第29話 「クイーン」攻略(語り手多数)
~語り手・フリューエル~
今から「クイーン」の画像を見る。それだけでよどんだ気分になれますね。
画像が始まりました………。
まず、クイーンの大きさですが、今までの「オオキナヒト」が高層ビル(六十階建てぐらい)の体躯を誇っていたのとは違い、三十階建てのビル程度の大きさです。
大きい事は大きいですが、少しでもダメージが入りやすいのはいいことです。
そして、全裸で四つん這いといった感じに見えるポーズを取っています。
実際には頭が体に比してかなり大きく、頭でも体を支えていますが………。
女性に見える要因として、人形の女の子めいた顔つき―――ただしくるみ割り人形。理由は後述―――をしているのと、ぶらんと垂れた乳牛めいた乳房があるからです。あと、腰にくびれも見受けられます。
顔がくるみ割り人形に見えるのは、顎が「ばかっ」、と開いており、そこへゾンビ達が列を作って入っていっては「ばきゃっ」と潰されているからです。
どうなっているのか知りませんが、再び開いた時にはそこには何の痕跡もありませんでした。多分吸収しているのでしょう。魂封印具の中にわずかに動きがあるので。
そして、腰というか股の部分からは、ぐちゃ、となにかゼリーのようなものが「生まれて」います。「生まれる」といったのは、そのゼリーの中で、何か生物が蠢いているからです。魂もありますが、これは「侵略者」の魂です。眷族を生ませているのでしょうか………。
そして何より、「クイーン」には「兵隊アリ」が群れていたのです。
手足から登ってきて、背中で待機し、「なにか」が産み落とされると、背中から落下して急行。ゼリーから「なにか」を取り出し、いそいそと異空間に帰っていく。
開いた背中には、手足から登って来た一団がまた待機する。
そんなことを繰り返しています。
珍しくヴェルが発言します。
「「クイーン」の弱点は頭と脳みそで間違ってないはずだ。いま『視』えた。
そういえば、ヴェルは「弱点看破」が使えるんでしたね。
「でも、問題はアリだよな、邪魔で集中できないし、さすがに邪魔してくるだろうし」
「とりあえず、私たちでもう一度ドローンを飛ばしてみませんか?攻略の意見はそれからでも遅くないでしょう」
私が持って来たドローンは、万能型の軍事ドローンだ。精度は高まると思われた。
「今は夜ですから、滑走路だけ間借りして、「ウィングブル」で朝を待ちましょう。私も、十二時間運転の後ですから疲れていますし」
「俺は寝なくてもいいな………アユーシさん、ここの飛行機っていじってもいい?」
「好きにしな、どうせあたしたちには操縦できないさ」
「うん、ありがとう」
雷鳴と私たちは別行動となりました。というか爆撃機を見に行くなら私も一緒に行きましょうか?と言ったのですが。
「必要そうなら後で操縦法を伝えるから、寝てていいよ。疲れてるだろ?」
と言われたので、大人しく休むことにしました。
朝です。目覚まし時計の鳴る前に起きたのでOFFにし、ヴェルの後頭部をこんこんとノックして起こします。特に文句も言わず起きてきました。
雷鳴も戻ってきており、書き置きがあります………なになに。
「「起こさないでください。ドローンは任せた!詳細映像を期待してる!今寝てる面子は留守番で!」………ですか」
ま、いいでしょう。何もぞろぞろ全員で行くことは、確かにありません。
私は寝ているミシェルの傍らからノートパソコンを取り、エレクトロキネシスで充電しました。それから、ドローンを荷物の山から引っ張り出します。これもバッテリーに充電して、と。説明書は一読しましたが、歩きながらもう一回読みます。
ちなみにヴェルは荷物持ちです。それ以外にやる事がないとも言います。
………一応お互いがお互いの護衛みたいなものではあるんですけどね。
町の外周に着きました。ゾンビはいません。
向こうに気付かれずにドローンを飛ばせるのは、ここからぐらいでしょう。
ドローンの準備をします。白ですので、雲のある晴れである今日は一番気付かれにくいはず。リアルタイムで映像が送られてくるようにパソコンと同期させて………。
………射出!
