第7話
メイドとの同棲生活 8日目
「リア充ライフ予行演習その1、プールで遊ぼう~」
「そういうテンション感なのか…」
夏休みにリア充になった時のために特訓(?)をすることになった訳だが、その第一弾として今回は地元の市民プールにやって来た。ここを訪れたのもあまり明確に思い出せないが、小学生の時が最後だった気がする。どこの学校も夏休みに入ったのか、小さな子供を連れた親子や、男女数名の学生グループとそれなりの賑わいを見せている。
確かにプールに一人で訪れる酔狂な奴は、老若男女存在しえないだろう。夏休みは友達とプールに遊びに行くというイベントは現実世界でもラブコメでも、わりとデフォルトの様になっている節がある。来年以降に向けていい訓練になるのでは無いかという、期待感が僅かに湧いてきたぞ。
「今日は友達一号の私と時間の許す限り遊びつくすわよ」
「具体的になにをするのか教えてもらえると、ありがたいが」
「何をするとか特に決まってないんじゃない?こういう時はスクールカーストが上の奴の発言に力があるの。そいつがちょっと泳ごうと言ったらみんなで泳ぐ、小腹がすいたと言ったら割高なホットドッグとか買って休憩する。そうやって空気を読みながら円満に一日過ごせるように努力するの」
「そんな高度な駆け引きを要するのか…」
昔より、人付き合いは複雑で難しくなっている。特に若者の間で。そんな記事を以前見かけたが、やはりそうなのだろうか。自分を肯定する訳ではないがそりゃ、友達なんて必要ないと悟りを開くのも無理はない。
「現代の若者は苦労が絶えないなぁ……」
「何年寄り臭いこと言ってんの…。もっとポジティブに捉えられないの?」
「そんなこと言われたって……。今も俺の友達一号のせいで、ずっと居心地が悪いと思ってるけどな……」
今日の特訓に関しての俺のモチベーションは2:8で後ろ向きな気持ちが強めだ。しかも、それはここに来てからも強まる一方だ。
「お前、注目集めすぎだろ」
それは、俺の友達である雪姫が原因である。こんな田舎に似つかわしくない、キレイな白髪を後ろで一つに束ね、たかが市民プールに黒のビキニを着用し、否応にも視線を奪われてしまう。
「もう少し、自分のことを客観的にみたら良いんじゃないか?」
「十分理解してるからこのスタイルなの。偶には人目を集めて承認欲求を満たしたいの。私は見てくれは良いという自負があるからね」
「あえてのそれならもう何も言わねーよ……」
完全に悪目立ちだと思うが、そんな事わざわざ言う必要はないだろう。
今のこの状況は注目を集めているとも、浮いてるとも言える。何事も程々がいいという先人の言葉はやはり間違っていなかったみたいだ。
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