異変、到来

第4話 4人目と始まり(フリューエル)

 私は、恰幅のいいおじさんの突撃を抑え込むのに必死でした。

 どうしてこうなったのか、軽く頭の中を情景が巡ります。


 私、フリューエルは、軍の敷地の中にある軍病院に、乳癌で入院、という形で潜入しました。

 どうしてここなのかは、レイズエル殿の『天啓』にあった啓示だからだそうです。

 素直に受け入れた私は、天界で胸に『乳癌に見える物質』を仕込んで―――ウォッチャーの準備中の出来事です―――備えました。

 そしてめでたく入院。小さめの瘤だったので、切り取らずに入院して化学療法ということになりました。

 あと、計画通り追加料金を払って、1人部屋にしてもらいました。

 部屋は三〇三です。入院棟三階の三番室ですね。

 その後は、点滴をカラカラと引っ張りながら、病院内の地図を頭の中に叩き込みます。といっても、さすがに外来まで行くと怒られましたが。

 この病院はコの字型をしており、右棟の二階までが外来。三階は事務所です。正面は全て研究棟。私がいるのは左棟の三階、入院棟ですね。

 この星では私の『超能力』はうまく働きません。最も強い能力である『精神感応』も、触れていてさえ相手の表層思考しか読めませんでした。

 ソーシャルハッキングを試みるしかなさそうです。

 入院棟では、私はあまり胸がありませんし、長身瘦躯なので、パジャマもカッコいい系を選んでいます。ついでに言うと、私の顔は天界にいた時のまま。レベルを下げるのを忘れていたので、ガイアでは最高峰の美人になっているはず。そのせいか、職員の方々からは宝塚歌劇団スターの人のような扱いを受けました。会話が脱線もするものの、比較的スムーズで助かります………ということにしておきましょう。