一気に中心へ進めます。あのおぞましい姿が目に入りますが、今回の目的は、アリの観察と、ゼリーの中身。しばらく蟻の姿を映します。ズームは6倍の最新式なので、ある程度高度が取れます。
最後にゼリーに急接近、アリに気付かれましたが、後は引き上げるだけです。
急上昇し、落とされることなく町の外へ帰還しました。
帰ってくると、正午です。雷鳴以外は起きていました。
雷鳴も叩き起こして、映像を見るように言います。
映像を開始して少し。アリは、「クイーン」で見えてなかった場所に、異空間通路っぽいものがあり、ここから出てくることが判明。
「ここは最初に塞ぐべき場所だな。俺、爆撃機を見に行ってたろ?」
「行ってましたね、使えますか?」
「ちゃんと使える。航空燃料もあって、アユーシさんに使用許可も取った。本当は、背中に乗ってるのを一掃したかったんだけど、優先順位が変わったな。でも2機使えば、両方達成できそうだ。その後上から『呪いの業炎』をかけてやろう」
次にアリ自体を観察。見ているだけでは分かりませんでしたが、ヴェルがぼそっと弱点はゾンビと変わらん。頭だと言ってくれました。
最後にゼリーの中身ですが………予想通り子アリでした。
「クイーン」あれは大きな女王アリなのですね。
そして離脱する時、飛んで追いかけて来ました。
結構速くてヒヤッとしましたが、すぐに追うのを諦めてくれて良かったです。
「攻略は、順序立てて言うと、まず爆撃機で一機が異空間通路を塞ぐ。もう一機の爆弾で、背中にいるアリをメインに爆撃する。爆撃機を人気のない方に放棄して、全員飛行。一番攻撃力の高い一人が、脳を攻撃。その他は空中戦闘に入る。アリが飛行戦闘しないで頭に行こうとしたら、上から潰す。手榴弾もたくさん持って行って、上空から投擲して、空中戦闘に引っ張り出します。誰か一人は頭を攻撃してる人の護衛につけましょう。あと、アリは全滅させましょう。ロクな事がないと思います」
~語り手・雷鳴~
相変わらずフリウは作戦立案が早いな。
「おおむね賛成なんだけど、頭を叩く役は誰がやる?その護衛は?」
「それを今から決めるんですよ。ヴェルも私もこの中では力が強い方です、が『剛力』が解放された雷鳴君とだとどうなるか分からない、ので―――」
「ので?」
「腕相撲で決めましょう」
ここに第一回(次があるのか不明)腕相撲大会を開催します!
最初はヴェルとフリウ!接戦です!
同レベルの筋力のようですが、辛うじてヴェルに軍配が上がったー!
次は休憩を挟んでヴェルと俺。俺は『教え・剛力十』で対抗します。
勝負はあっさりとついた!俺の勝ち!
