第28話 海を越えて(雷鳴・フリューエル)

 ~語り手・フリューエル~

 私とヴェルは疲労困憊していました。

 首都からラベーンまで。爆撃機では二時間もかからなかったのですが………。

 私とヴェルの飛行では丸一日かかったからです。

 ちなみに途中までは全力飛行だったのですが、全力疾走と同じであまりにしんどくなってきたため、途中で滑空メインに切り替えています。


 そして、辿り着いたのは次の日の午前十時。

 疲れているのは私だけではありません。

 普段あまりそういうことを顔に出さないヴェルまで明らかに疲れています。


 仕方ないので、雷鳴に連絡を取って、一眠りしてから「ウィングブル」で戻ると告げます。すると構わないが、後でやってほしい事があるとのこと。

「ライノ」の置き場所は「ウィングブル」の四分の一ほどを占めているだけなので、まだ余裕がある。食料と、あと爆弾を多く積んでくれと言われました。

 機会があったら、また爆弾を使うかもしれないから、と。

「了解しました」と返事を返し、一旦「ライノ」で寝ました。

 最も、丸一日『痛覚鈍麻』を使って貰ってないので、上半身がひどく痛み、眠りは浅いものでしたが。ヴェルも少し腕肩をかばい、嫌そうにしていました。


 午後六時まで寝て、起きると、アザの痛みは耐えがたいものになっていました。

 鎮痛出来る雷鳴がいない状態で、この戦いが続いていたらと思うとゾッとします。

 荷物の積み込みを早く終わらせて、皆の所に戻らないと………。

 もちろん痛みにかまけて、積み込みに手を抜くことはしません。

 特に爆弾はきっちり固定しておかないと危険です。

 食料も、「ライノ」の中の分と合わせて、三か月は持つよう調節しました。


 それが終わってから、雷鳴に連絡を入れてます。

「今から合流します。「ウィングブル」を郊外につけるので、今までのデータから推測するに、正午あたりになると思いますので、起きてて下さいね」

「了解。アザ痛いだろ?早くこっち来いよ」

「それだから、悪魔にしては優しいと思うのですよ、雷鳴」

「う~ん。今は仲間だからって事で。それに誰にでも優しいわけじゃないよ」

「それも殺し文句だと気付いていますか?」

 私は呆れます。

 天使は人間全てに優しいですが、悪魔は特定の者だけに優しいのです。

 特別扱いは甘い蜜………特に人間にとっては。

「仕方ありませんね、あなたたちは………。では、出発します」

 ちらりと、ヴェルにも目を向けてから私は前を見据えました。


「ウィングブル」は四~五時間かけて、首都郊外の道路に到着します。

 一時間前に雷鳴には連絡を入れておきました。


「現在首都の南道路に着陸。見えてますか?」

「着陸するのがさっき見えた。今、そっちに自転車で向かってる」

 成る程、自転車を徴収したようです。都市では、いい移動手段かもしれませんね。


「お~い、フリウ~、ヴェル~」

 真っ直ぐな道路の先に手を振る雷鳴達が見えてきました。こちらも手を振ります。

 メンバーの中でヴェルだけが手を振っていません。

 まあヴェルが手を振ったら、正直正気を疑うので、それでいいのですが。


 ~語り手・雷鳴~

 手を振り返してくれたけど、腕痛くないかな………と思っているうちに合流した。

「お疲れ様!」

「「距離」とは予想外の難敵でしたよ」

「俺らも「マジか」と思った。この国広いよなぁ」

「去る間際になっての感想ですね」

「だよなぁ………あ、そうそう全員に「教え・治癒・痛覚鈍麻MAX!」」

 フリウを筆頭に、全員の表情が弛緩する。ヴェルでさえ軽く息を吐いている。

 勿論俺も、痛みで強張っていた体を弛緩させた。

「感謝します」

「まあ、リリ姉以外全員だから全然構わないよ。自分もだしね」

 そう言いながら俺は「麦」を一つ口に放りこむ。


 皆が「ウィングブル」に乗り込み「ライノ」に集合する。

 定番になりつつある俺の啓示を聞くためだ。フリウは俺の後ろに正座する。

 今回は最初からフリウに膝枕してもらう。

 バトルスーツ越しなのに、女性の天使特有のいい匂いがふわりと香る。

 普通に寝そうだが、ヴェルのジト目で覚醒した。

 いかんいかん、瞑想だ瞑想。………深く………深く………。

 