 基本的に―――偽装でウォッチャーの流す、うすーい瘴気以外は―――何もなく、これといってテレビのニュースもなんの変哲もないものでした。

 ただ一つ気になったのは、外来の患者さんに、「ネズミにかまれた」といって発熱した患者さんが多数訪れるというのです。

 ネズミは病魔のサイン………今回の敵は悪魔ではないはずですが、引っ掛かりをおぼえました。職業病でしょうか。

 よく気を付けて周りを見ても、さすがに病院内でネズミの影は見かけません。

 その代わり、熱を出して出勤できない、という看護婦さんが増え、ネズミに嚙まれたが傷以外何ともない、と出勤してきている人が複数いるということを突き止めまし

 た。

 これは危険な兆候だ、と『超能力・超直感』が頭にに警報を鳴らしています。

 とりあえず、嚙まれた人は覚えておきます。この状況ではそれしかできません。


 それから三日後―――。

『超能力・危険感知』が頭の隅で瞬き、それによって私は目を覚ましました。

 周囲を見回してみますが、部屋の入口から圧迫感を感じます。

 見つめていると、いきなり扉がスーッと空きました。

 そこにはコック姿の大柄で恰幅のいいおじさんがいます。手に大きな中華包丁を持っており、それを振り回しています。

 肩が血まみれで、腕には明らかに何かの噛み傷―――いやな話ですが人間大―――があり、噛み傷の近くの肉はあきらかに嚙み千切られていました。

 私は即座にベッドから下りました。

『超能力・身体強化』で、身体能力をガイアの基準よりもかなり高く引き上げます。

 ずんずんと進んで来るおじさんに先制攻撃。

 手首に蹴りを入れて、掴む手が緩んだ拍子に、中華包丁を奪い取ります。

 そうするとおじさんは、私に突進してきました。

 これが冒頭の状態です。

 かわしても良かったのですが、私はあることを試みるために、おじさんの突進を受け止めます。受け止めて『超能力・精神感応』を使います。

 ………このおじさんには表層思考が存在しませんでした。

 それはすなわち死んでいるということ―――感覚器官が動作していれば、それを感じとって信号があるのですが、それもありません。

 認めたくなくて、無理やり頸動脈を探して触れましたが………脈はありません。

 と、このあたりでおじさんが「がぁぁぁぁぁ!」と叫んで私につかみかかり、嚙みつこうとしてきました。

 もし推測通り、死してなお動いているのなら、体のリミッターが壊れているのでしょう、私の体を掴んだ腕は凄まじい膂力です。

 私は思考を切り替え、万が一死んでいなくてもすぐわたしの『超能力・治癒』で処置をすれば死なない攻撃をすることにしました。

 素人の掴みかかりなど、軽く肩と腕の関節を外して抜け出します。

 そして中華包丁をおじさんの右腕の付け根に叩きつけました。人外の膂力で叩きつけられたそれは、腕を付け根から切り飛ばします。

 鮮血が、シャワーのようにわたしにかかります。ですがすぐに『超能力・治癒』によって血が止まりま………せん。

 当たってほしくないと思いつつ『超能力・物体修復(不得手ですので疲れます)』をかけたら組織が盛り上がって血が止まりました。

 こんなところで、確信したくありませんでした。呼吸とかも確認して少しでも生きてる器官があれば………って思っていたのですが………!

 わたしは、最後のあがきで、ガイアではほとんど見えない『たましい』を見ようとします。

 私のたましい視認能力はソルジャーいち。なんとか………ん?

 見えたのは魂ではなく、なんというか『魂封印具』に酷似したものが、おじさんの頭に浮かんでいます。もしかしてこれを開放すれば………?

 『超能力・精神感応』で封印具に問いかけてみようとしたら、弾かれました。

 直接触ってみるほかなさそうです。

 そのためには―――私に掴みかかろうとしている左腕も叩き切ります。また鮮血が飛びましたが、『超能力・物体修復(不得手)』で出血を押さえます。

『物体修復(不得手)』の反動で少しめまいがしますが、無視します。

 と、そこで、ぞわりと悪寒が。

 ―――これは、悪魔召喚の気配。かなり大きい―—―。

 気が逸れたことで、おじさんの突撃をもろにうけてしまいました。

 壁際まで吹っ飛びます。が、即座にはね起きて迎え撃ちます。

 おじさん、すいません。魂と対話させてください―――左足の付け根を断ち切ります。そして血止め。めまいがさらに大きくなりました。


 その時、私の部屋の扉ががらりと開いて、筋骨隆々、金髪のロング(うしろでくくってる)で、目つきの鋭い男性で、意外にも整った容貌です。

 これはおじさんの方を注視していても、職業病で視界内に入れました。

 そして、臭う瘴気。どう考えても近くで起きた悪魔召喚で出てきた悪魔でしょう。

 ここで、おじさんの魂を見ようとしてる状態のままなら、勝てない―――。

 焦った私でしたが、悪魔はなかったはずの扉のカギを閉めつつ、こう言いました。

「ほう」

 面白そうにこちらを見ています。

 そりゃあ、天使が中華包丁を持って血まみれで人間をぶつ切りにしてたらね………。今、私はオーラや魂を偽装していませんし!そんな暇ありませんし!

 呆れたのか、感心したのかわかりませんが、傍観の構えのようなので、わたしはおじさんに集中することにしました。

 私が足を切り飛ばしたので、さすがに片足では起きてきませんが―—―嘘です跳ね起きてきました、胴体がグラグラしています。

 私は仕方なく残る足を切断しました。流石に残る胴体はバタバタするだけです。

 私はその胴体にのしかかり―――至近距離から嚙みつきを受けそうになります。

 申し訳ないと思いつつ、中華包丁の背の部分を、強引に口に噛ませました。

 そしてようやく、封印具と思しきものに、触れます。


 ばぢゅぢゅぢゅいっ!

 ぐっ!すごい抵抗です。魂を削ってくる攻撃―――それでもこの中に魂があるのなら構うものか―――私は構わず指を進めました。

 ばじじじじじじいっ!ばじゅっ!

 残念でしたね―――私は魂ダメージには強いんですよ!