ちなみに念のためにと全員とやったが、全部俺の勝ちだった。
「頭係は雷鳴で決定ですね」
「うん、それで護衛役にはヴェルが欲しいんだけど?」
「理由はなんです?」
「飛んでる敵を叩くより、地についてる奴の方が叩きダメージが通りやすい」
「確かに。重要な役目ですが、ヴェル、やってくれます?」
「ああ」
「それから、皆の武装なんだけど、剣とかよりショットガンがいいと思うんだ。ある程度密集して飛んでるだろうし」
「言われてみればそうかもしれませんね。全員持って行きましょう」
「腕のアザに響くけど、戦場で痛みが無くなるのはまずいと思うから。痛覚鈍麻は5ぐらいで。それとももっと軽減して欲しい?」
「いえ、もっともな理由ですし、それで十分です」
他の面子も、問題なしのようだった。
「じゃあ、さっきのフリウの作戦でいこう」
異論は出ない
「なら、俺とフリウは爆撃機に乗ってみないと。他の面子は手榴弾を引っ張り出してきて点検のち、手榴弾ベルトに装着してて!」
はーいという声をバックに、俺とフリウは爆撃機のハンガーに行く。
滑走路の真横に連なっている。
「そこの二つ、整備を終わらせてるから、フリウは飛べるかどうか機器類を調べてくれる?俺はやったけど、飛べそうだった」
俺が大丈夫なのだから、フリウもいけるだろう
「動かせます、大丈夫。飛んでみましょう」
おいおい、今からやる気か?まあいいけどさ
「じゃあ、俺ももう一機を出すよ」
幸いこの爆撃機は、簡単な方だ。計器も少ない。フリウが先に滑走路まで運転して辿り着いた。ので、先に飛ぶことに。
フリウは順調に離陸する。都市とは反対方向に飛んで行った、当たり前だけど。
フリウが帰ってくる頃(三十分後)には、準備を終えた皆が見物に来ていた。
「問題なく飛べました!爆弾投下のスイッチもちゃんと入りましたが………雷鳴?」
「ん?何?」
「私たちが運んで来た爆弾って、規格が合いませんよね、爆弾はどうするんですか」
「あー。それはここのを使う。元から持ってきたやつは、手で運んで投下するつもりで持って来てたから。大丈夫、アユーシさんの許可は取った!」
「今回は投下実験できませんね」
「さすがに、ダミーはなかったよ」
「あなたがそういうなら、ないんでしょうね」
「調べたからね」
俺とフリウは頷き合った。ぶっつけ本番だ、と。
さて、俺も順調に飛行し、帰還した。
後は、いつ決行するかだけど………折衷案で日の出前(4時ぐらい)はどうかな?
異論は出なかった。じゃあ、それまで思い思いに休憩だ………。
俺は起きておく事にした。
タブレットを借りて、ネットサーフィンしたり、ゲームしたりして過ごす。
~語り手・リリジェン~
出かけるまで結構時間があるので、「ライノ」の掃除でもしようかと思っていたら、フリウ様から、女子会のお誘いがありました。
女子というには年ですけど、と言ったら、それだと私はお婆さんになる。と言われたので、この際女子会は年齢不問になりました。
今回はシナモンティーです。シナモンはラベーンのスーパーで買ったそうです。
この間は携帯コンロでしたけど、今回は普通のガスコンロで、やかんを使ってお湯を作っています。出来上がったら、シナモンティーは皆に配るのだとか。
沸騰したらすぐ止めて(沸騰させるのは、水が痛んでいるかもしれないからです)ティーバッグを二つ入れ、じっくり待ちます。適当ですが、この場合の時間が分からないので、きっちり色が出たらティーバッグを引き上げます。
それに、シナモンパウダーをふたふりぐらい。それと皆のにはお砂糖を一杯。
私たちは、たっぷりお砂糖を入れます。
フリウ様が、皆にお茶を配り終わって帰って来ました。
クッキー缶を持って来てくれました、まだ開けた事のないやつです、キャッ。
粗食に耐えていると、普通のクッキーでも、ものすごく美味しく感じますからね。
冷凍食品は、量的にちょっとづつしか使えませんし。
肩からブランケットをかけ、目の前にはクッキー缶。フリウ様と寄り添います。
いい機会なので、日ごろ気になっていた事を聞いてみましょう。
「あのう、フリウ様」
「ん?何でしょうかリリジェン?」
「前から気になっていたんですが………フリウ様はヴェルの事、好きなんですか?」
げほっ、ごほ、ごほん。
「大丈夫ですか!」
「大丈夫です、ごほっ、器官に入りかけただけで………」
「良かった。それで、どうなんですか?」
フリウ様はちょっと困った顔をしましたが
「好きですよ。決して成就させてはいけない………いえ、成就したとしても共に進むことの有り得ない恋ですが………」
フリウ様は目を細めます。
