第4話 彼女を確かめる

 翌日は、とても良い天気だった。

朝はまだ寒いが、徐々に春めいてきている。

『タワマンかずまさ』のアカウントで

天気についてのツイートをして、

TKGと味海苔と梅干しを食べた。


 駐輪場に行き、自転車に跨ると、

スマホで『ギャラリー神栖』のホームページを開けて、

時々地図を見ながら自転車をこいだ。


 迷うことのない、わかりやすい道のりで、

 15分ほどで着いてしまった。

 「こんなに近所だったとは・・・」


 ツイッターで気になっている相手、

ということだけだったので

『ギャラリー神栖』をとても遠くに感じていた。


 遭遇することなどありえないであろう間柄であるが、

同時刻の食事メニューが同じであることが多い女性。

偶然なのか、何なのか、気になって仕方なかった。


 ようやく、その女性の正体が

明らかになる時が来たのだ。


 『ギャラリー神栖』の向かいは運良く公園になっていた。

サンドイッチを座って食べた、と

ツイッターに載っていたあのベンチもあった。


 和正は、そのベンチに座って、探偵のように

『ギャラリー神栖』の自動ドアを見張っていた。


 若い女性が、桃色のケースを持って出てきた。

 泣きはらした後のように、瞼がむくんでいる。

 美しい手が、ツイッターの写真と同じだった。


 (あの人だ・・・)


 ブルーのハッチバックの

1500ccくらいの車に彼女は乗り込んだ。


(多分、ペット葬儀だな・・・)


 充電器を2つ持ってきたので、

ゲームをしたり、ニュースを見たりして、

彼女が戻るのを待つことにした。

 

 3時過ぎに、彼女の車が戻ってきた。

 彼女は、意気消沈していた。

 とても、話しかけられる雰囲気ではない。

 和正は、彼女の帰宅を待ったものの、

声をかけることはなく、タワマンに帰ることにした。

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