第14話「身体測定」
梅雨にはまだかなり早いが、しとしとと雨が降っている。今日は学校で身体測定がある。
小学生、中学生の時はそれなりに背が伸びていたが、高校生になるとその伸びも落ち着いたのか、あまり伸びなくなった。まぁでももしかしたら少しだけ伸びているかもしれない。ちょっと楽しみでもあった。
学年ごとに体育館に集まって身体測定を行う。項目は身長、体重、視力、聴力となっている。まずは身長と体重か、五組のみんなが出席番号順に一列に並ぶ。しばらく待っていると僕の番が来た。あ、北川先生がいる。
「あら、次は日車くんね、こんにちは」
「こんにちは、よ、よろしくお願いします」
「ふふふ、まず身長から測るわね、そこに立って」
身長計にまっすぐ立って前を見る。小学生の時はちょっと背伸びして怒られてた人がいたっけ。どんなもんかなとドキドキしていると、
「……百七十一センチね。次は体重を測りましょう。そっちに乗って」
と、北川先生が言った。あ、前より一センチ伸びている。まだ成長していたのか。まぁ高校生だしおかしくないのかもしれない。
続いて体重を測ったが、こちらは前とあまり変わらないようだ。標準か。え? 何キロ? それは恥ずかしいので内緒にしておこう。
その後、視力と聴力も検査した。うん、どちらも問題ないようだ。視力は昔からまあまあよかった。
とりあえず全部終わった。終わった人から教室に戻ることになっていたので、僕も教室に戻ると、
「……あ、日車くん、どうだった?」
「日車さん、お疲れさまです……! どうでしたか?」
と、相原くんと富岡さんに話しかけられた。
「ああ、身長が一センチ伸びてたよ。体重はあまり変わらなかったかな。二人はどうだった?」
「……俺も一センチ伸びてた。まだ伸びてるんだなって思ったよ」
「お二人ともさすが、男の子ですね……! 私は全然伸びてませんでした……しかも体重が少し増えちゃって、悲しいです……」
富岡さんが少ししょんぼりしていた。でも富岡さんは見た感じ小柄で痩せているので、少しくらいならいいのではないかと思ったが、女性の体重の話は突っ込んではいけないのだ。
「そっか、まぁ僕たちもまだ高校生だからね、成長してるんだろうね」
「ふふふふふ、日車くん、身体測定の結果が出たわね、さぁ勝負よ!」
相原くんと富岡さんと話していると、大島さんがやって来た。
「え!? 大島さん本気で言ってる? どう見ても僕の方が背が高いし、体重もあると思うんだけど……」
とりあえず大島さんの横に並んでみる。大島さんは絵菜と身長が同じくらいか。どう頑張っても僕に勝つのは無理だった。
「はっ!? そ、そうね、日車くんとは十センチくらい違うわね……ま、負けたわ……」
「……大島さんの思考回路がちょっと心配になる……」
「ほんとですね……大島さん疲れているのでしょうか……」
「なっ、そ、そんなことないわよ、た、たまたま日車くんの方が大きかっただけよ。まぁ、そんな日車くんも嫌いじゃないけどね」
たまたまって何だろうかと思っていたら、大島さんが僕の右腕に抱きついてきた。
「え!? お、大島さん!?」
「――団吉?」
その時、僕の背後から恐ろしい声が聞こえてきた。見ると絵菜が頬を膨らませて立っていた。
「ああ!! い、いや、これは大島さんが急に……ご、ごめん!」
「……ふふっ、慌てる団吉も可愛い。まぁ、大島が近いのは今に始まったことじゃないけど」
「さ、沢井さん!? な、なんか余裕あるのがムカつくわね……!」
グイグイくる大島さんだったが、絵菜はどこか余裕だった。な、なんだろう、広い心を持ったのだろうか。
* * *
その日の五時間目は生物の授業だった。三年生でも五組と六組が合同で第一理科室で授業を受けることになっている。僕と絵菜が第一理科室に行くと、大島さん、杉崎さん、木下くんがいた。
「おっ、二人とも来たなー、なーなー、身体測定どうだったー?」
「僕は身長が一センチ伸びてたよ。まだ成長してるんだなぁって」
「わ、私も一センチ伸びてた……もう伸びないのかと思ってた」
「おおー! あたしも一センチ伸びました! もうちょいで姐さんに追いつけると思ったんだけどなー、さすが姐さん!」
「み、みんな伸びるもんだね。ぼ、僕はなぜか二センチ伸びてたよ。びっくりした」
「おお、木下くんすごいね、数センチしか違わないから、そのうち追いつかれるかも」
「お、おかしいわね、なんでみんなそんなに伸びてるの……私なんて全然変わらなかったのに……ブツブツ」
大島さんがちょっと寂しそうにブツブツとつぶやいていた。
「まーまー、大島も今後もしかしたら伸びるかもしれないじゃん? まだあたしたち若いんだからさー。あ、そういえば身長とともに胸も大きくなった気がするな」
「なっ!? 杉崎さん、まだ胸が大きくなってるの? どういうことなの、元々大きいのにまだ大きくなってるなんて……」
「あ、わ、私もちょっと胸が大きくなったのかも……ブラがちょっとだけきつくなったような……? 気のせいかな」
「なっ!? さ、沢井さんまで……くっ、すごく負けた気持ちになる……!」
三人で女子トークが展開された。僕と木下くんはさすがに入れずにドキドキしていた。そ、そうか、胸も大きくなるのか……女性って大変だな……って、僕は何を考えているのだろう。
「まー、あんまし大きくてもいいことはないんだけどなー、男の視線感じる時もあるしさー。あ、大悟と日車は別だぞー、二人とも触りたいって言ってたからなーなんちって」
「……団吉、本気?」
「なっ、日車くんも木下くんも、いやらしいわね……まぁ男の子だから仕方ないか」
「ええ!? な、なんで僕たちが言った感じになってるの!? 何も言ってないよ! 絵菜も変な目で見ないで!」
「はひ!? ぼ、僕も何も言ってないよ、何も……」
なぜか巻き込まれる僕と木下くんが慌てていると、女子三人が笑った。うう、女子に押されっぱなしなのは相変わらずだった。
と、とりあえず、僕たちもまだまだ成長しているのだな。でも身長はそろそろ止まりそうだが、いつまで伸びるのだろうか。
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