 そしてようやく、私は防壁をくぐりぬけ、魂に接触しました。

 おじさん:あなたは誰ですか

 フリューエル:私は天使。あなたの魂を開放して差し上げたいのですが、どうすればいいかわかりません。貴方はお分かりですか?

 おじさん:俺はすでに死んでいます(ああ、やっぱり―—―)なのに妙な力でここに押し込められています。解放手段は、脳を破壊することです―――。

 フリューエル:解放を望みますか?

 おじさん:はい、この殻は、俺にひどい苦しみを与えるだけなので―――。

 フリューエル:分かりました。必ず開放します。


 短いやりとり、けれど濃密な魂同士でのやり取り。そしてやっぱりこの人は死んでいるのだ―—―という悲しい確信。しかもいわゆるゾンビ状態にされて―—―。

 それらを心に飲み込んで、私は中華包丁をおじさんの口から取り、脳天に振り下ろしました。

 そのかわり、手足を『物体修復』し

「おお、我らが天の帝よ、死せるものに太陽の慈悲を」

 と唱えました。

 おじさんの魂が天にかえっていくのが見えました―――。


「おい」

 何となく不機嫌そうに―—―今の祈りで機嫌が悪くなったのでしょうか―――知ったことではありませんが、悪魔が私に話しかけてきます。

「お前、天使だろ。よくあれだけやれたな」

「必要でしたので。ちゃんと命は助かるようにしていましたよ。死んでると確定するまではね。あなたはあの魂が見えなかったのですか」

「見ようとしてみたが見えなかったな。あんまり得手じゃないんでね。どうだったんだ?魂の具合は」

「あの魂は死人の魂でしたよ。体をゾンビ状態にされてね―—―それで………あなたはなぜここに?」

「簡単に言うと思うか?」

「召喚されてきたのは分かってます。隣の部屋についさっきね。………あぁ、もしかしてこの星の異変を収めるように、召喚した魔女から言われませんでしたか」

「………生き残れ、そして星の異変を収めてみろ、とさ」

 そこまで知られているのならと、悪魔は話し始めました。

「そうですか、なら私と目標は一緒ですね」

 そういうと

「俺は一番きついところに行かせろと言ったんだ。そしたらここがその一つだと言われた。そうそう、中の天使と合流するようにと言われて、ここに押し込まれた。鍵をかけたのは魔女だぜ、俺じゃない。俺だけならもう戦闘に向かってたな」

「そうですか、私も激戦区は望むところ。できるだけたくさんの人を救いたい《じょうかしたい》ですからね。………なら、さっさと誓いの儀を済ませてしまいましょう。私が提示するのは『お互いに危害を加えない』『任務に協力し合う』『ゾンビ化してない人間を殺さない』『得た情報は共有する』『バディを組んで行動する』です」

 かなり天使に有利な条件。向こうはどんな条件を追加してくるでしょうか?

「―――そうだな、それなら、お前。仕事が終わったら俺と戦え」

「―――宇宙空間で、本気で、ですか?」

「そうだ」

「お受けしましょう」

 と、私は微笑とともに条件を受け入れました。勝つ自信は、あります。

「なら今からはバディですね。誓いを交わしたからには信用しますよ?まず名前を交換しましょうか」

「ヴェルミリオン」

「フリューエルです。ヴェルとお呼びしても?私もフリウで構いませんから。あなたもいちいち「エル(意味:光)」言うの嫌でしょう」

「構わんぞ」

「では隠してある装備品を出すので、使いたいものを選んでください」

「まず、このロッカーですね………。このバックパックはコンパクトですがサバイバル用品が収められています。最初から双方が一つずつ持って完成する量と物ですね………っ上はこのパターンを読んでますね………」

