違和感という名の第六感

芦田朴

第1話

自分の部屋に入った瞬間、違和感を感じた。


6畳のフローリング。

無造作に開けられたモスグリーンのカーテン。

小学生の頃から使っている木製の机。

机の上の本に文房具。

机の前のベッド。


いつもと何も変わらない配置。

だが、なぜだか違和感を感じていた。


誰かが入ったー。


明確な証拠はない。

だがこの部屋に流れている、いつもの空気が少し歪んでいるのを感じるのだ。

私には特殊な能力がある。

違和感という名の第六感のようなものだ。


部屋に入り、あたりを見回す。

誰かが入ったのは間違いない。

私は誰かに触られた形跡がないか、目視で机まわりを見渡した。ノートや文房具、タブレットの微妙な位置は私のルールで密かに決まっている。だが、触られた形跡はない。


ふと振り返った。


いや、待てよ。

その誰かは、今もこの部屋にいる。

間違いない。

第六感が私に教えている。

突然胸の鼓動が高まり出した。


私は意を決して

ドアの横にあるクローゼットの扉を

勢いよく開けた。


……!


……そこには服が吊り下げられているだけで

誰もいなかった。


気のせいか……?


いや、確かに空気が歪む瞬間をライブで感じたのだ。人には隠したくても隠せない、身体から放出される熱気や息づかいがある。それが空気に歪みを作るのだ。


……ベッドの下か……?


そっと忍び足でベッドに近づき、足を止めた。

その時だった。


「ごはんができたよ〜!」


階下から2階にある私の部屋に母親の大きな声が響いた。


「はーい!」


私はその声に、大きな声で返事をした。

私はドアに向かって歩き始めた。


と見せかけて、ベッドの前に戻り

勢いよく下を覗き込んだ。


……!

いた!


「うわっ!」


私は驚きのあまり、飛び上がり尻もちをついた。

信じられない光景にもう一度覗き込み

自分が見たものが間違いないか、恐る恐る確認した。


……やっぱり、いる!


ベッドの下で這いつくばっている黒い影。

その黒は暗闇でも鈍く光っていた。


ゴ、🪳

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違和感という名の第六感 芦田朴 @homesicks

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