第2話 2人目(フリューエル)
ここは天界、天帝陛下の座す所。
私はフリューエルという名です。
女性で、光属性が高く、ソルジャーで第三部隊長の任にあります。
あ―――ええと。
流石にもう少し詳しく話さないとないと自己紹介にならないですね。
こほん。
名前と性別はお伝えしましたね。
私の容姿ですが、銀髪のショートヘアーに銀色の瞳、170cmぐらいの身長で、瘦せ型です。背中には、3対の白い翼(消しておくことも可能ですが制限空間の種類によっては、スターマインドに強制的に消されてしまうことも。天界にいる間は無用の心配ですが)があります。
性別は、変えることもできるのですが、普段は女性です。
タイトな白いズボンに、細身の白いシャツ他、リボンタイや腰の飾りなど細かいものはすべて淡い青。天界では普通のカラーチョイスです。
次に属性です。
天界にも魔界にも『基本属性』と呼ばれるものがあり、地水火風光闇があります。
どの属性も強弱の違いはあれ、みんな全ての属性を持っているんですよ。
天界では闇属性が高い人は珍しいですがね。
後は、希少属性を持っている方がちらほらと。
そうですねぇ、聖・雷・影・陽………等々他にもいろいろです。
私は光属性が一番高いため―――突出して高いです―――光天と定義されます。特殊属性は『氷』です。光属性の次に高いのがこれです。
意外と光が飛びぬけて高い人は少なく、そういう人はザフィケル様が統括するソロネ(座天使)という部署に行くことが多いです。科学系の部署ですね。
他にも地(ドミニオン―――辺境で悪魔と戦う部署です)をウリエル様が、水(ケルビム―—―魔法系の部署です)をジブリール様が、火(セラフィム―――天帝陛下のおわす天宮層の警護を主とする部署です。天宮に詰めている者は騎士と呼ばれます)をミカエル様が、風(ヴァーチャー―――天界での伝達事項のすべてを取り仕切る部署です)ラファエル様が、と部署があり、4大天使様がそれぞれ統括なさっています。
闇系の部署はありません。適合する人員が少なすぎるので。
ああ、でも、煉獄には闇が高めの人が多いかもですね、闇に耐性がないとやってられませんし。
煉獄は、罪人(堕天使や悪魔)の罪を浄化し、更生させる場所です。
そのため、穢れと日々向き合っていかなければならない部署なのです。
これらをまとめて、天界内部で働く部署と人員―――内勤と呼びます。
私でしょうか?私は外勤です。
内勤の中からや、職についてなかった者が、今天帝の行われた選抜試験に受かって外―――ほかの惑星―――でこの世をもっと良くするために戦う人員になったのです。
因みにこれまでは、各内勤の者たちでそれぞれチームをつくり外を回っていました。今よりかなり小規模だったのです。
では、おおざっぱですが外勤についてご説明しましょう。
まず、『ウォッチャー』悪を探し(悪魔だけとは限りません。穢れ切った人間なども)探査し監視します。魂を見る能力や、瘴気を感知する能力を極めています。
悪魔からは「ストーカー」と呼ばれたりしていますが、気にしてはいけません。
次に『ソルジャー』。ウォッチャー(その他人間やまれに悪魔からも)から情報を受け取り、戦闘に臨む部署。難易度が高い事件になると、事件の渦中でウォッチャーの働き―――潜入調査―――もすることがあります。誰でもできることではないですが、私はよくこの任務につきます(単に適性の問題だと私は思います)。
次に清らかな魂を保護するガーディアン。他の部署とも連携が多いです。
そして、外の世界で酷使され疲れた天使たちの難所―――癒し処に非ず―――セントクレスト。ここは内部監査と呼ばれる部署で、外勤で穢れを―――内も外も―――つけて帰ってきた天使たちの浄化と、任務の報告受付を受け持つ部署です。
外面の穢れの場合、巨大な聖水の泉に放り込まれます。
私はソルジャーの部隊長の一人(全部で七部隊なので七人)で最上級天使と呼ばれる位階なので、難易度の高い任務に携わることが多く………必然的に外で外面についてくる穢れはかなりの、本当にかなりのもの。
………聖水が痛い事痛い事。最初は気絶しかけたことも。