「どういうことだ?」

 と言われたので、相手の手を(避けられそうだったので素早く)掴んで『超能力・精神感応』で情報を流してあげます。

 私がセルート様に情報を渡された時と同じように………。

 ちょっと頭に手を当てて首を振りましたが、すぐに呑み込めたようで。

「チッ」

 と呟いて、それでおさめます。意外と頭がいい。

 雲の上からの依頼(というより命令です)なのを理解したのでしょう。

 それと、相手に触れた事で、表層だけですが私にも彼の思考が読めました。

 一言。

 戦闘マシーンです。今も部屋から出たくてウズウズしてます。大丈夫かなこの後。

 まぁ、仕方ありません。何とかコントロールしましょう。

 この部屋を開けようとしてる影も増えてきていますし………時間の問題ですから。

「それで、持ち物が二人分用意されてるわけです」

 あとは………マットレスをめくると

「バトルスーツですね。極薄タイプです。防刃性は高いですが対弾性は低めです。ですが貫通はまずしないので」

 と、体をぴったり覆うツナギタイプのバトルスーツを指し示す。臍のあたりからジッパーになっていて、きっちり閉めるとかなりの密封性があります。

 ヴェルの分はサイズからして、銀に赤い線が描かれている方。私の分は銀に青で線が描かれてる分でしょう。

「どうぞ。ああ、靴まで一体になってるので、合わなければ言ってくださいね」

 ―――どうせぴったりだろうけど。

「あんま、靴は履かないんだが、これはいいな。ぴったりだ」

 ほらね。

 私も、バトルスーツを着ます。息苦しいので胸元まで開けて。

 それと、ヴェルのは普通のブーツですが、私のブーツは踵が刃になっていて、蹴りの時に絶大な威力を発揮します。

 脳天なんて簡単に割れますよ。

 さて、最後は武器です。

 バトルスーツとベットの内部に一緒に収められていました。

 私の武器は、奇しくもさっきの中華包丁と似ています。普通の剣の柄に刃渡り六十の四角い刃がついています。

 重量級ですが、強化中の私にはちょうどいいサイズなのです。

 ヴェルのは、カイザーナックルでした。要は格闘戦が得意なんでしょうね。

 私も足なら使いますが。

「さて、武装完了ですね」

 いきますよ、とヴェルに声をかけると、拳を打ち鳴らして了解、と告げてきた。


 部屋のドアを開けると、ゾンビ化した人たち―—―頭の上に封印具が見える人―――がぎっしり。看護婦さんと入院患者さん、見える範囲には医師も。

 中には舌が引きちぎれて下あごが無くなっている人や、胸の中身がなくなっているなど、噛まれるのと同時に受けた傷らしきものがほとんどのゾンビに見受けられます。酷さに顔が引きつります。

