第27話 モップ退治(語り手多数)

 ~語り手・フリューエル~

 爆撃機の爆撃訓練は、上手くいきました。と言っても、何回か訓練しましたが。

 その度に「偽爆弾」を回収してきてくれた皆に感謝です。

 もちろん、私と雷鳴も回収には行きましたが。

 

 実際の状況と合うように、何度も動画を見て進路と作戦を決めました。

 私が「モップ」の周囲を大きめに飛び、ゾンビの駆逐を。

 雷鳴が「モップ」の内側を飛び、触手の内側を削る。

 もちろん、わたしが「モップ」をひっくり返していることが前提です。

 その後は、キャノピーを壊し、各自飛行して脱出。

 リリジェンが残っているゾンビを「浄化」して回り

 私と、筋力・敏捷力が復活しているミシェルで触手を押さえます。

 雷鳴とヴェルは、脳破壊に集中です。

 後は個人の裁量で動きましょう。作戦は以上です。


 作戦開始は、朝六時と決まりました。両種族(天使&悪魔)の折衷案です。

 雷鳴が普通のヴァンパイアだったら、夜一択だったのですが。

 ともあれ今は夕方六時です。

 が、雷鳴は「寝る」の一言と共に「ライノ」にこもってしまいました。

 どうも無理をさせていたようです。邪魔はしないでおきましょう。


 私も体力を温存しておかないといけません。


 ~語り手・ミシェル~

 雷鳴は寝た。リリジェンも魔力回復のため寝るそうだ。

 ヴェルは、格闘動作の自主練。数時間後には寝るといっていた。

 フリューエルさんはタブレットを弄っている。こちらも数時間後には寝るそうだ。


 雷鳴がHPを任せてくれたことで、ちょっと役に立ててる気がしてきた。

 休まないといけないのは分かってるけど、それなりに時間が余ってる。

「球拾い」はしんどかったから、ちゃんと寝るつもりだ。けど数時間だけ………。

 救出を待つ人だけじゃなく「首都SOS」の人みたいに、情報をくれる人を見つけないといけないってわかってる、でも見つからない。

 仕方ないので「首都SOS」にコンタクトを取って、もう一度動画を送ってくれるように頼んだ。今は夏、まだ日は長いから、ちゃんと見れる画像が送られてくるはず。


 三十分もたたずにそれは送られてきた。

 そして気付いた。触手が異様に伸び縮みすることに。

 しるるるる、と伸びた触手は他の職種と融合し、かなり遠くのゾンビを吸収した。

 しかも、先端には丸く牙が生えている。

 もしかして、爆撃機が低空飛行したら届くんじゃあ?

 今回の作戦は、触手は脳には届くだろうけど、他の所までは思い至ってなかった。

 せいぜい、近くにゾンビがいたら、栄養補給して増える、ぐらい。

 でも、伸びるならある程度の数を復活させると、元の状態になろうとするのでは?


 俺は、全員を叩き起こした。ヴェルも呼んで来る。

 雷鳴が著しく不機嫌だったが、画像を見せたら顔つきが変わった。


 「ミシェル、お手柄だ。よく撮り直ししてもらった。これは、俺が脳に向かうのは止めて、触手に当たった方が良さそうだな。ヴェルの殴り攻撃は、脳には有効でも触手相手にゃ向いてないから」