 ぱちりと目を開けた。かすかな目まい。そしてフリウのいい匂い。

 名残惜しいがむくりと起き上がる。

「どうだった?」


「次の目標地はインデのようです。目一杯遠いですね。しかもインデの首都シュンデウリです。海路もかなり長いですが陸路も長いですね。今回メインの敵はオオキナヒト本体というより「侵略者」の兵隊アリになりそうですよ。それと、今回の「オオキナヒト」は女性タイプかもですね」

 それにミシェルが付け加えるように

「ノートパソコンで調べたら、そこからちょっと行ったところにエトマカ空軍基地っていうのがある。そこをひとまずの目的地にしたらどうかな?そこを起点にシュンデウリを調べよう。生き残りとかは、今から調べるよ」

「おう、任せたぞミシェル!」


「しかしフリウ、俺結構謎な事言ってるんじゃないかと思うんだけど。いつもきちんと具体的に誘導して読むんだな」

「間違えたこともあったではないですか。私の解釈は一応疑って、証拠固めした方がいいと思いますよ。地名はさすがに間違っていないと思いますが………」

「そうか………でもまあ、証拠固めには賛成だ」


「さて………では行先のインデですが」

「何だ、フリウ」

「遠いですよ。太平洋横断です。「ウィングブル」の速度だとインデに着くまでに五日、着いてからはエトマカ空軍基地まで一日半です。そこまでたどり着いてしまえばそこからシュンデウリは徒歩で二~三時間ですが」

 計六日半です。とフリウは言う。

「ですから、運転交代も六時間ごとはせわしないので、十二時間ごとにしませんか?日のあるうちは私たちが、日没からはあなたたちがというように」

「俺はいいよ、願ったりだ。それでいこう。あ、リリ姉は自由にしてていいからね。暇になったら、操縦席に遊びに来るといいよ」

「ありがとう、雷ちゃん。私が運転できればもうちょっと違うのにね」

「リリ姉は普通だよ。運転できる俺とフリウがおかしいんだ」

「そんな事ないわ。二人がいなかったら、海を越えて移動なんてできなかったもの」

「こっちもリリ姉がいなかったら敵を倒せてないよ。卑下しないでゆっくりしてて」

「そうね………分かりました」


「じゃあ、出発しようか。最初のフリウとヴェルは、日没まででいいから」

「了解しました」

 俺とミシェル、リリ姉は、「ライノ」の中で休むことにした。

 基地に戻っていたフリウ達を起きて待っていたので、眠気はある。

 程なくして三人とも眠りに入った。


 日没に、俺は自動的に目を覚ます。

 そしてミシェルをリリ姉に気付かれないように起こす。リリ姉は放置だ。


 コックピットに入ると、まだ海には出ていないらしい。陸が見えた。

「ああ、丁度ですね雷鳴。これ、地図です。逸れたり迷ったりしない様によろしく」

「了解、太平洋の上って確か本当に何もないもんな。星が頼りか」

「タブレットにガイアの星図を出しておきました、参考にしてください」

「サンキュ」

 そのやり取りをしてから、俺たちは交代した。


 ミシェルはHPの上で、生きてる人間に接触してくるよう促しているようだ。

 俺の運転中、ずっとボーっとしなくていいからか、気合が入っているようだ。

 もうちょっと早くこの役目をやらしてやれば良かったな。


 しばらく色々検索、掲示板への書き込みをしていたミシェルが

「エトマカ空軍基地に避難している人たちがいて、彼らは「ゾンビがいつの間にか居なくなった」と言ってるよ」

 と報告してきた。

 またかよ、おい………まあ、前の(ラベーン)は規模がシャレにならなかったから、小規模なエトマカ空軍基地だとだいぶ違うけど。


「ここの人たちは、家から持ち出してきたものや、野生のものを使って近くで畑を作ったり、野良になっていた家畜を集めて世話して自活を試みてる。これは友好関係だけ築いて、このままにしといたら良いんじゃないかなあ」

