第110話「冠番組」
ある日、僕は部屋でパソコンの画面を眺めていた。
昨日ジェシカさんからメールが来ていた。いつも通り文章からもテンションが高いのが伝わってきて、『この前シュンに日本語を教えてもらったよ! とっても嬉しい!』と書いてあった。ジェシカさんは日本に来てからますます日本のことが好きになったらしく、アニメを観ながら日本語を勉強しているらしい。また日本に行ってみんなに会いたいとも書いてあった。うん、僕もみんなも嬉しい。
そんなメールを見ながらジェシカさんにお返事を書いていると、スマホが鳴った。RINEが送られてきたみたいだ。送ってきたのは東城さんだった。
『団吉さんこんばんは! 今いいですか?』
そういえば東城さんとRINEをするのは久しぶりだなと思って、僕は返事を送る。
『こんばんは、うん、大丈夫だよ』
『ありがとうございます! 三年生は共通テストが終わりましたね、どうでしたか?』
『ああ、けっこういい点数で安心したところだよ。まだ油断しちゃいけないけどね』
『さすが団吉さんですね! カッコいいです!』
可愛い東城さんにカッコいいと言われると、恥ずかしいけどちょっと嬉しくもなる。僕も単純な奴なんだな。
『ありがとう、そんなにカッコよくはないけどね……あ、何か用事があった?』
『ああ、そうです! 実は今日の夜十一時から、私たちメロディスターズの初めての冠番組が始まるんです! なので、ぜひ団吉さんにも観てもらいたいなと思って!』
おお、冠番組か、ということは番組名にメロディスターズの名前がついているということか。すごいことだなと思った。
『おお、すごいね、冠番組があるなんて、かなり人気があるんだね』
『ありがとうございます! まぁ、こっちの地域だけの放送なのでまだまだですが、なんか嬉しくなって!』
『いやいや、それでもすごいよ、メンバーみんな出るんだよね?』
『はい! 番組名は『メロディスターズのちょっとグルメっちゃおうよ!』といいます。なんかストレート過ぎる名前ですが、あきりんとゆきみんが推しまくってこうなっちゃいました』
その話を聞いて、僕はふふっと笑ってしまった。メンバーみんな仲が良いのがよく分かる。
『そっか、日向にも話して一緒に観ることにするよ』
『ありがとうございます! 楽しんでもらえると嬉しいです!』
僕はスマホを持ってリビングへと行った。夜の十一時からと言っていたな、あと十五分くらいだ。リビングでは日向と母さんがテレビを観ていた。
「あ、お兄ちゃん、お茶飲む?」
「ああ、ありがとう、日向、東城さんから連絡あって、この後十一時からメロディスターズの番組が始まるらしいよ」
「ええーすごい! 東城さんが有名人になっちゃうー! 絶対観ないと! ああ録画もしておこうかな!」
「あはは、うん、東城さんも喜ぶんじゃないかな」
「あらあら、前にうちに来た子ね、そういえばアイドル活動してるって言ってたわね、すごいわねぇ」
「うん、こっちの地域でしか放送しないらしいんだけど、すごいよね。自分の番組を持つなんて」
そうだ、みんなにも教えておこうと思って、僕は火野たちのグループRINEでもうすぐ東城さんがテレビに出ることを伝えた。
日向が入れてくれたお茶を飲みながらしばらく話していると、番組が始まった。ポップなロゴで番組名が出てきて、五人が映った。リーダーのゆかりんが元気よく話している。あ、東城さんも映った。やはりみんな可愛いなと思った。
「東城さんは緑の子かしら?」
「ああ、そうそう、衣装がなんか可愛いな。この五人がうちにも来たことがあるなんて、ちょっと信じられない……」
「あ、このお店ショッピングモールの近くなんだねー、そうだ、東城さんにRINE送ってみよーっと」
日向が東城さんにRINEを送っているようだ。その時僕のスマホも鳴った。RINEが送られてきたみたいだ。
『おーっす、東城さんテレビに出てるなぁ、すげぇなぁ』
『やっほー、ほんとだねー、今までも有名人だけど、さらに有名人になったような感じがするよー』
『東城もみんなも、可愛いな……負けた……』
『い、いや、絵菜、そんなことないよ、絵菜も可愛いよ』
そう送って、しまった、火野も高梨さんも見てるんだったと思ってしまった。ま、まぁいいか。
番組はタイトルにもあるように、メロディスターズのみんなが街を訪れて美味しいものを探すというような内容だった。しおみんが駄菓子に夢中になったり、あきりんがおでんを食べて「あっつ! あっつ!」と慌てていたり、みんな楽しそうだ。
東城さんも元気よくたくさん話していた。たしか東城さんが一番年下だが、みんなからも愛されているのが分かって、東城さんも楽しくアイドル活動をやっているんだなと思った。
「日向、東城さんから何かRINE来た?」
「うん、『観てくれてるんだね!? ありがとう!』って言ってたよ。ゆきみんは実は辛いものが苦手なんだって」
「なるほど、だからさっき『からーい!』を連発していたのか……」
「ふふふ、可愛い子たちねー、アイドルというのも大変そうね。こうしてテレビに出て、ライブもやるんだよね。テレビ番組が始まったことで、また人気が出そうね」
「そうだね、なんか同じ学校に通っているというのが不思議な感覚になってきたよ」
そんなことを話していると、番組が終わった。次回は川沿いを散策するらしい。あのあたりにもお店があるのか、知らないことも多いなと思った。
「あー面白いね、みんな話すのも上手だし、可愛いし、歌も上手いし、なんかまたライブに行きたくなったよー!」
「そうだな、前にも言ったけど、今度は自分たちでチケットを買って行ってみようか」
グループRINEにもみんなが番組の感想を送ってきた。僕はそれをスクショして、東城さんに送ることにした。たくさんの人から感想をもらえた方が嬉しいだろう。
それにしても、メロディスターズがどんどん有名になって、僕も嬉しかった。東城さんのお母さんも天国で見守ってくれているだろう。あ、天野くんはちょっとドキドキなのかな……また今度話してみたいなと思った。
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