第2話

 約4か月ぶりの来客として迎えたのは、見知らぬ白髪の美人。

 何なんだこの状況は。


「改めまして、本日付で真様の専属メイドとなりました。凪原雪姫です」

「俺もついさっき知ったんですけど、誰からの依頼ですか?」

「功様です」

「一言ぐらい相談があっても良かったんじゃ……」


 どんな思惑があるのかは分からないが、孫に何一つ伝えないで専属メイドを派遣する祖父がいようか。

 俺の祖父の西条功は田舎の小さな建設会社の社長である。それもあってか子供のころから不自由なく生活させてもらっていたし、高校生にして一人暮らしをさせてもらえるのにもそういった背景があったりする。孫のために専属メイドを派遣するぐらい造作もないだろう。だとしてもだ……


「俺にわざわざメイドをつけなければいけないほど自堕落な生活を送っているつもりはないです。一人暮らしの男子高校生にしてはいい方でしょう?」

「その点に関しては功様もご心配されていません」

「じゃあ、尚更理解できないんですが……」

「最後にいつご友人と一緒に外出されましたか?」

「うっっっっ!!」

「最後にこのリビングに客人を招いたのはいつですか?」

「ぐっ゛っ゛っ゛っ゛!!」

「功様の懸念されている理由はそこです。真様の交友関係の狭さについてです」

「そんな人、今時珍しくないじゃないですか……」

「狭すぎるからです。現実にいないならまだしも、SNSやゲームにだっていないじゃないですか」

「30分前に知り合ったばっかりで明らかに言い過ぎですよ……」


 心配をさせてしまうのであれば、こちらに非があるように思えてくる。しかし、今時そういったポリシーを持つ人がいても何らおかしくないし、口口に多様性と言う時代になったんだから俺のこともそっとしておいて欲しいものだ。


「とりあえず祖父が言わんとすることも凪原さんがここを訪れた理由も、納得は出来ないけど飲み込むことにします。だけどこの現状が、凪原さんが来たからって改善されると思わないでください!!」

「なぜ喧嘩腰なのかは分かりませんが改善させますよ?そのために私が任命されたわけですし」

 

 そう言い放った凪原さんの鋭い視線に気まずさを感じて、目をそらしてしまった。

 そんな強い目力で美人に見られて、見つめ返せる人間がいるのか?少なくとも俺には出来ないしこの時点でどちらが上か理解させられた気分だ。


「じゃ、じゃあ精々頑張ってみてくださいね!」

「もちろん。望むところです」


 ぐっと握りこぶしを作る凪原さん。ただ、放課後や休日に遊びに行くぐらいの仲のいい友人を作らせるだけで、こんな気合を入れるのか?『そんなことも出来ていないからこんなことになったんだろ?』なんて思っても言っちゃいけない。

 


「ということで今日から一緒に頑張っていきましょう。最終目標は友達100人です」

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