第5話「みんなで」
入学式の次の日、一年生の日向たちはテスト、僕たちは普通に授業がある。
一年生が入ったことにより、学校もさらに賑やかになったような気がする。去年の三年生が卒業した後は今の三年生と二年生だけだったもんな、まぁこれも当たり前なのかもしれない。
今日も無事に午前中の授業が終わり、絵菜と一緒に学食へ行く……のだが、実は今日は母さんが寝坊してしまった。最近リモートワークが増えてきたこともあって、時間に余裕があるからかもしれない。まぁ弁当はなくても学食で買えばいいので問題なかった。
僕はいつもの席につく前に食券を買いに行く。前はカツカレーにしたから今日は何か別のものを……と思って、人気の親子丼にしてみた。少し待っているとおばちゃんが親子丼を出してくれた。卵がたっぷりで美味しそうだ。僕は三人の元へと行く。
「おーっす、お疲れー、お、団吉今日は弁当じゃないのか」
「お疲れさま、うん、母さんが寝坊してしまってね、まぁいいんだけど」
「やっほー、お疲れさまー、おお、今日は親子丼なんだね、美味しそうだねぇ」
「あ、団吉の見てるとやっぱり食べたくなる……」
「あはは、うん、たまには学食で買うのもいいよね。絵菜もぜひぜひ」
そう言って僕は親子丼を食べてみる。うん、卵がふわっとしているし、鶏も大きくて美味しい。
「あ、そういえば昨日は入学式だったねぇ、日向ちゃんたちは無事に入学したのかな?」
「うん、日向も真菜ちゃんも長谷川くんも、三組で一緒になったみたい。よかったよ」
「おお、俺らも一年生の頃は三組だったよな、懐かしいぜ」
「あー、そーだったねぇ、あの頃は私も若かった……今や数学に苦しむただのおばさんとなってしまったよー」
「い、いや、今でも十分若いと思うよ……文系は数Ⅲはないんだよね?」
「ああ、ないけど今までの範囲でも十分に難しいぜ……また団吉に教えてもらわないといけないなぁ」
「そだねー、日車先生のアメとムチの講習を受けなければ……」
「あ、団吉、私もまた数学教えてほしい……」
「ああ、うん、いいよ、僕ができることなら何でも」
「――あ、お兄ちゃん!」
急に声がしたので振り向くと、日向と真菜ちゃんと長谷川くんがいた。
「あ、みんなお疲れさま、そういや日向も弁当ないんだったな」
「そうだよー、お母さんが寝坊したからねー、あ、お兄ちゃん親子丼なんだね、かぶった!」
「えぇ、兄妹で一緒なのかよ……」
「ふっふっふー、私とお兄ちゃんは一心同体なのだ! あ、私たちもここで食べていい?」
「あ、うん、いいよ、そっち座って」
僕たちの隣が空いていたので、日向と真菜ちゃんと長谷川くんが座った。
「おおー、日向ちゃんに真菜ちゃんに長谷川くん、お久しぶりー、三人とも制服姿が似合ってるねぇ」
「あ、お久しぶりです! ついに女子高生になりました!」
「まあまあ、みなさんお久しぶりです! 私もピチピチの女子高生です」
「あ、お、お久しぶりです! ぼ、僕は男子だけど……なんとかみなさんの後輩になれました!」
「おお、みんなおめでとう、そうかー三人が後輩かぁ、なんか不思議な感覚だぜ」
「くぁーっ、みんな可愛いねぇ、お姉さんみんなまとめて食べちゃいたいよ……ふふふふふ」
「た、高梨さん心の声が……みんなテストはどう? できてる?」
「うっ、お兄ちゃんそれは言わないで……」
「お兄様、高校生とは大変なのですね……頑張っていますが、けっこうきついです」
「ぼ、僕もしんどいです……お昼食べて元気出そう……」
三人が同じように「ううう……」と言っている。
「あはは、そーだよね、私も一年生の頃しんどかったの思い出すなぁ、その頃はまだ日車くんや陽くんとはあまり話してなかったよねー」
「うん、そうだったね、ぼ、僕はあの頃昼休みダッシュで教室から逃げてたけど……うう、寂しい昼休みだった……」
「だ、団吉しっかり……わ、私も似たようなものだったから」
「あはは、そういえばそうだったなぁ、もう二年前なのか、懐かしいぜ」
「――あ! 団吉さん!」
また急に呼ばれたので振り向くと、東城さんがニコニコしながらこちらにやって来た。
「あ、東城さん、こんにちは」
「こんにちは! あ、みなさんも一緒だ! わぁ、日向ちゃんと真菜ちゃんがいる!」
「わぁ! 東城さんこんにちは! ついに学校で会えましたね!」
「東城さんこんにちは! お久しぶりです、なんか不思議な感じですね!」
「ふふふ、中学生の頃を思い出すなー、そっかー二人がまた後輩になったのかぁ、あ、そろそろ私のこと『東城先輩』って呼んでくれてもいいんですよ! なんちゃって」
東城さんがドヤ顔を見せた。くそぅ、その顔もなんだか可愛い。
「あはは、東城さん、また三人で女子の秘密の話しましょうね!」
「あ、うん! ぜひぜひ! 私も遊びに行くね!」
日向と真菜ちゃんと東城さんが顔を合わせて「ねー」と言っている。そ、そろそろ何の話をしているか教えてくれないだろうか。
「お、お兄さん、あの人、まりりんですよね……?」
「あ、そうそう、うちの高校に通ってるんだよ」
「そ、そうだったんですね、なんか不思議な感覚です……」
「くぁーっ、可愛い子が揃ってしまったー! うう、いつ食べればいいんだろう……みんなまとめて、いや一人ずつもいいな……じゅるり」
「た、高梨さん落ち着いて……東城さんもまた日向たちをよろしくね」
「はい! またみなさんに会いに行きますね! あ、友達が待ってるので、これで失礼します。それじゃあまた!」
東城さんが手を振りながら友達のところへ行った。
「おー、なんか三人が入学したことで、一気に賑やかになりそうだなぁ」
「そうだね、東城さんの時もそうだったけど、やっぱりこの三人が後輩というのが不思議な感覚かも」
「……東城、相変わらず可愛いな」
僕の横で絵菜がぽつりと言った。
「え、あ、そうだね、か、可愛いというか、なんというか」
「ふふっ、困ってる団吉も可愛い。でも東城には負けたくないな……」
「あ、う、うん、大丈夫だよ、絵菜も可愛いから……はっ!?」
ふと周りを見ると、火野と高梨さんと日向と真菜ちゃんがニヤニヤしながら僕たちを見ていた。う、うう、一気に増えた……。
と、とにかく、火野の言う通り、三人が入学したことで学校が一気に賑やかになりそうだった。まぁ楽しく過ごせるのなら、いいか。
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