第3話 なぜか、涙が出てきた
ある日の夕方、ロシアがついに、
ウクライナに侵攻したというニュースが流れた。
商品先物は、原油とニッケルが爆上がりしていた。
トレードは日中だけにしているので、
夜はテレビを見て過ごしていた。
9時から始まる刑事ドラマ。
主人公の男がジョギングをしているシーン。
その時、和正の両目から、
突然、わけもなく、涙が溢れてきた。
涙を誘うシーンではない。
イケメン俳優がジョギングをしているだけだ。
「僕は感情がおかしくなってしまったのだろうか」
ドラマは、クリーニング屋のおばちゃんと
客のお姉さんとのやりとりシーンになった。
2人は、クリーニングに出していたブラウスを
手渡しながら、笑顔で井戸端会議をしていた。
和正は何故か、涙が止まらない。
「もしかして・・・何かあったとか」
和正は、直感した。
一人暮らしで、特に交友関係もない和正にとって、
今一番心理的に気になっている人は
『ギャラリー神栖』のツイートをしている女性だ。
和正は、ツイッターアプリを開いた。
「!」
飼っていたインコが亡くなった、と
数秒前にツイートされていた。
写真は無かったが、本当の事だろう。
インコの写真は見たことがある。
ブルーの雄で、よく喋るインコ、
とのことだった。
「あのインコが、亡くなったんだ・・・」
和正には、さっき止まらなかった
涙の意味が、解った気がした。
度重なる食事の偶然と、
わけもなく溢れ出てきた涙と
可愛がっていたインコの死。
「この人とは、縁があるかもしれない」
和正は、『ギャラリー神栖』が何処にあるのか、
気になって、画廊の住所を調べようと思った。
リンクされているホームページを見た。
「ええーっ!」
和正の住むタワマンからバス停1つ分ほどしか
離れていない、近所だった。
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