第106話「委員長会議」
「それでは、委員長会議を始めます。本日は最初に生徒会長の九十九さんの挨拶の後、各委員長より活動の報告をしてもらいます」
第一理科室に僕の声が響き渡る。部長会議の時と一緒だ。今日は各委員長が集まる委員長会議が行われていた。僕の知り合いといえば体育委員長の火野、風紀委員長の中川くん、図書委員長の富岡さんが出席している。
九十九さんがいつも通り挨拶を行う。落ち着いていて噛むこともない九十九さんは横から見ても美人だった。あ、あれ? 僕は何を考えているのだろう。
九十九さんの挨拶が終わった。あ、続きは僕が話さないと。
「つ、九十九さんありがとうございます。それでは今日座っている席順で、体育委員長の火野くんから順番に報告をお願いします」
「おっす、じゃなかった、はい!」
火野が元気よく立って報告する。それから各委員長が続けて話した。ちょっと富岡さんが挙動不審になりかけていたが、なんとか話すことができた。みんなが話し終わったところで僕がまた話す。
「――ありがとうございます。各委員長からの報告は以上になりますが、他に何か伝えたいことや相談等はありませんか?」
少しだけみんなが話し始めてざわざわする。しかし手は挙がらないな……と思っていたら、
「あ、あの……」
と、ちょっと小さい声で富岡さんが手を挙げていた。
「あ、富岡さん、どうぞ」
「あ、す、すみません……あの、最近図書室の利用者が増えて嬉しいのですが、おしゃべりをしている人も増えてしまって……わ、私も注意をしているのですが、聞いてくれなくて……せ、生徒会のみなさまからも何か注意とかしていただけたらありがたいなと……」
富岡さんが少しビクビクしながら話す。なるほど、たしかに図書室は本を読む人、勉強をする人、色々いると思うが静かにしないといけない場所だ。富岡さんの性格上あまり強く言えないんだろうなと思った。
「――あ、でもさ、勉強している人が教え合ってるんじゃね? それくらいならいいと思うんだけどな」
誰かがぽつりと言った。みんながさらにざわざわする。富岡さんは「あ、いや、あの……」と、今の言葉に返事が出来ないようだ。まずい、ここは僕が言おうと思ったら、
「……いや、勉強するのはいいが、話し合ってはダメだと思うぜ。教え合うんなら教室でもできるんだし、図書室では静かにするべきだと思う」
と、ハッキリとした声が聞こえた。声の主は火野だ。ざわざわしていたこの場がしんと静まり返った。
「ああ、そうだな、本を読む人、勉強をする人、みんな静かに取り組むべきだと思う。話があるんならよそでやってくれ」
火野の言葉に続いて、中川くんも声を出した。二人が僕が言いたかったことを言ってくれた。第一理科室は静まり返ったままだ。
「なぁ、団吉、生徒会の方からなんか注意喚起? みたいなことできねぇかな? あんまり俺詳しくないんだけど」
火野に話しかけられて、僕はハッとする。そうだ、富岡さんが言ってもきかないなら僕たちがなんとかするべきだ。何か手はないかと考えていたら、
「――分かりました、図書室の入り口と、図書室の中にも静かにするようにという注意喚起の貼り紙と、生徒用ホームページにも記載してアナウンスしましょう。日車くん、大島さん、天野くん、それでいいかな?」
と、九十九さんがキリっとした顔で言った。なるほど、それはいいアイデアだと思う。
「ええ、分かったわ、生徒用ホームページは更新しておくわ」
「はい、いいと思います。じゃあ僕と日車先輩が貼り紙を用意しましょうか」
「あ、う、うん、分かった、そうしよう。富岡さん、それでいいかな? 僕たちも図書室を利用して、どんな感じか見て、まだ改善されなかったらまた考えるから」
「あ、は、はい、ありがとうございます……!」
富岡さんがペコペコとお辞儀をしている。
「で、では、他に何かありませんか?」
僕の問いかけに、誰も手を挙げる人はいなかった。
「それでは、今日の委員長会議を終了します。ありがとうございました。またよろしくお願いします」
僕の言葉で委員長会議が終了した。みんなが「ありがとうございました」と言ってわいわいと話しながら第一理科室を後にする。僕はふーっと一息ついていると、火野と中川くんと富岡さんが僕のところにやって来た。
「おーっす、お疲れ、いやー話し合いってけっこう緊張するもんだな、実は俺ビビってたぜ」
「お疲れさま、ごめん、さっき富岡さんの相談の時、僕が何か言うべきだったのに……」
「気にすんな、俺も中川も思ったこと言っただけだからさ、なぁ中川?」
「ああ、日車くんが謝る必要ないよ。それにしても図書室で話すなんて、分かってない奴がいるもんなんだな」
「あ、あの、みなさんすみません、ありがとうございました……!」
富岡さんが顔を赤くしてペコペコと何度もお辞儀をしている。
「あ、二人ははじめましてかな、僕と同じクラスの富岡さん。図書委員長やってもらってて」
「おっす、はじめまして、一組の火野です。ああ、そんなに頭下げないで、さっきも言ったけど、俺らは思ったこと言っただけだからさ」
「ああ、はじめまして、一組の中川です。こんなに可愛らしい富岡さんが困ってたようだったから、助けてあげないとね」
「はわっ! あ、いや、その、あの……」
富岡さんが顔に手を当ててあわあわと慌てている。イケメン二人はケラケラと笑っているが、くそぅ、さらりとカッコいいこと言いやがって……! これだからイケメンは困る。
「それにしても、団吉は司会進行できるんだな、成長したよなぁ、昔はみんなの前で何か話すのすげー苦手で――」
「わ、わーっ! 火野! それ以上は言わないでくれ……!」
「あはは、日車くんも立派に副会長を務めているということじゃないか、すごいことだよ、もっと自信持っていいと思うけどな」
「あ、ありがとう、なんだろう、そう言われるとすごく恥ずかしいね……」
「日車さんも火野さんも中川さんも、カッコいいです……! できる三人は仲が良くて実はこの後……はっ!? わ、私何考えてたんだろう」
「……ん?」
「……ん?」
「ひ、火野、中川くん、気にしないで……富岡さんも落ち着いて……」
「はわっ!? す、すみません、つい……」
富岡さんがトリップしかけたが、なんとか落ち着かせることができた。危なかった。
なんとか今日の会議を終えることができた。司会進行は慣れてきたところもあるが、僕ももう少ししっかりしないといけないなと思った。
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