「自活してけてるんなら、俺達が世話焼く必要はないな。口糧でも手土産にするか」


「滑走路の障害物………パニックの名残で滅茶苦茶らしいよ。それだけどかしといて貰えるように頼んでみたら、要望があった」

「何だ?」

「ドローンがあるから、シュンデウリの偵察も引き受けてくれるって。その代わり使えるようにしてある車が二~三台欲しいって。バンとかトラックがいいそうだけど」


「なら、まだそこまで離れてないし、ラベーンに戻って調達するか」

「うん、それがいいと思う」

 俺は方向転換し、ラベーンへ向かった。


 朝方、ラベーンに戻ってきた。

 起きだしてきたフリウ達に説明をする。

「成る程………向こうの都市に使える車両があるとは限りませんしね、探すのにも手間と危険がある。いい判断だと思いますよ」

 車の運転はミシェルも出来るから、俺とフリウ、ミシェルで取りに行こう。

「『教え・観測・縮小国家』」

 何度目かのこの教えの使用だ。

 軍のものから探す事になるが、向こうも、軍用のバン―――兵員輸送車の小さい奴か?―――があった方がいいだろう。

 トラックは普通のものになるが、基地を出ればゾンビはいるだろうし、バンの方は頑丈な奴を持って行ってやろう。

「ウィングブル」には丁度、兵員輸送車を置けるところが三台分残ってる事だし。

 ああ、先日フリウに積んでもらった口糧と爆弾は、空いてる所にどけないとな。

「兵員輸送車の在りかを示せ」

 と、立体映像に命じる。

 まとめて置いてあるらしく、強い光が輝いた。飛行機の格納庫の裏手だ。

「トラックの在りかを示せ」

 また別の所が光る。基地の入口付近だ。輸送トラックなのだろう。


 ミシェルをトラックに、俺とフリウは装甲バンに手分けした。

 ヴェルとリリ姉には待っててもらう。


 運んで来たバンとトラックは両方とも、一応の装甲は施されていた。

「ウィングブル」につみ込む。

 ガソリンも満タンだ。

 ミシェル曰く向こうにあるそうだけど、この方が気分いいだろう。


 さぁ、積み込みが終わった。

 発進だ………の前に『痛覚鈍麻』をかけなおしておく。

 夜は明けているので、フリウとヴェルの担当である。

 俺達二人は寝た。リリ姉はスマホをいじっている。暇つぶしだろう。

 充電は、乗り込む前にフリウが全部やってくれた。超能力マジ便利。

 俺が言うなって?ごもっとも―――おやすみなさい。


 それから三日過ぎた。何事もない、空の旅である。海しか見えないが。

 

 その三日目でミシェルからの報告があった。

 エトマカ空軍基地の面々が、ドローンで異様な物を撮影したと言っているそうだ。

 俺達の目的やしてきたことは教えてあって、はっきり疑心を表明されていたそうだが、この画像を見て考えが変わったそうだ。

「エトマカに着いたら、車と引き換えに見せるって言ってるよ」

「思わせぶりだな………まあ取引だからな」


「それと、五人のグループと、二人の個人の生存者を見つけた。離れた都市だから目的を達成して手が空いたら向かうと書き込みしておいた」

「もう助けることになってるのか………しょうがねえなあ」

 ミシェルに任せたのは俺だしな。


 ~語り手・フリューエル~

 もう二日もすればインデに到着します。

 しかし、太陽に晒されて運転するのはともかく(ヴェルは時々、太陽を睨みつけて「忌々しい」と吐き捨てたりしてますが)曇りや雨の日は大変でした。

 何せ目印のない大洋で、太陽も星も見えないのです。

 おかげで、二組とも堂々巡りしたり、後退したり、違う方向に行ったりする有様。

 実はインデにはあと一日で着く予定が、遅れてしまいあと二日に増えてます。


 あと一日でインデに着きます。

 やっぱり操縦できても、経験が少ないのはダメですね。天気に翻弄されすぎです。

 同じ様な事を、交代時に雷鳴も言っていました。もっと計器が欲しかった、とも。

 確かに「ウィングブル」の計器は必要最低限ですが、他の面で十分お世話になっているので、私は仕方ないかなと思います。


 インデに着きました!久しぶりの陸地です!