「そうですね………あと爆撃は出来るだけ高空から行いましょう。もう一度だけ練習しましょうか?」

「嫌だけど、練習はしないと不安だな………」


 そうして、もう一度だけ、今度は高空からの爆撃の練習が行われた。

 やや、外周担当のフリウ様の狙いが大雑把になるが、それはもう仕方ない。

 雷鳴はそう外さずに落とせていた。

「フリウ………風が強い場合、外周はかなり流れそうだな。『念動』で爆弾の制御は可能か?ひっくりかえした後だけど………」

「可能です。生命力を削ってでもやってみせますよ。その後『身体強化』もします」

「大丈夫か、とは聞かないぞ」

「結構です」

 そのやり取りには口を挟ませない何かがあった。


 ~語り手・フリューエル~

 訓練が終わったのは夜十時。皆、朝の六時までは寝ることに決まりました。

 雷鳴が『痛覚鈍麻』をMAXでかけてくれたので、安らかな眠りにつけました。

 今かけたのは、戦場では痛みを全然感じない方が危険だからだそうです。

 まったくもってその通り。


 朝、四時に目を覚ましました。痛覚鈍麻が二レベル下がったからです。

「ウィングブル」から出て、飛行機を二機とも給油します。

 その後、格納庫にあったメンテナンス票を見ながらメンテナンス。


 そんなことをやっていたら、目を覚ました皆が起きてきました。

「メンテナンスまで終わらせておきましたよ」

「またフリウ………今回はお前の体力、滅茶苦茶大事なんだぞ?」

「疲れるようなことはしてませんよ、準備運動がわりです」

「それでも、だ」

 そう言って、ヴェルが私の頭をぐしゃっとしました。


 うなずく雷鳴。

 あれ、私今悪魔二名にお説教されていますか?

 ………釈然としないですが、素直に謝っておきます。


「すいません、浅慮でした」

「まあ、メンテナンスはお礼を言っとくよ」

「ええ」


「もうこういう時にはやるなよ」

「ごめんなさい」

 ヴェルが心配してくれたのが少しうれしいです。


 さあ、出発の時です。

 私の機体にはリリジェンとミシェルが後ろに。

 雷鳴の機体にはヴェルが後ろにそれぞれ乗っています。

 最後に、キャノピーの開け閉めを確認してから、出発です!


 舞い上がる機体。2時間ぐらいで首都に着くでしょう。


 首都が見えてきました。

 全員が臨戦態勢を取り、私は遠くに見える「モップ」を見据えます。

 ある程度近づいたところで、両機ホバリング。


 行きます『超能力・念動力………』

「モップ」が宙に浮きあがります。触手が道路に吸い付き、抵抗が生じますが、私は構わずに「モップ」をひっくり返します。触手が結構ちぎれ飛びました。


 不幸中の幸いですが、私は余計に消耗しました。

 でも予定通りに、『超能力・身体強化MAX」をかけます。

 視界がぼやける、目まいがする。それを無理に正常に戻し、私は機体を操作します。


 雷鳴君に、通信機越しに「OKです!GO!」と合図をします。

 予定通りの展開になりました。

 私はモップの外側のゾンビをメインに爆撃します。

 きっちり着弾するよう、念動で操作して。


 目がチカチカします。でも、周囲のゾンビはほぼ全滅しました。

「2人共、離脱!」

 後部座席に告げて、キャノピーを跳ね上げます。二人が飛んで離脱したのがちらっと視界に入って来ました。


 私は空き地に向かって、爆撃機を進めます。進路を固定して、私も離脱―――と思った時、機体が空中で静止します。

 そのまま、私の機体は、ハイウェイに叩きつけられました。触手の仕業です。


 私自身は、余裕をもって離脱。細い―――伸びてるからでしょう―――触手に追いすがられましたが、抜剣して切り落としました。

 後の二人も、無事なようです。


 ~語り手・雷鳴~

 ホバリングする。フリウが「モップ」をひっくり返そうとしているのが分かる。

 だが、予想外のことに触手が地面に吸い付いて邪魔をする。


 しかし、フリウは諦めなかった。抵抗する触手を千切りながら、「モップ」を逆さにする。俺の目には、「モップ」の真ん中に長方形の青い水晶体の姿の「脳」―――『勘』だが―――がはっきり見えた。


「ヴェル、あの青いのが脳だ!」

 と怒鳴っておく。

「分かった」


 ヴェルの返事と共に、通信機越しにフリウから「OKです!GO!」の通信が来た。

 それと同時に、上にきちんと落ちるようにしながら、触手上に爆弾を投下していく。

 割と簡単に、相当数の触手を無力化したと思う。


「ヴェル、離脱!」

 言うと同時にキャノピーを跳ね上げる。

「応」

 ヴェルは飛行して離れていく。脳みその方へ。


 俺は「剛力・瞬足・頑健」を全て十でかけ、麦を二粒飲み込む。

 そして離脱する寸前、機体が空に制止させられる。

 ヤバい。『勘』が囁く。俺は出来るだけ高速離脱した。


 ハイウェイに機体がぶつけられる。もう一つの機体も同じ目にあっているようだ。

 これは………こんな力があるんなら、マジでひっくり返しを警戒しないとな。


 そして、俺にも追撃の触手が来た。それは、みじん切りにしたけども。

 おれは触手が一番残る地点を目指して降下していく。迎撃は全て切り刻んだ。


「フリウ!外周「モップ」の上側触手を頼む!ひっくり返しが危険だ!俺はヴェルへの露払いに入る!ミシェル!外周「モップ」の下側触手を頼む!リリ姉は復活してくるところの「火消し」をお願い。後は各自で!」

「「「了解」」」


 ~語り手・ヴェルミリオン~

 目標地点に着いた。サファイアのような硬質だが、半透明の石の中には色とりどりの球体が浮かんでいる。けったいな脳だ。

 まあ、いい。

 とにかく殴ればいいんだろう?