あと内面に穢れを持っていないか―――つまりは堕落していないか―――の調査では任務のすべて(事件のあらましだけでなく、自分がどう感じたか)を、覆面をした調査官に語らねばなりません(ある程度は自分の記憶を伝達する『記憶球』やまとめて整理した情報を送る『情報球』で補いますが)で、困難な任務では時々話すのがとても辛いこと、恥ずかしい事もあったりするわけで。私は困難な任務についていることが多いですから………ええと、まぁ、そんな感じです。
これで私たちの事は、大まかに話したでしょうか。
また説明が要る場合説明しますね。
私は今、職場―――ソルジャーの拠点―――に向かって飛んでいます。
その途中で『愛の泉』という、広くひろがる浅い泉に、半裸の天使たちが(天使の休日は半裸で過ごす人も多いですね。あ、私は違いますよ!)集い、ところどころにある小島では、豊富に生ったブドウやリンゴなどを食べ、無料で手に入る葡萄酒などを飲んでいる場所があります。
イチャイチャしてる天使も多いですね。熱くなると雲に潜って姿を隠し、その先に進む人も普通にいます。潜らないまま際どいことをしている人も………潜ってくださいよ!と思います。
ここは陛下のおわす天宮層(天界はいくつもの階層で構成されています)の、中心部なのでどうしても通る道なのですが、苦手なのですよ!
何せ彼らは最上級天使の私に対して口々に挨拶や賛美の言葉を語ってくれるので、ある程度は返答や返礼を返さないといけないのです………が。
………私は超能力者です。
えーと、いきなり何をと、お思いかも知れませんがお聞きください。
私の超能力はいろいろな種類があるのですが、最も強い能力はテレパシー系の能力の一つ『精神感応』です。普通は触れた人の表層思考が読めるぐらいのものなのですが、わたしの『精神感応』は視界に入っただけで相手の表層思考にとどまらず、深層心理も読めるシロモノです。
それが、完全には制御できないのが問題なのです。
つまり、私には挨拶をくれる人や語りかけてくる人の深層心理が自動的に視える(もしくは聴こえる)のです。
『愛の泉』にはいろいろな愛のスコールが満ち溢れていて………それが私の神経を圧迫します。悪気がなくても性的なことを考えている人もいますしね。
愛が苦しい、のです。
笑顔で手を振って、挨拶を返し、できるだけ速い速度で職場に向かいます。
ああ、息苦しい(ため息)
ちなみに私はこれを回避するため、住まいを地天層―――地面が雲でなく土です―――の超辺境にしています。とても気が休まります。
「おはようございます」
ソルジャーの詰め所に入ります。人界のオフィスとあまり変わりません。
入ったところは事務室ですからね、当然かもしれません。
机が大理石、備品が金なところを除けばですが。
豪華?それが、私たちにとっては、そのあたりに転がっている物だったりするんですよ。天界は真に黄金郷ですから。
「おはよう、フリューエル」
「あ、セルート様、おはようございます」
ソルジャーの天使長であるセルート様が、山になった書類から顔を突き出すようにしてこちらを見ています。
セルート様をはじめ、ソルジャーの面々は全て『アンチ・サイの指輪』をつけてもらっているので―――ほかの超能力者にはバリアを張ってもらってます―――、触れさえしなければ心の声は聞こえません。触れさえしなければ。
とても落ち着く職場なのであります。
セルート様が
「出勤したばかりで申し訳ないんだけど、こっちに来てくれるかな?」
と仰ったので、私はセルート様のデスクに行きました。
「御用ですか?」
「うん、さっそくで悪いんだけど、次の任務がね、天帝陛下直々でね」
そう言って、私に手を差し出すセルート様。読め、ということでしょう。
「っ!」
読んだ任務内容は思った以上に重大なものでした。
魔界の、雷鳴という名の少年(見た目だけのようですが)が、レイズエル殿―――彼女は天界にも影響力があるのです―――から任務を受けており、その任務を私も天帝陛下経由で受ける、と。
私の場合はガイアの軍病院に、悪魔が出たかもという名目でウォッチャーならびにほかの外勤に通達し、患者として潜入。
事件が始まったら、定時通信が遮断されるので分かるから、自由に行動開始、という事のようです。
え、雷鳴くんとは別の悪魔と共同戦線を張れ?