「ヴェルとはバディの誓約を交わしているので、それもありますが、それ以上に一緒にいてくれます。操縦中ぐらい、一人になりたくないのか問いかけてみても「別に、お前とならいい」と、言ってくれる人です。何より、契りを交わした仲ですしね」
「えっ、それって………あ、あのラブホテルですか?」
「静かに!」
「す、すみません、内緒ですよね」
「知られてもいいのですが、話したことがわかると、不機嫌になると思いますので」
「そっちですか⁉」
「はい」
「向こうがどう思ってるかは、見ればわかりますよね?」
「はい、さすがに私でも分かります。フリウ様以外の人との温度差が凄い………でも雷ちゃんには温度差、そうでもないですね。どうしてでしょう」
「ここでも、魔界でも、雷鳴が強者だからでしょうね。彼は戦魔ですから………」
「ああ………なるほど」
「リリジェンは好いた人はいないのですか?」
「え………あっ………わっ」
「落ち着きなさい」
呆れられてしまいました。
でも、それを口に出すのは………でもフリウ様も答えてくれたのですから。
「い、います」
「唯一絶対のお方………わ、わたしは天帝陛下に恋をしていますっ」
フリウ様の口がOになっている、崇めるお方に恋してるなんて、変ですよね。
「リリジェン………成就は別にして、その思いは尊いと思いますよ」
「えっ、ええっ、そうでしょうか?」
「かのお方は、疎ましく思ったりしません。あなたのような娘なら」
「そうで、しょうか」
「疎むような心の狭い方ではありません。自信をもって好きだとお言いなさい」
「ありがとう、ございます」
「お茶がすっかり空ですね」
「ええ、これにて女子会は終了という事で」
「またお話してくださいね、フリウ様」
「ええ、もちろん。………私は少し眠ります」
「私はスマートフォンをいじっています」
「では、明日朝四時に」
~語り手・フリューエル~
ああ、実に恥ずかしかったです。思わずヴェルの姿を探すと、筋トレ(親指一本で腕立て伏せ)の最中でした。実に脱力します。
親指のみを支えとした倒立をしていたので、近くを通りかかったふりをして「あなたが好きですよ」と囁くと、バランスを崩して慌てていました。可愛いですね。
ちなみにミシェルは、ノートパソコンに張り付いています。
体の火照りもおさまったので、寝ることにしましょう………。
ジリリリリリリリ!!(爆音)
朝四時です。目覚まし時計が鳴ったので、寝てた人は全員が起きました。
朝のストレッチを全員でやると、皆で爆撃機の所に行きました。
全員、専用のベルトに手榴弾を装備、ショットガンを持っています。
機体は出入庫から出して、順番に並べてあります。先頭が雷鳴、次発が私です。
雷鳴の機体にはミシェルとリリジェンが。私の機体にはヴェルが乗っています。
爆弾もすべて積み込み済み。
いざという時、何かあったら、全員飛んで逃げれるのが気楽と言えば気楽ですね。
私たちは飛び立ちました。すぐにシュンデウリの中心に辿り着きます。
雷鳴が、異空間通路周辺を爆撃。
直撃弾も結構あるようで、異空間通路は潰せたようです。
雷鳴は瓦礫を片付けられるのを防止するため、炎が燃え続けて消えない(術者の任意で消せる)『教え・血の魔術・呪いの業炎』を放っています。
私は背中のアリを中心に、周囲に爆弾をバラまきます。
羽を出したアリが、迎撃に上がってきます。私は無線機で雷鳴に「放棄します!」と通達。適当な広場に機首を向けて、離脱します。ヴェルもです。
雷鳴も私とほぼ同時にミシェルとリリジェンを伴い離脱。
離脱したら、「クイーン」上空に来ている兵隊アリを、ショットガンで仕留めまくり、とにかく数を減らします。
そして雷鳴が頭めがけて。ヴェルが首の根元あたりに下降するので援護します。
二人が取りついたのを確認して、まだ飛んでないアリがまとまっている所に手榴弾を投下していきます。慌てて飛び立つアリたち。
他の二人(リリジェンとミシェル)は、四肢を登って来るアリを狙っています。
そのおかげで、四肢から登るのは危険だと判断して、飛んでくる奴が増えました。
徹底的に地上戦力を叩いた結果、空中で新たな戦いが始まります。アリは私たちと近接戦がしたいようですが、こちらは近づいて来ないようにショットガンで落としていきます。三人で背中合わせになり、三方向から迎撃します。
至近距離まで来たら、剣を抜く予定です。
~語り手・雷鳴~
上空では今のところ、アリを寄せ付けていないようだ。
こちらは、降下した時点で多少のアリがいたので『剛力十』『瞬足十』『頑健十』を使い、ファルシオンを抜いて薙ぎ払うと、真空の刃が発生し、視界内全てのアリを殺傷した。残りはヴェルにお任せだ。
巨大な頭の上に立ち「ハアァッ」気合と共に振り下ろす!
