第50話「たこ焼き」
土曜日、今日はみんなでたこ焼きパーティをする予定にしていた。
僕は一昨日、昨日、今日と、連続でバイトに入っていた。一昨日と昨日は学校が終わってからすぐにバイト先へ行ったので、店長は「ひ、日車くん、そんなに頑張って大丈夫かい? 無理しないでね」と言っていた。たしかに無理をして体調を崩してはいけないが、僕としては勉強もバイトも同じように頑張りたいという気持ちがあった。課外授業で今までよりもバイトに入れない日が多いので、入れる時は入りたかった。
今日も三時まで頑張って、家に帰る。夏の日差しは厳しくて、汗が止まらなかった。
家に帰ると、玄関に何足か靴があるのが見えた。誰かもう来ているのだろうか。
「あら、団吉おかえり」
「お兄ちゃんおかえりー、みんな来てるよ」
「だ、団吉、お疲れさま」
「お兄様、お疲れさまです。おじゃましてます」
「お兄さん、お疲れさまです。僕もおじゃましてます」
リビングに行くと、日向と母さんの他に、絵菜と真菜ちゃんと長谷川くんがいた。そうかもう来ていたのか。
「ただいま、みんな来てたんだね、ごめん遅くなって」
「う、ううん、私たちが早かったから」
「ふふふ、お姉ちゃんも早くお兄様に会いたそうにしてたので、早めに来てしまいました」
「なっ!? あ、まぁ、そうかも……」
「ふふふ、団吉も愛されてるわね、いいわねー青春ねーって、またおばさんみたいなこと言っちゃった、いやねー」
「え!? あ、まぁ、そうなのかな……あはは。あとは火野と高梨さんか」
しばらくみんなで話していると、インターホンが鳴った。出ると火野と高梨さんが荷物を持って来ていた。
「いらっしゃい……って、また大荷物だな」
「おーっす、ジュースとか持ってきたら荷物が増えてしまったぜ」
「やっほー、外は暑いねぇ、汗が止まらないよー」
「うん、暑いよね、二人とも上がって、部屋はエアコンが入ってるから」
火野と高梨さんをリビングへ案内する。高梨さんは日向と真菜ちゃんを見つけて抱きついていた。いつも通りだな。
「やっほー、久しぶりに会ったけどみんな可愛いねぇ、お姉さんたこ焼きと一緒に食べちゃいたいよ……ふふふふふ」
「ふええ!? あ、みなさん、今日は我が家のたこ焼きパーティーにお越しいただきありがとうございます! ここからは私とお兄ちゃんとお母さんがちゃんとおもてなししますので!」
「お、おう、なんか急にやる気出してきたな、勉強も同じくらいやる気を――」
「お、お兄ちゃん! 勉強のことは言わないで!」
「あはは、あ、お兄さん、夏休みの課題がたくさん出てしまって、分からないところがあるので、今度教えてもらってもいいでしょうか……?」
「あ、団吉、私もまた分からないところがある……」
「お兄様、私も分からないところがあるので教えてもらえますか?」
「あ、うん、またみんなで勉強しようか、教えるよ。日向も真菜ちゃんや長谷川くんに負けないように勉強しろよ」
「う、ううー、またお兄ちゃんが勉強しろって言う……バカー」
ぶーぶー文句を言う日向を見て、みんな笑った。
「ふふふ、日向も夏休みの課題頑張らないとね。さあさあ、みんなこれでたこ焼き作りましょうか」
母さんがたこ焼き器を二つ用意してくれた。
「おっ、ありがとうございます! しかし団吉どうするんだ? このままだと八人いるが」
「ああ、リビングとダイニングで四人ずつに分かれようか、グーとパーでいいんじゃないかな」
グーとパーで分かれた結果、僕、絵菜、高梨さん、長谷川くんと、日向、火野、真菜ちゃん、母さんのグループになった。火野の隣に座った真菜ちゃんの姿勢がよくなった気がするのは気のせいだろうか。
「ふふふ、なんか若返った気分だわー、これを焼いてね、具もたくさんあるわよ」
「ありがとうございます! じゃあ、こっちもじゃんじゃんいこうかー! くるくる回すの楽しいよねー」
「あはは、あ、絵菜も回すのやってみたいって言ってたね」
「あ、うん、やったことなくて……」
「うんうん、たくさん作るからみんなで回していこうか」
たこ焼き器を温めて、生地をたこ焼き器に流し入れ、たこ、紅しょうが、天かすなどを入れる。少しとろっとしてきたので、生地を巻き込むように回転させながら焼いていく。みんなで作れて楽しいなと思った。
「な、なるほど、こうやるのか……」
「うんうん、絵菜も出来てるね。だんだんと丸くなってきたかな」
「そだねー、あ、これいいかもー、はい、長谷川くんソースとかかけて食べてー」
「あ、ありがとうございます、じゃ、じゃあいただきます……あ、熱いけど美味しいです」
「そっか、よかったよ。あ、どんどんできるね、みんな食べよう」
僕もできたてのたこ焼きを食べてみる。うん、ソースやかつおぶしもアクセントになって美味しい。何個でもいけそうな気がした。
日向たちも盛り上がっているようだ。みんなで作れるというのがいいなと思った。
「そーそー、長谷川くんは部活頑張ってるー? 陽くんも中川くんも引退しちゃったけど」
「あ、はい、なんとか頑張ってます。練習はきついですが、体力も少しずつついてきたみたいで」
「そっかそっか、ブランクが気になるって言ってたけど、なんとかなってるみたいだね」
「はい、まだまだ火野さんや中川さんのようには出来ませんが、いつかお二人を超えたいなって思って」
「そかそかー、うんうん、すぐに陽くんや中川くんみたいに出来るようになるよー。あ、そしたらますますカッコよくなって、日向ちゃんがメロメロだねぇ」
「うん、日向ちゃんも近くで見守ってくれるしな」
「ええ!? あ、いや、そ、そうなのかな……見守ってくれるのは、ありがたいです……」
長谷川くんが恥ずかしそうに俯いたので、僕と絵菜と高梨さんは笑った。
「あはは、長谷川くんも頑張ってね。あ、焼けてるよ、みんなどんどん食べて」
絵菜と高梨さんに押されて長谷川くんが恥ずかしそうにしていたが、美味しいと言ってたくさん食べていた。日向たちも盛り上がってたくさん笑っていた。クリスマスの時も思ったが、我が家の食卓がこんなに賑やかになって、僕は嬉しかった。
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