第29話「女子の活躍」
球技大会の日がやって来た。
一年生の時と同じくグラウンドで全体挨拶が終わり、みんな各種目が行われる場所へ移動していた。
「……俺たちはちょっと時間あるみたいだね」
「ひ、日車くん、相原くん、が、頑張ろうね」
さて頑張るかとひっそりと気合いを入れていたら、相原くんと木下くんが話しかけてきた。
「あ、そうだね、先に女子の応援に行かない?」
「……うん、体育館か、行ってみようか」
体育館では、女子のバレーとバスケが行われる。組み合わせ表を見ると五組は先にバレーがあって、その後バスケがあるみたいだ。
「五組はバレーが先に試合があるんだね、あ、九十九さんと大島さんと富岡さんがいるね」
僕たちが手を振ってみると、三人が気づいてこちらにやって来た。
「三人とも頑張ってね」
「あ、ありがとう、ちょっと緊張するけど、頑張る……」
「ありがとう、ふっふっふ、私たちの力を見せつける時が来たわね!」
「あ、ありがとうございます……! 足を引っ張らないようにしないと……」
「……そうだ、あれやっとかない?」
相原くんがそう言って右手を出してきたので、みんなでグータッチをした。うん、頑張ってもらいたいな。
五組の相手は八組だった。八組のサーブで試合が始まる。いきなり富岡さんのところにボールが飛んできたが、少し動きながらなんとかレシーブした。
「大島さん、上げて!!」
あまり聞いたことのない九十九さんの大きな声が聞こえてきた。大島さんがトスを上げる。左側からススっと動いた九十九さんが大きくジャンプ。そのままスパイクを打つ。相手のブロックもぶち抜いてコートの左端に決まった。
「……おお、九十九さんすごいな、スパイク打てるのか」
「す、すごいね九十九さん、け、経験者の動きだね」
「そういえば少しやったことあるって言ってたね、すごいすごい!」
五組のバレー部の人と、九十九さんが中心となって点を取っていく。大島さんと富岡さんも、レシーブとトスを頑張ってボールを上げていた。
中盤くらいから点差がつき、見事五組の勝利となった。みんなで喜び合った後、三人がこちらにやって来た。
「みんなお疲れさま、すごいね! 大島さんと富岡さんも頑張ってたし、九十九さんもスパイクカッコよかったよ!」
「う、うん、久しぶりだったけどなんとかできた……日車くんたちが応援してくれたおかげだよ」
ススっと僕の隣に来た九十九さんが、きゅっと僕の手を握って来た。汗をかいている九十九さんも美人……って、ぼ、僕は何を考えているのだろう。
「つ、九十九さん!? くっ、なぜそんなに早く日車くんの隣に行けるのかしら……!」
「……日車くん、相変わらずモテモテだね」
「ほんとですね、日車さん可愛いから仕方ないのかもしれませんね……!」
「え!? あ、そ、そろそろバスケの方が試合がありそうだね、行ってみようか」
隣のコートで五組のバスケの試合が始まろうとしている。なんと相手は一組だった。あの高梨さんがいるのだ。これは厳しい戦いになりそうだなと思った。
みんなで隣のコートに行くと、絵菜と杉崎さんが気づいてこちらにやって来た。
「あ、団吉、みんな、来てくれたのか」
「うん、絵菜も杉崎さんも、頑張ってね。しかしまさか一組と当たるとは……」
「あははっ、大島が言ってたように、勝てるって思わないといけないなー。姐さん頑張りましょうね!」
「う、うん……」
「そうよ、勝てるって信じた方が勝つのよ。あ、みんなであれやっておかない?」
大島さんが右手を出してきたので、みんなでグータッチをした。そうだな、相手がどこであっても勝てると信じないといけないな。
試合が始まる。ジャンプボールを高梨さんが制して一組のボールとなった。どんどんパスを回して高梨さんがパスを受け取ると、ドリブルで切り込んでレイアップシュートを決めた。さすがバスケ部の部長である。
「た、高梨さんさすがね、動きが全然違うわ。高さもあるし……」
「う、うん、一年の時からすごかったけど、さらに上手くなってる……」
五組もバスケ部の人がドリブルで持って行く。パスを回して、絵菜のところにボールが来た……と思ったら、なんと高梨さんがぴったりと絵菜をマークしていた。
「ふふふ、絵菜、さぁ来い!」
「……ああ」
ボールを持った絵菜がドリブルで動き出す。けっこう素早い動きだが、高梨さんもぴったりとついていく。もう一人ディフェンスに加わってしまい、ヤバい、とられそう……と思ったその時、絵菜はフリーだった杉崎さんに素早いパスを出した。
「あっ!」
「杉崎、いける!」
「よっしゃー! 姐さんナイスパスです!」
そのまま杉崎さんがシュートを放つ。綺麗な放物線を描いてボールはゴールネットに吸い込まれた。
「くそぅ、絵菜やるねー! うちに入ってくれればよかったのにー」
「あ、ありがと……って、今は敵だった……」
それから一進一退の攻防が続いた。一組は高梨さんを中心に点を取り、五組はバスケ部の人と絵菜を中心に点を取っていた。しかし終盤に差がついてしまい、一組がリードしたまま試合は終わってしまった。少ししょんぼりとした絵菜と杉崎さんがこちらにやって来た。
「ま、負けちゃったか……で、でも、花音も沢井さんも、よく動いてたよね」
「うん、二人ともいい動きだったよ! ちゃんと点取ってたし」
「あ、ありがと……もう少しだったんだけどな……」
「くそー負けちまったかー、でも、姐さんさすがです! 高梨相手でも切り込む姿、シビれました!」
杉崎さんが絵菜の手をとってぴょんぴょんと跳ねている。絵菜は「あ、ああ……」とちょっと恥ずかしそうにしていた。
「あ、もうすぐサッカーの試合があるね、僕たちは行かないと」
「……あ、ほんとだ、そろそろ行こうか」
「う、うん、が、頑張らないと……」
「あ、団吉、みんなで応援に行く。頑張って」
「そうね、みんなで応援に行きましょ。三人とも頑張ってね」
「み、みなさん頑張ってください……! あ、もう一度あれやっておきませんか……?」
富岡さんがそう言ったので、みんなで右手を出してグータッチをした。よし、気合いが入った。楽しみながらも頑張ろうと思った。
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