衝撃波を伴った一撃は、皮膚を吹っ飛ばし、脳にも―――恐らく結構な―――ダメージを与えた。青いクリスタル状の脳の内部には亀裂が走っている。
もういっちょ、行っとくか。俺はファルシオンをしまい、ヴェルのおさがりのカイザーナックルで殴る、殴る、殴る。
この時点で脳はほぼひび割れに覆われたが、まだ割れる気はないらしい
~語り手・ヴェルミリオン~
フリウの機体から飛び出して、俺は真っ直ぐに首の付け根?(太すぎるのだ)に舞い降りた。最初からいたやつらは、雷鳴の一撃で破砕された。強い、戦いたい。
雷鳴は頭の方に行ったので、そこへのルートを塞ぐように立ち、次のアリを待ち受ける。それは程なく、手榴弾をかわしてやって来た。
俺は一言もなく、頭に打撃を入れて回る。
すると奴らは中距離から蟻酸のようなものを吹き付けてくる。アレだろう。それだけはやめろ。ショットガンを手に取り二~三匹を撃破。残りは接近して、頭をたたき割った。蟻酸を吹きかけられた場所が酷く痛む。
腕と、顔の一部だ。後から取れてくれるといいが。
また、空に上がらずこちらへ急行してきたやつらが来た。
接敵するまでにショットガンで数を減らしておき、接敵したら蟻酸を受けないようになるべく迅速に進める。上手くいかずに食らう事もあったが。仕方ない。
~語り手・フリューエル~
徐々に距離を詰められてきました。やつらのペースにはまらないよう、念動で動きを止めてやり、そこを、頭を狙って薙ぎ払います。
他の二人にも声をかけ、同様のことをします。ミシェルは一体一体剣で頭を割っていき、リリジェンはなんと、左腕の火炎放射器を浴びせました。羽と体を焼かれて落ちて行くアリたち。落ちた先で潰れています。
アリたちは徐々に距離を詰めては倒されと繰り返していますが、途中からパターンが変わりました。中距離で蟻酸を吐きつけてくるようになったのです。
全員、これだけは受けたくない奴です。腕でガード。腕の痛みが激増しました。
それを感覚の外に無理やり追い出し、距離を詰めて薙ぎ払い。
ミシェルも私のやり方を見て覚えたのか、薙ぎ払いを敢行しています。
リリジェンは、火炎放射ですね。しばらくそれでいくことにしたようです。
ふと気づいて、中距離のアリたち全部の頭に、「超能力・パイロキネシス・人体発火」をかけてみます。すると、大して力を使ってないのにばたばたと、面白いように落下していきます。頭部分に水分が多いんでしょうね。そんな手ごたえでした。
これからは、中距離に来られたらこれを使う事にしましょう。
~語り手・雷鳴~
やっと、脳が表面から順に剥離し始めた。デカいのでまだまだだが。
再びファルシオンを抜いて、衝撃波と共に振り下ろす。
「ぎっやあああぁぁっぁあぁあああああああああ」
「クイーン」の悲鳴が聞こえる。別方向へもう一撃プレゼント!
「やっやめやめやめてててってて」
ビックリした。「クイーン」が意味の何とか分かる悲鳴を発したからだ。
だが止める意味はない!