 ………固いな。俺本来の武器なのに固い。勿論ヒビは入るが、なかなか砕けない。

 同じ場所を集中して攻める。だんだん砕けてきた………。


 途中で触手が邪魔をしてきたので殴る。

 ああ、これは今までのカイザーナックルでは傷も入らなかったんだろうな。

 今の武器なら、一本ぐらいなら捌ける。多数来たら雷鳴に任せた方が早い。

 戦いたい衝動はあるが………いまは脳に集中だ。


 ~語り手・フリューエル~

 上辺と言っても、かなり広いです。なんせビル並みの巨体ですからね。

 ただ、だいぶ焼け焦げていますが、残ってるのを放置していい事は何もないでしょう。飛びながら剣を横に構えて切り裂いていきます。

 ただ、切れた触手を別の触手が吸収して………を繰り返して、太い触手を作り出してきます。その力とスピードは、私に比べて遜色ないほど。長期戦は不利です。

 なので、出来るだけ短期に倒しますが………代わりに噛みつかれてしまいました。

 バトルスーツの上からでも、歯は食い込み、血を溢れさせます。

「超能力・治癒」をかけましたが………今度は疲労が。長い間は持ちませんね。


 ~語り手・ミシェル~

 下辺ですが、ほとんどちぎれ飛んでいる、が、残った触手は脅威だった。

 他の職種の残骸を吸収することで、太い触手が出来上がってきたのだ。

 そいつの戦闘力は高く………倒すまでに、噛み傷を二、三貰ってしまった。

 ハンカチを引き裂いて血止めだけはしたけど………そう何回も戦える相手じゃないよ、これ。

 とにかく、ひたすら手早く切り落としていこう。飛びながら剣を振るった。


 ~語り手・リリジェン~

 雷ちゃんに「火消し」を任されたので、上空から触手の濃いところや復活してきそうなところを探しては、空気砲(肘)を打ち込んで殲滅していきます。

 厄介なのは、融合して太くなり襲ってくるモノです。

 こちらは、ハルベルトで相手をせざるを得ないようです。


 激戦になりました、リーチがあるので巻き付かれたりはしませんでしたが、噛んできました。私は腕で止めます。

 嘘でしょう?!私の金属製の腕が少しですがへこみました。

 胴体と首、顔には絶対当たってはいけません。

 最終的に、ハルベルトで頭を落とし、次いで根元を切り落とす事で解決しました。


 絶対、太くまとまらせてはいけない。それを念頭に置いて「火消し」を務めました。

 フリウ様もミシェル君も苦戦したようです、唯一高い所にいる私が、前兆を見つけて潰してあげないと………。


 ~語り手・雷鳴~

 おいおい、こいつらお互いに吸収しあって太くなってくぞ。

 取り合えずその前に、根元からカットしていく。

 それでも蠢くので、「教え・血の魔術・呪いの業炎」を剣にまとわせて切りつけ、切り口を焼いてやった。そうするとウゴウゴとうごめくものの、融合はしなくなった。

 けど、ヴェルの四方全部にそれをやってくには、手が足りない。太い奴を一本完成させてしまった。ヴェルの所に行く前に何とか前に立ちふさがり、攻撃を入れていく。

 なんつー弾力だ、剣が入りにくい。だが業炎は効果があって、再生はさせない。

 何回か噛みつき攻撃を貰ってしまった。血は派手に吹き出したが、すぐ再生するので問題はない。苦戦したが倒した。

 それからも、何度か太い奴が出来てしまったが、どうにかそれらを倒していく。

 焼き尽くしたら、ヴェルと一緒に脳を攻撃しよう。


 ~語り手・フリューエル~

 きついですね………。リリジェンが、太くなりそうな辺りを爆撃してくれているので、何とか持っている状態です。

「雷ちゃんが、根元を焼いて再生を止めています!出来る人は実行を!」

 焼くのですか。しかしわたしは『超能力・パイロキネシス』は一番苦手なのです。

 でも、太いやつの断面を焼くぐらいならなんとか………。


 確かに燃やすと、再生する兆候が無くなりますね。出来るだけ使いますが、私が倒れてしまうところまでは使えないので、本当に太いのだけです。

 後は剣で解決する方がいいでしょう。そちらも息が上がっているのですが。

「リリジェン、まだですか………⁉」

「もう少し、もう少しだけです!」


 ~語り手・ヴェルミリオン~

 そろそろ全体を殴り終えたな。重要な所は………やはり真ん中か?