 上から見ても、どこの都市もゾンビがいます。

 人口の多い国ですからね………これでも少ないのかもしれません。

 下の様子を見ながら進みます。

 ここからは道を間違える心配はありません。地図の通りで良いのですから。


 あと半日ほどでエトマカ空軍基地に着きます。

 雷鳴の起きる時間帯なので、丁度いいでしょう。

 しかし、やはりというか、眼下に見下ろす町からは、首都に近づくにつれてゾンビが消えていっています。

 やはり「オオキナヒト」の所に引き寄せられて行っているのでしょうか………。

 エトマカ空軍基地の人たちが撮ったという画像待ちですね。

 もちろん、自分たちでも試みますが。


「おはよう、もうすぐだと思って起きちゃったよ」

 そう声をかけながら、雷鳴がコクピットに入って来ます。

「なあ、ちょっと思いついたんだけどさ、どうせエトマカ空軍基地とシュンデウリってすごく近いじゃん?」

「それがどうかしましたか?以前ラベーンで取得したドローンを、偵察に出しに行きやすそうだとは思っていますが」

「横切るだけなら、大丈夫だと思うんだ。シュンデウリの上空………町の中心を」

「なるほど、自分の目でも確認したいと?」

「飛べない?」

「ウィングブル」だと本当に横切るだけですよ?危険なので高度も取りたいですし」

「いいよ、向こうの画像と同じ感じか見たいだけだし」

「………分かりました」


 現在、首都・シュンデウリを一望できる場所に居ます。

 やや、高度を下げて―――中心部を横切ります。


 そこで見たのは、四つん這いの巨大な女性―――乳房があるので女性と形容します―――に群がる黒い蟻の群れでした。そして、『オオキナヒト』特有の封印具の中で融合していく無数の魂。私の視力ではこれ以上見えませんでした。

 雷鳴は『教え・視覚変化・拡大』と言っていたので、もっと見えたはず。

 私の見えた範囲を伝えて、そっちは何処まで見えたのですか、と聞く。

「頭は、カパッと口?を開けて、ゾンビの列を延々と呑み込んでいっていた。それと、股に当たる部分から、ゼリー状のものに包まれた何かを「生んで」た」

 吐き気がしますね。この「オオキナヒト」の名称は「クイーン」でいいでしょう。

 雷鳴にそう言うと

「同感、明らかに女性を模してる。髪の毛まであったよ、肉で出来てたけど」

 話している間にも「ウィングブル」は町の中心から遠ざかっていきます。

「あとはエトマカ空軍基地で見せて貰いましょう」


 ~語り手・雷鳴~

 エトマカ空軍基地が見えてきた。滑走路からは、邪魔なものがどけられている。

 フリウは滑走路と平行になるように機体を旋回させて、侵入、着陸。

 「ウィングブル」の操縦はもう慣れたよねー。

 着陸と同時に、四名の男女が基地から出て来た。

 フリウが後尾のドアを開放し、コクピットを出てミシェルとリリ姉と合流する。


 出てきた男女は皆動きやすい服装をし、腰には思い思いの得物を下げていた。

 「あんたらが「救援隊」かい?」

 一歩前に出て、中年の女性が誰何してくる。

 たくましそうで綺麗で巨乳なだ、俺は気に入った。

 