いえ、このなんかこの言い方だと、手綱を取れってことのようです………。
まぁ、悪魔との交渉は慣れています。大丈夫でしょう。
装備などはウォッチャーが、病室に隠しておいてくれる、とのこと。
分かりました。
「潜入の準備が整い次第、行ってまいります!」
私はそう言って、セルート様に敬礼するのでした。
潜入の準備は大したことはありません。
まず惑星「ガイア」について。「地球」という星とパラレルワールドではないかと思うほどよく似ていますね。地理や言語もほぼ同じ。
むしろガイア語を話しているつもりで、地球語を話してしまいそうなほどです。
ところどころに致命的な間違いがありますからね………。
え、どうやって言葉を覚えるのかですか?
簡単ですよ。そこの言語を知っている人に『言語球』という魔法を使ってもらって、脳に直接叩き込みます。
乱暴?そうですね、頭はキーンとして頭痛の極みですよ。でも、これぐらいしないとソルジャーの仕事は務まりません。
ちなみに言語を知っている人がいなかった場合、『情報球』で、天界のライブラリにある情報をすべて頭に詰め込みます。こっちの方が数段乱暴ですね。情報量にやられ頭は………激痛なんて言葉じゃ済みません、失神するものがほとんどです。
さて………次は服装です。ガイアの軍病院に入院患者とのことですので、パジャマをガイアの適当な通信販売で選び、魔法『ドレスメイキング』でコピーします。
あと、適当に動きやすい服装ですね。下着も必要です。
その軍病院にはコインランドリーもあるので、洗濯の心配は無用で助かります。
あとは戦闘時の装備ですが、軽装のものをウォッチャーに託して、病室に隠しておいてもらいます。
それと車………カタログを見てソロネに発注、3時間ほどで現地の駐車場(ウォッチャーが届けました)に届きました。キーは私のところへ。シルバーのセダンです。
盗難の心配はほとんどないでしょう。赴任地―――ヤポンは大変治安のいい国だそうなので。
あとは『存在する』証明書。―――身分証をウォッチャーに頼みます。
………ウォッチャーには感謝ですね。これだから天界のブラック企業………もとい部署なんて言われてしまうのでしょうが、非常にありがたい存在なのは確かです。
戸籍から住民票、保険証からナンバープレートまで、数時間で揃ってしまいました。
どうやったのか?当然偽造ですよ。魔法と科学を駆使した精度の超高い偽造です。
天使は犯罪はダメなんじゃないかって?
天界法は守りますよ(それでも抜け穴を使うアウトな人はいますが、大抵捕まって煉獄送りです)でも、人界法は私たちには適用されません。守っていたら守るべき人間たちも助けられない事ってありますからね。今回の偽造も人助けのため。少なくとも、私は、必ずそのために使う気でいます。見逃してくれなんて言いません、でも私は目的のためならためらわず使います。
全員が全員割り切ってるとは思いませんが、高位の者は割り切っているでしょう。
………さて、これで潜入の準備は完了です。細々したことも待ち時間の間に片づけました。
後は、出動前に、部下たちのメンタルケアですね。私の
あれこれ診察して………………………終了。
セルート様の所に向かいます。
「失礼します。セルート様、準備完了です」
「相変わらず早いね」
と、穏やかな微笑みを浮かべたセルート様が仰った。
「ウォッチャーの皆さんと、ソロネの皆さんの協力のおかげです」
「それでも手早いことには違いないよ。書類のほうを見せて貰えるかい?」
「うん、問題なし。今すぐ出立してOKだね」
「ありがとうございます。では、出立致します!」
私はセルート様に敬礼をし、ソルジャーの同僚に微笑みかける。
そして、旅行鞄一つで、軍の敷地で誰も見ていないところ―――だからといって怪しくない所に、密やかに降臨した。
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ここで説明は終わり。
次からが面白くなるので是非!
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