 真ん中に集中し始めた俺に「そこで合ってると思うから重点的によろしく!」と雷鳴が声をかけてきた。

 そして、破壊に参加してきた。

「もう少し、もう少しだけです!」

 リリジェンの声が響く。そうか、ならこの中心に―――「オラオラオラァ」連撃を叩き込む。そこに雷鳴の切り攻撃が入る。

 ビキビキビキ………全ての「脳」に波及したようだ。


「行けます、皆さん………」

 リリジェンの声。俺はその声がした方向に背を向ける。雷鳴もだ。


 想いを込めて この世界を想い 伝えます

 癒しの祈りを 救いの祈りを 絆の祈りを

 存在の祈りを

 魂の営みを われらは諦めず

 例え迷うても生命は再生すると信ず

 世界を抱き 良きなるものに光を導きたい

 われらに託された、かけがえのない祈り

 癒しの祈りを 救いのの祈りを 絆の祈りを

 存在の祈りを

 生命は営みを諦めない

 例え迷ったとしても、いのちは再生すると信じてます

 だからこそ、わたしは祈るのです…

 どうか希望の力を


 ~語り手・フリューエル~

 リリジェンの祈り、そして奇跡。何度見ても見飽きることがないほど美しいです。

 光が治まったその後には、「モップ」もゾンビもおらず―――。

 清い空間になったそこに、再度光が瞬き、予想通りの方が姿を表します。

 レイズエル様。やはり今回も出て来てくださいました。


 『治癒魔法・万能回復!』

 レイズエル様のこちらにかざした手が光ると、全員の傷と、疲労が回復します。

 本来なら、バッドステータスも回復する呪文ですね。

 疲労が取れたのは本当にありがたい………倒れる寸前でした。


「お疲れ様、みんな。3体目ね」

「ありがと、姉ちゃん。今回もボーナスってあるの?」

「あるわよ。一人づつね」


「雷鳴は『教え・剛力』を本来の強度まで解放してあげる」

「やった!」

 雷鳴は嬉しそうです。よく使ってますもんね、それ


「フリューエルはパイロキネシスの解放ね」

「この先使う、という事でしょうか。元々苦手なのですが………」

「さあ?でも今回は有効だったでしょ?」

「確かに。分かりました。受け取らせていただきます」

 私は頭を下げる


「ヴェルミリオン、あなたは『特殊能力・弱点看破』を使えるようにしてあげる」

「………!ありがたい、無いともどかしかったからな」

「素直で結構」


「ミシェル。炎魔法・ファイアーウェポンを使えるようにするわね」

「はいっ!必要かもしれないんですね!」

「そうね。切れ味とダメージを増す呪文だし、炎が必要なくても役に立つでしょう」


「リリジェン、左手を火炎放射器に改造するわね」

「あ、はいっ」

 レイズエル様は、リリジェンの左腕を取り、複雑な呪文を唱える。

「改造、終わり!燃料は肩に今仕込んだ魔石だから、後で実験して置いて」


「さて、次は物資支援よ」


「雷鳴、はい、ヴァンパイアモードの私の血が入ったボトル」

「マジで!いいの⁉」

「頑張ってるからね」

「やったぁ」


「フリューエルは『完全疲労回復』の薬三十回分。グミみたいだけど、中身は液体よ。噛んでから呑み込んでね」

「ありがとうございます。取れる戦術の幅が広がります」


「ヴェルミリオン、貴方にはこれ」

 炎を放つ大きな宝石

「ナックルにこれを、嵌めて。炎よって念じてみて」

「………!」

 ナックルから炎が出て、ヴェルの拳を包む

「これを、打ち出すこともできるわ。やってみて」

 ファイアーボールが出ました。

「………使い勝手のいいものだな、有難く貰っておく」

「貰っておいて頂戴」

 笑顔のレイズエル様。


「ミシェル、あなたの盾よ。スモールシールド。」

「あ、俺の装備………!」

「そのままだとあまりにも普通だから、「破壊困難」「攻撃反射」の付与をしておいたから。反射は全部反射されるわけじゃないけど」

