言い

「はい」と答えるとパッと顔を明るくさせ

「ねッ!どうしたらいいの?」と問いかけてきた…






ユキ「あの…商店街で買い物をして   

   酒屋さんの所にある引き換え所で

   福引をするはずですけど…」






「へぇー…福引…」







顎に人差し指を当てて

ポスターに書いてある

該当店や日付を口にしている夢乃さんに

「蒼紫さんとですか?」と特商の温泉を

指差して問いかけると

夢乃さんは「ふふ…」と幸せそうに笑っていた









   




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