 俺はミシェルの肩を抱き

「そうだよ。パソコン越しにそちらと対話してたのはこいつです。改めてご挨拶(救援隊の名称、まだ使ってたのかよ)」

「初めまして、ミシェルです(なんかまずかった?)」

「(まずくはないけどくすぐったい)こちらは誰がリーダーっていうのはないので………俺は雷鳴です」

 それを受けて、皆口々に自己紹介する。

「通信してたのが、こんな若いあんちゃんだったとはね。とういうか、皆若いようだね………あたしはアユーシ。約束のものは?」

「あ、今下ろしますね!」

 ミシェルが車の方に走っていったので、俺達も手伝って、装甲バンと装甲トラックを「ウィングブル」から降ろす。


「燃料は、満タンだよ。こっちにあるって聞いてたけど、一応」

「ああ、構わない。今すぐ動くんだろうね?」

 ミシェルと俺とフリウが揃ってうなずく。

「確かめさせてもらうよ」

 そう言ってアユーシさんは、連れの人たちに、一時間ほど試乗してこいと指示した。

 まあ、車を買う時にも試乗はするし、そんなもんかな。


 俺は「ウィングブル」から、口糧を百ほど持ち出してきた。

「これ、美味くも不味くもないけど軍の口糧だから、栄養はあるよ。お土産だ」

 そう言ってアユーシさんの前にどさり、と口糧を置きます。

「………まあ、礼は言っておこうかね」

「そう?それは良かった」

 俺ははニコニコして受け答えする。

 まるで自分のおばあちゃんに話しているかのような気分だ。


「エトマカ空軍基地から、ゾンビがいなくなったのはいつ?」

「4週間ほど前だね、それ以前も遭遇率は低かったさ、けど、一日に一度も遭遇しなくなったのは」

「皆の様子を見たところ、出会ったら戦闘していたんだね?」

「そうだよ。ここにいるのは子供以外皆戦士さ」

 聞いてみたら、戦えるのは男女合わせて三十人程で、後は子供と老人だそうだ。


「実際ゾンビを刃物で倒していたのなら忠告を!ゾンビの体液が体の中に入ると、ゾンビになる。だから武器は、使ったら極力洗うようにしたほうがいい。そのままだと、それで怪我した人が出たらゾンビになる」

 と、危険性をアユーシさんに訴える。

「なんだって?………気味が悪いし臭いからそれ以外の用途に使うなと言ってはあったけど、徹底させた方が良さそうだね」

「そうしたほうがいい、それと………」


 俺はゾンビの体液が粘膜に付着してもゾンビになると注意勧告をする。

「農業して家畜を飼ってるなら、タネなんかを手に入れるのに他の町に近寄る事があるだろう。そういう時は、マスクをして、サングラスをかけた方がいい。それと、ゾンビの弱点は頭、脳みそだ。首を落とすと一応動かなくなるけど、実は頭は動くんだ、だから脳を損傷させて確実を期す方がいい」

「さすが、ずっと戦ってきただけのことはあるね。徹底させてもらうよ………しかし、「アレ」がずっと街の真ん中にいたんじゃ、サングラスを探しにはいけないよ。何があるかわかったもんじゃないからね」

「俺たちが「ソレ」を倒したら、首都シュンデウリのゾンビはいなくなる。それから探しに行くといいよ」


「あんたたち、「アレ」を見たのかい?」

「飛行機で、通り過ぎざまだけどね。だからこっちの情報には期待してる」

「本当に「アレ」を倒す気だとはね」

「こっちでは「クイーン」と呼んでる。前に「キング」に当たったからね」

「あんたたちのHPで見たよ。映像がなかったから、デマだと思ってたが………「アレ」を倒したら信じるよ」


 その他にも様々な話をする。


 一~二時間ぐらいで車が戻りだした。

「良い走りでした、救援隊の方にお礼を!」

 と、運転席から下りてきた若者が言う。

 他の車も帰って来、口々に問題なしと告げる。


 そして約束通り、ドローンの画像を見せて貰う事になった。


 ~語り手・フリューエル~

 雷鳴は、彼にとっては美人のお姉さんらしいアユーシさんと話し込み始めました。

 こちらは他に人もいないし暇なので、お茶にすることにしました。

 携帯用コンロと、水、鍋とそれぞれのマグカップ、ティーバッグ。

 それと、ラベーン市内で手に入れた美味しいクッキー缶。

 スーパーに色んな種類があったので、その棚を空にする勢いで買ってきました。

 普段が「美味しくも不味くもない」口糧ですからねぇ………。

 みんな、携帯用コンロを囲んで座っています。

 雷鳴に視線と顔の動きで来るか聞きましたが、いらないとのこと。

 やがてティーバッグを入れたお湯が沸いたので、全員にお茶を入れていきます。

 中心にあったコンロと鍋を片付け、代わりにクッキー缶を設置します。

 滑走路でお茶会です。


 二時間弱で、車が帰ってきたので、私はお茶会の後始末をします。


 車は不具合なく動作したそうで、良かったです。

 それを受けてアユーシさんは、「クイーン」の映像を見せてくれるそうです。

「皆、付いて来てって言ってる」

 雷鳴に言われて、アユーシさんの後を追います。

 場所は、空軍の施設で、会議所のようになっているところでした。

 信用されたのか、農地の作業が忙しいのか、護衛はいません。

 長テーブルの置かれた所に、ドローンとそれに接続されたパソコンがあります。


 それで、私たちは再度―――今度は詳細に―――おぞましいものを見るのでした。

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