 ゾンビになってから受けた傷なら救いもありますが『超能力・オーラ視覚』で残るオーラを見る限り、苦しみのうちに亡くなっているようです………。

 侵略者とやらに殺意がわきます。

「ヴェル!視界内に『人間』なし!見えたら言います!」

 怒りを転嫁するように、そう言いながら最前列の二体を一刀で脳破壊。

 それを乗り越えてくる一体をヴェルも額を粉砕。

 大きい通路に出るまで、どちらかが切り開いた次をもう一人が切り開きさらに………、という形で前に進んでいきました。計十三体。

 もう生存者が残っていないのか、ナースステーションのあるフロアまで来ても、十数体のゾンビが襲ってきただけ。惨劇の痕跡はくっきりとあります。

「お前、ためらったりしないのか?」

 不意にヴェルからそう聞かれて、私は答えます。

「その時間でゾンビになっていない人を助けられるかもしれないでしょう」

 微笑んで、告げます。

「私がゾンビではない人を教えますから、それまで貴方は迷わなくていいんですよ」

「俺は俺なりに判別してるさ、やつら、どこかしら欠損があるじゃないか」

「それはそうですが………それだけだと誤射しますよこれ」

 双方、ゾンビを迎え撃ちながらの話です。

 一撃、でなくても二撃でゾンビを打ち取ってゆきます。

 打ち取った証は、私のみに見える「喜色に包まれて天に昇る魂」です。

 ヴェルは「手ごたえ」で判別しているようですね。かなりの手練れのようですし、彼の直感などは信が置けそうです。

 ただ、人間を殺しても手ごたえは感じるでしょうから、その辺は警戒しなくてはいけません。彼が「嗅ぎ分けられる」なら最高なのですが。

 そんなことを言いながら、三階を浄化。二階に降りてきました。

 ここでもゾンビ・ゾンビ・ゾンビ………生存者は見当たりません。

 ただ、私たちの方も息切れはまだです。私は『超能力・身体強化』の維持のため多少の精神力を削られていますが、まだまだ大丈夫です。

 二階を見回ってのち、いよいよ一階に。

 そこは阿鼻叫喚の坩堝でした。

 私たちが階段を降りると、ゾンビ九・人間一の割合で修羅場と化していました。

入口と、病院内から挟み撃ちでゾンビが向かってきているのです。

 もちろん私たちの方にもゾンビが来ます。でもそれをいちいち倒していたら、人間が助けられないじゃないですか。

「ヴェル、行きますよ!」

「応!」

 私は宙に舞い、悲鳴を上げている年かさの女性の傍に降り立ちました。

寄ってくるゾンビは、私がすべて「浄化」します。

 彼女は悲鳴を上げているばかりです………いえ、彼女はわき腹をひどく欠損しており、手の甲には噛み傷らしき傷が。

 彼女の頭上を見てみると、うっすらと封印具の存在がうかがえます。

 つまり「なりかけ」。

 反射的に、わき腹と嚙み傷に『超能力・治癒』をかけますが………脇腹は治りましたが、噛み傷が治りません。

「フリウ!その力は何だ!」とヴェル

「超能力です!」と簡潔に教えます。それどころではないのです。

 呪われているかのようです。いえ、おそらく近いものがあるのでしょう。

 彼女は

「キャアアアアアアアアアア…ア…ア…アハッアハハハハ………ウェェェエェ」

 という感じで言語がおかしくなっています。

 わたしは『超能力・パイロキネシス』で、炎で彼女の噛み傷を焼いてみます。

「エエエエエエエェェエ………アゲラッ」

 一向に改善は見られない………どころか彼女の封印具の形は完全な形になってしまいました。促進したのでなければいいのですが………。

 どちらにせよ人間のままでは私に殺してあげることはできません。

 人間殺しは天使の大罪。堕天使になってしまうのです。だからしっかり確認します。

 今一度封印具と彼女の呼吸、脈を確認した私は、彼女がゾンビになったと確信しました。封印具に、苦痛とともに差し入れた指からは「出して!助けて!」という彼女の思念も伝わってきます。

 私は剣の一振りで、彼女の頭部を半ばまでカットします。出来るだけ奇麗に。それが今の私にできる唯一の事ですから………。

 祈りの時間すら惜しむ今の私を、どうか許してくださいね………。


 気を取り直してヴェルの方を見ると、一人で入口から侵入してくるゾンビと、内側から押し寄せてくるゾンビをさばいていました。感謝です。

「ありがとう!生存者に来るのは私が!あと生存者は私が調べていきます!」

 そう声をかけると

「手早く済ませよ!そう長くはもたねーぞ!」

 と返ってきたので

「了解!」

 と告げて、他の生存者の所にも向かったのですが………悲しい結末だった、とだけ。

 さっき嚙まれたばかり、という少女がいて、私の『超能力・治癒』も効き、回復の兆しも見せたのですが、結果はゾンビ化でした。

 やはり噛むという行為、その結果としてのゾンビ化は、呪いの様なものなのでしょうか。ならばガイアで取れる対処策はただ一つ。

 噛まれない事、それだけに尽きるでしょう。何をいまさら、でしょうが………私は噛まれた人も助けたかったのです。これでも天使ですから………。

 気を取り直しましょう。

 私はヴェルに背中合わせで立ち、院内側を担当する意思を伝えます。

「生存者なし!救済(浄化)しましょう!」

 と叫びました。

 ヴェルから「応」と返ってくることを確信して。

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