第93話「みるく」
みるくがうちに来た次の日、僕はバイトが休みで、日向も部活が休みだったので、一緒にまたホームセンターへ行った。
みるくが寝るベッドや、トイレ、爪とぎなどを買うためだ。特にトイレは昨日はしなかったが、早く用意してあげた方がいいのではないかと思った。
母さんが「お金を持って行って」と言っていたが、僕は「ううん、僕が買うよ」と言って断った。日向はまだお小遣いをもらっているのでさすがに出せないが、僕はバイトをしているので少しは出せる。こうして誰かのためにお金を使うということが嬉しかった。
「トイレは早く用意してあげないと、みるくがかわいそうだね。我慢してるかも」
「そうだな、昨日はしなかったし、猫はトイレできちんと用を足すらしいからな。この白いやつにするか」
「うん! あとはシートと砂がいるのかな?」
「うん、このトイレのトレーのところにシートを設置して、中に砂を入れてあげるといいみたい。ちょっと荷物が多くなりそうだな、日向大丈夫か?」
「うん! みるくのためだからね、これくらい大丈夫だよー!」
色々買って、荷物が多くなったが、なんとか二人で持って帰った。
「おかえりー、みるく少しずつ元気になってきたわ。猫じゃらしでも遊んでくれたわよ」
「あーっ! お母さんずるい! 私も一緒に遊ぶー!」
「おいおい、その前にトイレだろ。どこに置こうか……リビングがいいのかな」
「そうね、リビングの隅に置いておいたらいいんじゃないかしら」
トイレを置いて、シートと砂を入れて、みるくをトイレに連れてきた。みるくはふんふんとにおいを嗅いでいた……と思ったら、そのまま用を足し始めた。
「あっ、おしっこしてる! よかったー。でも猫ってすごいね、トイレが分かるんだね」
「うん、すごいなぁ、ネットで調べたことは本当だった……」
「そうね、今のところ何かを噛んだり引っ掻いたりはしてないけど、私たちも気をつけておかないといけないわね」
トイレから出てきたみるくが「みー」と鳴いた。日向が「か、可愛いー!」と言ってみるくを抱いた。すっかりメロメロである。でもたしかに可愛い。動物っていいなと思った。
その時、インターホンが鳴った。そうだ、絵菜と真菜ちゃんがうちに来ることになっていたのだ。昨日みるくの話を絵菜にしたら、「明日真菜と見に行ってもいいか?」と言っていた。僕が出ると、絵菜と真菜ちゃんが来ていた。
「こ、こんにちは」
「お兄様、こんにちは! すみません急に来てしまって」
「こんにちは、いえいえ、二人とも上がって」
二人をリビングに連れて行くと、日向が猫じゃらしでみるくと遊んでいた。
「あら、絵菜ちゃん、真菜ちゃん、いらっしゃい」
「あ、絵菜さん、真菜ちゃん、こんにちは! なんとうちに家族が増えました!」
日向がみるくを抱いて二人のところへ行った。
「わっ、か、可愛い……! 白いんだな……!」
「わぁ、可愛いー! まだこんなに小さいんだね! でもどうして急に家族が増えたの?」
「実は昨日、玄関の横でうずくまっているのを私が見つけてねー、大慌てで病院に連れて行って、病気がないって分かってホッとしたんだけど、このまま外に出すのはかわいそうで……それでうちの子になったよ!」
「そっかー、日向ちゃんに拾ってもらえてよかったねー子猫ちゃん……って、名前はあるの?」
「うん、みるくっていうよ! お母さんがつけたんだー。女の子だよ!」
「み、みるくちゃん……可愛い……」
絵菜がみるくを見てぽつりとつぶやいた。
「絵菜さん、抱いてみますか?」
日向がそう言って絵菜にみるくを渡した。絵菜はちょっとビビりながらもそっとみるくを抱いた。
「あああ、ふわふわしてる……は、初めて猫ちゃん抱いた……か、か、可愛い……!」
「あはは、絵菜も初めてだったんだね、僕も猫を抱いたことがなかったけど、こんなに可愛いなんて知らなかったよ」
「う、うん、みるくちゃん……すごい、初めての人でも大丈夫なんだな……」
「うん、僕たちにも全然警戒とかしなかったよ。むしろくっついてくるくらいで。人懐っこいのかなぁ。ネットで調べたけど、猫の性格も色々あるみたいだね」
「そっか……あ、真菜抱いてみる?」
「あ、うん……わぁ! ほんとだ、ふわふわしてる……! 私も初めて猫を抱いたけど、こんな感じなんだねー」
絵菜も真菜ちゃんもすっかりみるくにメロメロである。
「ふふふ、みんなみるくにメロメロね。おやつ食べないかしら、ワッフルがあるわよ。団吉はこのマグカップでいいんだよね?」
「あ、うん、ありがとう」
「あ、団吉、マグカップありがと。家で早速使ってみた」
「ああ、いえいえ、写真送ってきてたね、使ってもらえてよかったよ」
「あらあら、ふふふ、絵菜ちゃんにもマグカップをプレゼントしたのね。仲が良くていいわねーって言うとおばさんっぽいかしら、いやねー」
「え、あ、いやまぁ、プレゼントにもちょうどよかったからね、使ってもらえるものがいいなと思って」
「ふふふ、お姉ちゃん、マグカップをずっと離さないんです。洗うよって言っても自分で洗うって言って」
「なっ!? ま、真菜、それは言っちゃダメなやつ……わわっ!」
その時、みるくが絵菜の膝に乗って手に持っていたワッフルをふんふんと嗅いでいた。
「あっ、みるくダメだよー、これは絵菜さんのものであって、みるくが食べるものじゃないよー」
「あ、な、なるほど、やっぱり人間が食べるものはあげない方がいいんだよな……」
「うん、病院の先生にも言われたよ。人間の食べ物はあげないでって。まぁ興味があるのは分かるけどね」
「そっか……わわっ、丸くなった……」
「あはは、もしかしたら絵菜の膝が落ち着くのかもしれないね」
「そ、そっか……あ、そうだ、写真撮っておこう」
絵菜がそう言ってスマホを出して写真を撮った。それを見た真菜ちゃんもスマホで写真を撮っていた。そのみるくは絵菜の膝の上でうとうとしていた。その姿も可愛い。我が家のアイドルなのかもしれないなと思った。
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