六感バトルで見破られる恥ずかしい慰め
イノナかノかワズ
六感バトルで見破られる恥ずかしい慰め
「さぁさぁ、始まりました、六感バトル!」
その小さな一室に響き渡るはテンションの高い女性の声。
部員三人しかいない、第六感部の部長、
そして彼女の前にいるのは男子高校生と女子高校生一人ずつ。
「今日こそ勝ちます、先輩。俺の名誉に賭けて!」
「フッ」
ビシッと指を突き付けたのは
対して余裕そうなのが、ミステリアスで厨二的美少女。
「さて今日で十六連敗。今日こそ勝たないと、輝くんはもう伊美瑠ちゃんの顔を見れなくなりそうですが、意気込みはっ?」
「もちろん、もちろん勝ちます。勝たなければ俺が死ぬ!」
「私的にはそれはそれでプライスレス!」
すこし恍惚とした表情で叫びだした明にげんなりした輝だが、今日こそ勝つために懐から耳栓を取り出して耳に入れる。目を瞑り、深い呼吸をしながら集中力を高めていく。
ゾーンに入り、彼は孤独の世界にいる。
それを尻目に明はニヤニヤと伊美瑠を見た。
「では今日で十六連勝。負けなし伊美瑠ちゃんはそろそろ告白してしまえばっ?」
「……フッ」
伊美瑠はボンッと顔を真っ赤にする。それでもキメポーズはやめない。今日で十六回目。十六回も告白しようとして、失敗している。
好きなのだ。輝のことが。
もう意気地なしだな、と呆れながらも明は楽しそうにおでこに手を当てた。
すると、外界と情報を絶って集中していた輝がカッと目を見開き、耳栓を取った。彼は伊美瑠だけを見る。今日こそ勝つために、男の砦を守るために伊美瑠を真剣に見つめる。
右手で顔を覆っている伊美瑠は少しだけその熱烈な視線に頬を染めながらも、自らも輝を穴が開くほど見る。今日こそ、告白するために今日も勝つ。
そして、静寂が部室を包んだ。
「さぁ、両者、準備はいいですか!」
その明の掛け声に、二人は深く息を吐いて答えた。
「では、はじめ!」
その号令と同時に、輝と伊美瑠が叫ぶ。
「六回!」
「二十時十分!」
そして二人がクッと崩れ落ちる。
「おおっと! 伊美瑠ちゃんったらお水をどれだけあふれさせたのかっ!?」
明は懐から油性ペンとアワビが描かれたイラストを取り出し、六回と書く。
「そして輝くん。中途半端な時間にしましたねぇっ!?」
明は懐からバナナを取り出し、二十時十分と書く。
「ま、まだまだ……」
「フッ……」
崩れ落ちた二人は立ち上がる。
なんのこれしき。まだだまだこれは序の口。こんなので羞恥に死んではダメだ。
「では、第二回目、はじめ!」
そんな二人の表示を見て恍惚と表情を歪めた明の号令に、二人は険しい表情をしながらも叫ぶ。
「さくらんぼで三回! お豆で一回。中で二回!」
「小学生と教育実習生で一回。幼馴染と一回!」
そしてそんなことを叫んだ二人は。
「カハッ」
「……クッ」
再び崩れ落ちた。
輝は、俺は俺は夢を見たいだけなんだ! とブツブツと
伊美瑠は、小さいころに着けてなかったら擦れで擦れで! だから、だから生まれつきでも開発したわけでも! と叫ぶ。
明はほうほうと頷きながら、ちょっと女子がしてはいけない顔になる。二人の羞恥心でもう達しそうだ。
それでもグッと堪え、口を開く。
「では、最後の三回目だよ」
青白い表情になりながらも、ゆらゆらと立ち上がる二人は、キッと覚悟を決める。
その覚悟を確認した明は、三度叫ぶ!
「はじめ!」
それに輝と伊美瑠が応える。
「濡れている!」
と、思ったら輝だけが叫ぶ。
伊美瑠は黙っている。
「……ッ」
輝があれ、おかしいな、と思いながらも、もしかしてもしかして勝ったのでは! と期待を寄せた瞬間。
「輝くん、ずっと好きでした!」
「えっ」
顔を真っ赤にしながら伊美瑠は告白した。
「いつものおかずも知ってる。長さとか固さとか知ってる。どこが弱いとかも知ってるし、かわいいところも知ってる。色々と見た!」
突然の告白に驚愕していた輝は、だが崩れ落ちる。恥ずかしすぎて死にそうだ。
「けど、輝くんも私を見た。どうだった、興奮した!?」
「…………………………した」
「性格が好き。見た目が好き。匂いが好き。臭いも好き!」
「…………………………はい」
「そして、私は十年後の未来を見た。知ってる!」
「…………………………俺も」
畳みかける伊美瑠の攻撃。輝は顔が真っ赤になって悶えるが、ゆっくりとゆっくりと立ち上がる。
伊美瑠を見た。
「私は輝くんが好き!」
「……すぅっ…………俺も伊美瑠が好きだ!」
明はそれを聞いて達し、女の子がしてはいけない酷い顔をして崩れ落ちた。
そうして、相手の慰めを視る第六感を使ったバトル、もとい告白合戦が終わった。
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