クイーンの肉襞みたいな髪が、触手状になって俺を攻撃してきた。
シュパパっとバラバラに切り裂いて、脳つぶしを続行。
そんなに悲鳴をあげられると、悪魔の精神が喜びを覚えてしまう。
多分、今俺は笑ってることだろう
クイーンの頭にV字に切り込みを入れて、くり抜いたりもした。
当然悲鳴が上がるが、有効打の証なので良し。
そんな感じで奇跡が起こせるようになるまで、俺は「クイーン」を苛め抜いた。
そして。リリ姉が「奇跡を起こします!けど、今回はアリが残ると思うので気を付けて、奇跡が終わった直後が狙い目だと思うから、目を閉じて待機していてね!」
と全員に聞こえるように叫んだ。
アリは明らかに慌てて、リリ姉を攻撃しようと集まるがもう遅い。
想いを込めて この世界を想い 伝えます
癒しの祈りを 救いの祈りを 絆の祈りを
存在の祈りを
魂の営みを われらは諦めず
例え迷うても、生命は再生すると信ず
世界を抱き 良きなるものに光を導きたい
われらに託された、かけがえのない祈り
癒しの祈りを 救いのの祈りを 絆の祈りを
存在の祈りを
生命は営みを諦めない
例え迷ったとしても、いのちは再生すると信じてます
だからこそ、わたしは祈るのです…
どうか希望の力を
目を閉じていても、場が爆発的な光に占められるのが分かる。
光がおさまった。それと同時に目を開け、空に舞いあがり、フリウ達の方に行ってないアリを見つけ、一閃。脳から液体を漏らしながら落下していく。
俺はそのまま、はぐれアリ、逃げようとしているアリを見つけては潰していった。
~語り手・フリューエル~
奇跡の光がおさまらないうちから―――天使は耐性があるので―――私は行動開始していました。棒立ち(棒浮き?)になっている者の半数ぐらいを視界に入れて『パイロキネシス』で落としていったのです。
ミシェルも私と同じく早くから行動しています。逃げようとするのを優先して倒してるようですね。そちらはミシェルに任せて、私は後の半分を落としました。
後は残敵狩りです。隠れている者、逃げようとしている者を皆で潰して回ります。
心が痛まないわけではないのですよ?でも、これは私たちマザー宇宙の住民に害しかもたらしません。排除しなければならないのです。
割り切れる天使はどれだけいるでしょう?少なくともミシェルは大丈夫そうです。
空中に光の球が出現します。それがはじけて―――レイズエル様の姿をとりました。
「お疲れ様。もう兵隊アリは駆除できたから、出てきたわよ。今回はどうだった?」
「きっちり作戦通りにやれた結果、蟻酸?だけがダメージらしいダメージでした」
そう言うと
「水属性魔法・スコールウォーター」
雨が、シャワーのように降ってきました。蟻酸の痛みが溶けていきます。
「火属性魔法・ドライ」「火属性魔法・ウォーム」
そして暖かな日差しのような温かさと共に乾燥させてもらいました。
落ち着いたところでお礼を言います。
「前回パイロキネシスを戻していただき有難うございました。今回役に立ちました」
「それは何より。………さて、ギフトの時間です!」
「雷鳴には『教え・頑健』の解放を」
「ありがと姉ちゃん!」
「フリューエルには『超能力・オーラ視覚』の解放を」
「精神感応ではカバーできない所ですね、ありがとうございます」
「ヴェルミリオンは、ナックルに「切り攻撃の性質」も纏わせてあげるわ。必要ないときはスイッチみたいにオンオフできるから、念じてね」
「………わかった」
「ミシェルには生命力の解放を」
「うわ、元に戻るって、安心します」
「リリジェンには、空気砲の改造(しばらく右腕を持って何か唱え―――)真空の刃にすることもできるようにしたわ。あなたの意志一つで変わるからね」
「ありがとうございます、院長先生」
「で、物品支給なんだけど今回はみんな揃ってこれ!行く場所の暗示になっちゃうけど、順番が変わっても今更大して変わらないし」
そう言ってレイズエル様が出してきたのは人数分の水中ゴーグル。
「何の変哲もない水中ゴーグルよ。役に立つと思うから持って行って」
「なんでだ………とは聞いちゃいけないんだよね?」
「その通り。それじゃあ、またね」
そう言うとまた光球になり、消えてしまわれました。
………エトマカ空軍基地に帰還しましょうか!
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