「わぁ、十分です。ありがとうございます!」


「リリジェン、ヒーリングが使えるようになる指輪。MPはいらないやつよ」

「はい、ありがとうございます」


「と、今回はこんなところかな。質問ある?」

「はい」

 とわたしは手を挙げる

「どうぞ?」

「侵略者はどこまでが「駒」なんですか?」

「ああ、それね………。今まであなたたちが見たことがあるのは茶色の、大して強くない数だけの一般アリなのよ。まずこれは「駒」にあたるわ」

「まだあるんですか?」

「黒くて、ゾンビより強い「兵隊アリ」がいるわ。次に行くところによってはすぐ出会うわね。黒くて顎が発達してる連中よ。強いのとは別に、一般アリと同じくアザを悪化させる蟻酸みたいなのを吐いてくるわ。あと、飛べる」


 わたしはさぞ嫌そうな顔をしていた事でしょう。

「大丈夫よ、上半身はもう埋まってるから、下半身に受けない限り大丈夫」

 創造するだけで涙目になるんですが

「その………頑張ってね。雷鳴に痛覚鈍麻請求してやんなさい。麦はまだあるから」

「………ありがとうございます」


「えーと、他に質問のある人?」

「どうせ姉ちゃんに次行くところ聞いても無駄っしょ?」

「答えられないわね。てゆーか自分で啓示受けなさい」

「なら、俺は特にないや、皆もない?じゃあもう大丈夫だよ、姉ちゃん」

「OK。じゃあ頑張ってね!」

 そうしてレイズエル様は、来た時と同じように、光の瞬きとなって消えた。


 ~語り手・雷鳴~

「姉ちゃんのおかげで疲労はないけど、救援活動はどうする?「ウィングブル」も「ライノ」もない。一辺一番早い奴が自力で帰って持ってくるしかないかって………リリ姉が一番遅いだけで、あとはどっこいか」


「行った人が運転できないといけませんから、私か雷鳴の二択ですねそれは」

「帰ってくるまでに救援活動するなら、俺は『洗脳』のためにいないとダメだな」

「じゃあ、私が身体強化かけて強行軍ですね」

「付き合う。速度は同じようなもんのはずだろう」

「ありがとうございます、ヴェル!」

(お熱いなぁ)


「あー、ならミシェルは先方との連絡役任せたぞ。え?そういえばノーパソ持ってきてない?どうすんだ、それ」


「タブレットを貸しますよ、習慣で、バックパックに入れてたので」

「ありがとうございます!フリウ様!」

「じゃあミシェル、連絡役は任せた」

「はい「首都SOS」と、その他三つですね!やってみます」


「フリウはヴェルと飛び立ってくれ」

「はい、行ってきます」

「やれやれ、行くか」

 二人はラベーンに向けて、飛び立っていった。

 行く前に、慌てて全員に『教え・治癒・痛覚鈍麻』をかけた。


 ミシェルの通信は良好だ。「首都SOS」には、倒す現場を目撃されたらしく、ヒーロー扱いされてるとの事。

 他は何も知らない集団だそうだ。

 まあ、どこも手順は一緒だ。

 近い所から歩いて行き、『教え・感性・洗脳』で、異空間に送る。

 あとは転送先にお任せだ。


 問題は、全部終わってもフリウたちが帰ってこない事である。

 通信してみたら、この速度だと明日にならないと着かないとの事。

 悪いけどこっちは「首都SOS」跡で、休憩しておくことにした。

 今回一番頑張ったのがフリウなので、ちょっと申し訳がないが。


 ~語り手・フリューエル~

「久しぶりに思い切り自分の翼で―――体感ですが―――爽快ですね、ヴェル」

「まあそうだな、一面の緑だしな………ん?」

「どうしました」

「来るときに比べて、えらく俺たちの移動速度は遅くないか………?」

「そりゃあ、来るときは爆撃機で………おや?」

「「帰るのにどれぐらいかかる?」」

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