第95話「イブライブ」

 ライブ開始の時間となった。

 最初にパーマのお兄さんが出てきて軽い説明をするのは前回と変わらなかった。お兄さん髪伸ばしているのか。

 軽い説明が終わると、「それでは、メロディスターズの登場でーす!」という掛け声とともに、曲が流れ始めた。あ、これは最近出た『明日へ向かって』のイントロだ。

 その後、メロディスターズの五人がゆっくりと出てきた。あ、衣装がクリスマスっぽく赤いサンタさんだ! 少ししっとりとした感じの『明日へ向かって』を歌う五人の姿はとても輝いて見えた。

 僕たちは前回と同じく、真ん中くらいの位置にいた。前の方ではコアなファンが熱心に応援している。僕は先程グッズコーナーでペンライトを買っていたので、それを振って応援した。横にいる絵菜と日向も楽しそうだ。

 曲が終わったところで、センターのゆかりんが、


「改めまして、今日は私たちのクリスマスイブライブに来てくださって、ありがとうございます!」


 と、挨拶した。そして他のメンバーが、


「「「「ありがとうございます!」」」」


 と、続けて挨拶した。短いスカートのサンタ衣装に身を包んだ五人は、とても可愛かった。


「今日はクリスマスイブということで、サンタさんになってみました! みんなどうかな?」


 ゆかりんが聞くと、みんなが「可愛いー!」と歓声を上げた。うん、本当にみなさん似合っている。


「ありがとー! それにしてもまりりんは今日も嬉しそうだったねぇ、もしかしてアレかな?」


 ゆかりんが隣にいる東城さんに話しかける。


「うん! 今日は学校の友達がたくさん来てくれているし、何よりもクリスマスイブという特別な日に、こうしてみんなと会えて嬉しいんだよ!」


 東城さんがそう言うと、みんながワァッと歓声と拍手を送った。僕も拍手する。


「あはは、そうだよねぇ、私たちもみんなと会えるのをとっても楽しみにしていました! 今日はたくさん楽しんでいってください!」


 ゆかりんがそう言うと、またワァッと歓声が上がった。


「それでは次の曲、冬にピッタリな『スノーホワイト』、聴いてください!」


 あ、この前日向が聴いていた曲じゃないかなと思って日向の方を見ると、「わぁー好きな曲来た!」と言っていた。



 * * *



 それから楽しい時間があっという間に過ぎていった。

 知ってる曲もたくさん歌ってくれたし、途中のフリートークでは五人の好きな食べ物の話になり、しおみんが「ういろうが好きなんだ~」と言っていた。し、渋いなと思ったがメンバーも同じ思いだったのか、「えーういろう!?」「ういろうってどんなんだっけ?」と、笑っていた。

 ライブが終わり、前回と同じく握手会の時間となった。またスタッフの方々が準備をして、メンバーが並ぶ。東城さんはいつも通り真ん中から一つ右隣にいた。

 うーん、東城さんのところに行くのもいいし、他の人ももう顔見知りだし……と思っていると、


「お兄ちゃんは誰のところに並ぶの?」


 と、日向が聞いてきた。


「うーん、みんな知ってるからすごく迷っていてね……やっぱり東城さんのところに行こうかなぁ。誘ってもらったからお礼も言いたくて」

「そっか、私も東城さんのところに行こうかなー」

「あ、じゃあ先に並んでいいぞ」


 よく見るとみんなも東城さんのところに行こうとしていたので、真菜ちゃん、長谷川くん、日向の順に先に並ばせた。僕は日向の後ろに並ぶ。

 一人一人の時間はそんなに長くないので、真菜ちゃん、長谷川くんと終わり、日向の順番がやって来た。


「東城さんこんにちは! 今日はありがとうございました! すっごく可愛かったです!」

「あっ、日向ちゃん! ありがとう! みんな来てくれて嬉しいー、でも最近女子の秘密の話ができなくて寂しくて」

「あ、来年私も青桜高校に入るつもりなので、また女子の秘密の話しましょうね!」

「ああ! そうだね、みんな合格できるように祈ってる! 早く学校で会いたいなー! 今日は本当にありがとう!」


 や、やっぱり女子の秘密の話が気になったが、教えてくれそうになかった。

 日向の番が終わり、僕の番がやって来た。東城さんがニコニコしている。


「こんにちは、今日は本当にありがとうね、東城さんもみなさんもすごく輝いていたよ」

「団吉さん! いえいえ、こちらこそ本当にありがとうございます! みなさん来てくれて本当に嬉しかったです! 私のサンタさん、どうでしたか?」

「あ、す、すごく可愛かったよ、い、いつも可愛いけど、それ以上だなって思ったよ」

「ありがとうございます! ふふふ、団吉さんに可愛いって言ってもらっちゃった、嬉しいなー今日は眠れないかも」

「え!? あ、また学校でもよろしくね、日向も青桜高校入るって頑張ってるみたいだし」

「はい! また遊びに行きますね! ふふふ、また可愛いって言ってもらえるように頑張ろっと!」


 そこまで話したところで、スタッフさんに促されて僕の番が終わった。東城さんは「あっ……」と少し寂しそうな表情を見せた。

 今回もみんな東城さんに感謝の言葉を伝えたようだ。天野くんが顔を赤くしていたのが印象的だった。いつも以上に可愛いから仕方ないか。


「いやー、今回もすごく盛り上がったな! 東城さん輝いていたぜ」

「ほんとだねー、すっごく可愛かった……今すぐ食べたかった……ふふふふふ」

「た、高梨さん落ち着いて……天野くんも木下くんも東城さんと話せた?」

「は、はい、でも緊張してしまって、可愛いってなかなか言えなくて……なんとか言えたけど、東城さんも笑っていました」

「ぼ、僕も可愛いってなかなか言えなかったよ、笑顔がまぶしくて、す、すごく可愛かったなぁ」

「そっかそっか、二人の気持ちはちゃんと伝わってるはずだよ、大丈夫」

「東城、可愛かったな……私もサンタの格好とかするべきなのだろうか」


 僕の隣で絵菜がぽつりと言った。


「え!? い、いや、そこまでしなくても……あ、でもちょっと見てみたいと思っちゃった」

「ふふっ、団吉は正直だな、さ、さすがにあれは難しそうだけど……」

「日向ちゃん、絶対に青桜高校に合格しようね!」

「うん! また三人で女子の秘密の話しようね!」


 日向と真菜ちゃんが顔を合わせて「ねー」と言っている。うう、なんか知らないところで変な話されてないかな。


「お、お兄さん、女子の秘密の話って何でしょうか?」

「さぁ……教えてくれないんだよね、長谷川くんも大変かもしれないけど、頑張ってね」

「は、はい! 僕も青桜高校に行きたいので、頑張ります!」


 みんなでライブの話をしながら帰った。今回もとても楽しいライブだった。後でまた東城さんにお礼を言っておこうと思った。

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