もう遠くなったあの時の事

仁志隆生

もう遠くなったあの時の事

 思い起こせば二十数年前、成人式も終わった頃。

 なんでか知らんが、妙な胸騒ぎがずっと続いていた。

「うーん、なんじゃこれは?」

 そう思いながらも特に何もしないまま、ひと月が過ぎたある日の事だった。


 父が病院に担ぎ込まれた。

 元々体が弱く何度も入退院を繰り返していたが、その時はもうかなりヤバい状態だった。

 当時は携帯電話が普及しておらず、ポケベルの時代だった。

 自分はその時上司と出先にいて、その上司が会社支給のポケベル持っていて(自分は下っ端だから持たされてなかったし、私物でも持ってなかった)会社経由で上司に連絡がという具合で知った。

 それからすぐ病院に向かい、着いた頃には容態は安定していたのだが、予断を許さないとの事だった。


 そして連絡のついた親戚や父の友人達が集まり、深夜になった頃……父は逝った。

 

 そこからやれお通夜だ葬式だと大忙し。

 もう必死だったわ。



 その後「ああ、あの時もっと勘を働かせていれば、もしかしたら……」なんてのを一年くらい思い続けた。

 けど、そんな事思い続けても仕方ないとなった。

 これも後で聞いたが、どうやら父は癌の初期状態だったそうだ。

 死因は別なのだが、もしそれを回避できたとしても体の弱い父では癌の手術や治療に耐えられなかった……。


 今は当時ほど悩みはしないが、たまに思ってしまう。

 もっと早く第六感働かせていれば、なんて。

 いやそんな都合よく働きはしないだろだが、父方祖父の時は予感があったもんだからなあ……。


 何が言いたいかというと、皆様ももし第六感のようなものを感じたら(んなもんある訳ねーだろかもと思われるかもですが)不発だったとしてもなにかした方がいいかもですよ。

 やらずに後悔するよりはマシな気がしますので。


 

 

 父が亡くなった歳と同じになり、もうじき追い抜くオッサンの呟きでした。

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