第6話 デートの終わりに
「じゃあ俺は車だからここでお別れだ」
「はい、今日は一日ありがとうございました!! また一緒に……」
「悪いが今回が最後だ。今日以降君と関わるつもりはない」
「何で……? 今日私何かしちゃいましたか!? 何かしちゃったんなら次から直すからっ!」
どうして……。今日一日いい感じだったと思うのに。佐藤さんの言葉に私は頭が真っ白になってしまう。
「いつまでも期待させちゃ悪いと思って。俺は高校生と付き合う気はないんだ」
「私が高校生じゃなかったら付き合ってくれたんですか?」
「少なくとも20歳を超えていないとそういう対象として考えられない。未成年に手を出して万が一問題になった時に責任を問われるのは俺の方なんだ。そんな危険を犯してまで君と付き合いたいと思わない」
「そんな……」
「考えてくれ、君が俺を好きで居てくれるのは嬉しい。でもその気持ちを受け入れて付き合ったとしても、親や周りの人から受け入れられなかったらどうなる。未成年に手を出したと訴えられたら、社会的に悪いとされるのは俺の方なんだ。会社だってそれが明るみになれば首になるかも知れない。そんな危険を犯して知り合ったばかりの君と付き合えると思うか?」
「……」
「人生そう全てが上手くいく訳じゃないんだ。今回はそうだったと思って受け止めてくれ。こんなおっさんに振られるなんて申し訳ないが」
「……」
色々なことが巡って何も返事をすることが出来ない。今口を開いたら嗚咽しか出てこないだろう。私は必死に涙を耐えていることしか出来ない。これ以上佐藤さんに嫌われたくない、子供だと思われたくないという一心だった。
「長く今のやり取りを続けて期待させるくらいなら、一回デートしてちゃんと話した方が良いかと思ったんだ。苦い思い出となって申し訳ないが、これが俺の答えだ。君が何と言おうとこの考えが変わることはない」
「……はい」
「電車で待つようなこともしないでくれ。迷惑だ」
「……っ」
「君の気持ちは嬉しかった。これはそのお礼だ。じゃあ元気でな」
佐藤さんはそう言うと、紙袋を私に渡して去っていった。それを私は呆然と見送ることしか出来なかった……。
◇
「何それ!? デートして期待させるだけさせといて振ったの!? 最低じゃん!」
「……でも多分デートしてくれなきゃ私は佐藤さんの話ちゃんと聞かなかったと思う」
いつも私は一方的に佐藤さんに話しかけたり、メールしたりで押して押して押しての状態だった。きっとメールで振られたくらいじゃへこたれなかったと思うし、納得も出来なかったと思う。
直接会って話す時間を作ってくれたのは、それだけ誠実に対応してくれたのだと思う。本当にどうでも良かったなら連絡も無視したりとかやりようならいくらでもあった。
「もうそんな人忘れて次行こうよ次っ! 今度隣の男子校の文化祭あるから行ってみない?」
「うーーん、暫くはそういうのは大丈夫かな。でもありがとう」
「まぁ失恋から立ち直るには時間も必要だよね。新しい恋を見つけたくなったらいつでも言ってね!」
千里には申し訳ないが、佐藤さんのことをまだ忘れることは出来なさそうだ。そんなにすぐ立ち直れないほど私は佐藤さんのことが好きだったらしい。今でも彼の姿がないか電車を探してしまうが、どうやら通勤時間や車両を変えてしまったみたいで、あの日以降佐藤さんの姿を見かけることはなかった。
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