第93話「二学期終了」

「ふぅ、二学期も終わったか……」


 放課後の教室で僕はつい独り言を口にしてしまった。そう、今日は十二月二十三日、二学期の終業式の日だ。今日もいつもと同じく全校集会とホームルームで学校は終わった。通知表をもらったが、今回も僕の通知表には立派な数字が刻まれていた。定期テストの結果もよかったし、三学期も油断せずいきたいと思う。しかし大西先生が、「三学期は日車に百点取られないような問題にしてやる」と、やる気を出していたがなぜだろうか。


「日車さん、お疲れさまです……! 二学期も終わりましたね、とても楽しかったです……!」


 後ろの席から富岡さんが話しかけてきた。


「お疲れさま、うん、修学旅行も文化祭もあったし、楽しかったね」

「はい、いい思い出が出来ました……! あと、通知表もまあまあよかったので、嬉しいです……! これも日車さんと大島さんのおかげだと思います、本当にありがとうございます……!」

「そっかそっか、いえいえ、僕は大したことしてないけど、一緒にいい思い出が出来てよかったよ」

「……お疲れ、二学期も終わったね」

「みんなお疲れさま、終わったわね、なんか早い気もするわね」


 相原くんと大島さんも僕たちに話しかけてきた。


「お疲れさまです……! そうですね、あっという間でした……!」

「お疲れさま、ほんとだね、これで今年ももうすぐ終わって、来年になるのか……」

「そうね、来年はいよいよ三年生になるわね、受験生か、気が抜けない日々になりそうだわ」

「……やっぱりみんな大学目指してるの?」


 相原くんがちょっとだけ寂しそうな声を出した。


「うーん、僕は一応そのつもりではいるけど、どこの大学受けるかはまだ迷っていてね……近場がいいのか、やりたいこと見つけてどこか遠くへ行くのがいいのか……」

「私も日車くんと同じね、まぁいくつか候補は見つけてるけど、まだ絶対にここというのはないかも」

「私は専門学校にしようかなぁと思っています、必ず大学ってわけじゃないから、候補の一つとしてですが……」

「……そっか、みんなさすがだね、俺は将来のこととか全然分かんないや」

「まぁ、あと一年以上あるから、焦らなくてもいいんじゃないかな。そのうちやりたいことが見つかるかもしれないし。それよりも相原くんは本当に学校休まなくなったよね、そっちの方がすごいよ」

「そうよ、学校休まずに来てるし、学力もついてきているんじゃないかしら」

「……まぁ、学校なんてめんどくさいって思ってたけど、みんながいると楽しいというか……あ、ありがと」


 相原くんが顔をかきながら言った。ちょっと恥ずかしいのかもしれない。


「うんうん、相原くんの気持ち分かるよ、僕もめんどくさいって思ってた時期あったし」

「まぁ、みんながいれば怖くないわね、三学期も楽しくやりましょ」

「そうですね、あ、冬休みもまたRINEでお話しませんか、楽しく過ごしましょう……!」

「……うん、よろしく。あ、日車くん、沢井さんが待ってるみたいだけど、行かなくて大丈夫?」


 相原くんの言葉を聞いてふと廊下を見ると、絵菜がこちらを見ていた。しまった、少し待たせてしまったかもしれない。


「あ、ご、ごめん、帰るね、それじゃあまた」

「お疲れさま、あ、よいお年をと言っておくわ」

「……お疲れ、また来年」

「お疲れさまです、また来年もよろしくお願いします……!」

「うん、みんな来年もよろしく。またRINEするね」


 みんなに挨拶をして、僕は急いで廊下に出た。


「ご、ごめん、待たせてしまった」

「ううん、大丈夫。でも楽しそうだな、やっぱり団吉と一緒のクラスがいいな……」

「そうだね、三年生になったら一緒になれるように今から祈っておこうか」


 絵菜と一緒に帰る。校門を出るとどちらからともなく手をつないでいた。僕はこの瞬間が大好きだ。


「二学期も終わったな、団吉は楽しかった?」

「うん、修学旅行や文化祭があって、けっこう楽しめたと思うよ。絵菜は?」

「私も楽しかった。こんなに学校が楽しくなるなんて、数年前は考えられなかった」

「ああ、僕も似たようなもんだよ。学校なんてめんどくさいって思ってたなぁ」


 そう、何度も言うけど、絵菜やみんながいるから、学校が楽しいと思えるようになったのだ。本当にこの学校でよかったなと思った。


「そういえば、明日はライブだな、東城に何か言った?」

「うん、木下くんがチケット買っちゃってたことと、代わりに長谷川くんが行くことを伝えておいたよ。東城さんも楽しみにしているみたい。『また握手会がありますよ!』って言ってたよ」

「そっか、東城も知ってる人が来てくれると嬉しいよな……あ、そうだ、二十五日は予定ある?」

「ん? クリスマスは絵菜と一緒に過ごそうかと思ってたけど、ごめん、何も言ってなかったね、何かあった?」

「あ、いや、それならいいんだ、私も団吉と一緒にいたい……」


 そう言って絵菜が僕にピッタリとくっついてきた。


「う、うん、あ、そうだ、よかったら二十五日と二十六日にかけて、真菜ちゃんと一緒にまたうちに泊まりに来ない? 夏休みは絵菜のお家でお世話になったから、今度はうちでどうかなと思って」

「え、あ、私は行きたいけど、いいのかな……」

「うん、遠慮しなくていいよ、一応母さんに昨日聞いておいたんだ。『あらあら、また娘が増えて嬉しいわ~』って言ってたよ。もしかしたら母さんがまた絵菜のお母さんに電話するかもしれないけど」

「そ、そっか、じゃあ、お邪魔しようかな……団吉とずっと一緒にいたい」

「うん、僕も嬉しいよ。日向と真菜ちゃんの勉強も見てあげようかな」

「あ、私も教えてほしい。冬休みの課題がまたたくさん出たから、一人じゃ無理かもしれない……」

「そうだね、僕も課題やらないといけないから、また一緒にやろうか」

「うん。あ、これから駅前の方に寄って帰らないか? なんかお腹も空いてきた」

「うん、いいよ、そしたら何か食べて、デートするのもいいかもしれないね」


 僕がそう言うと、絵菜が嬉しそうにしていた。今年も去年と同じようにクリスマスの予定がバッチリと決まった。なんだか嬉しくなった僕だった。

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