第74話「告白再び」
金曜日、僕と絵菜はいつものように一緒に帰って来た。明日は土曜日だが模試があるため、学校に行かなければならない。絵菜も「明日も学校か……しかもテストみたいなもんだよな」とちょっと憂鬱そうにしていた。まぁ、たしかにあまり楽しいものではないが、仕方ない。
途中で絵菜と別れて、まっすぐ家に帰る。
「ただいまー……って、日向はまだ帰って来てないか」
どうやら僕が一番最初に帰ったみたいだ。僕は部屋で鞄を置いて着替えて、リビングでのんびりすることにした。そうだ、前から気になっているパソコンを探そうかなと思ってスマホをポチポチと操作する。うーん、やはり種類が多すぎて分からないな……木下くんに聞いてみようかと思ったその時、玄関が開く音がしたと思ったら、「おおおお兄ちゃーーーん!!」という大きな声とともに日向が入ってきた。あれ? 前にもあったような気がする。
「お、おう、おかえり、どうしたでかい声出して」
「お、お兄ちゃん、どどどどうしよう、あわわわ……」
「ひ、日向落ち着いて……な、何かあったのか?」
「そ、それが……長谷川くんが、や、やっぱり私のこと好きですって、こ、こここ告白してきて……」
ん? 長谷川くんというのはたしか以前日向に告白してきた男の子だよな。あの時は日向は断ったらしいけど、それからも仲良くしていると聞いていたが、また告白してきた?
「え、あ、そうなのか、なるほど、やっぱり長谷川くんは諦められなかったというわけか……」
「う、うん……よく話はしてたんだけど、す、好きとかそんな感じは全然見せてなかったから、わ、私ビックリして……」
「そっか、日向は何て返事したんだ?」
「そ、それが、すぐに返事できそうになかったから、ちょっとだけ待ってくれないかって……」
「なるほど、ちょっと待ってもらったのか。で、日向の今の気持ちはどうなんだ?」
「う、うーん……ずっと友達だったけど、わ、私もちょっと長谷川くんのこといいなって思い始めていて……あ、あわわわ、恥ずかしい……」
日向が顔を真っ赤にしてもじもじしている。なるほど、日向もいいなって思い始めていたのか。
「そっか、じゃあ『私も好きです』って言ってもいいんじゃないかな、長谷川くんも喜ぶと思うよ」
「う、ううー、恥ずかしいよー、お兄ちゃん代わりに言って……」
「え!? い、いや、それはさすがにできないぞ……ちゃんと自分の言葉で伝えないと」
「ううー、分かってる、分かってるんだけど……」
「……よし、またイケメンのお兄さんと美人のお姉さんに背中を押してもらうか」
「え?」
僕はスマホを操作して火野たちのグループRINEにメッセージを送る。
『こんにちは、お疲れさま、みんなグループ通話できないかな?』
『おーっす、俺は大丈夫だぜ』
『やっほー、私も大丈夫だよー』
『あ、私も大丈夫』
みんな大丈夫と返事が来たので、僕はグループに通話をかけた。日向が聞こえるようにスピーカーにする。
「もしもし、ごめんみんな、ちょっと聞いてもらいたいことがあって」
「おーっす、どうした?」
「日向、話せるか?」
「うう……でも、私のことだ、は、話さなきゃ……あ、あの、今日長谷川くん、あ、前に告白してくれた男の子からまた好きですって言われました……」
「おおー! そかそかー、それで日向ちゃんは何て言ったの?」
「え、えっと、すぐに返事できそうになかったので、ちょっとだけ待ってくれないかって言いました……」
「なるほどね、日向ちゃんの気持ちはどうなのかな?」
「わ、私は……いつも話していて、ちょっと長谷川くんのこといいなって思い始めていて……や、やっぱり恥ずかしいです……」
「そかそかー、ははーん分かった、恥ずかしくて『好きです』って言えないんだね?」
「は、はい……」
日向がちょっと恥ずかしそうにもじもじしている。
「うんうん、好きって言うの恥ずかしいよねー。でもさ、長谷川くんは二度も『好きです』って言ってくれたんだよね、すごい勇気が必要だったと思うよー」
「ああ、一度断られても、やっぱり好きって気持ちが諦められなかったんだなぁ、長谷川くんはすごいと思うよ。日向ちゃんも愛されてるね」
「そ、そうなのかな……」
「そだよー、それと、日向ちゃんが長谷川くんのこといいなって思い始めたのも、今までちゃんと長谷川くんに向き合ってきたわけだから、とても素敵なことだとお姉さんは思うけどねー、絵菜はどう思う?」
「え、あ、好きって言われたから好きになったってわけじゃないと思うから、日向ちゃんの正直な気持ちを伝えることが大事だと思う……」
「そうだな、せっかく『好きだ』っていう気持ちが芽生えてきたわけだから、恥ずかしいを乗り越えて正直に伝えるのがいいと思うよ」
「う、うう、ちゃんと言えるか不安で……」
「……大丈夫、ここにいるみんな、最初は不安だった。恥ずかしいっていう気持ちもあった。ま、まぁ、今もゼロではないけど……だから、長谷川くんが勇気を出して言ってくれたように、日向ちゃんも勇気を出してみないか?」
「は、はい……!」
「うんうん、絵菜ったらいいこと言うんだからー。そだね、緊張すると思うけど、長谷川くんもきっと嬉しいと思うよー。でもそうか、そうなると長谷川くんに日向ちゃんをとられてしまうのか……美味しくいただくつもりだったのに……ブツブツ」
「ふええ!? で、でも、お兄ちゃんのことは好きだし、みなさんのことも……好きです……」
「あはは、それだよ日向ちゃん、今俺らに言えたんだから、きっと長谷川くんにも言えるよ。自信持ってね」
「は、はい……!」
少しずつ自信がついてきたのか、日向の声が明るくなっていった。うん、やはり日向は元気な方が可愛い……というのは兄バカすぎるだろうか。
「みんなありがとう、日向も自信がついてきたみたいだよ」
「いやいや、大したことはしてねぇよ、でも日向ちゃんのためなら俺らはいつでも力になるぜ」
「うんうん、可愛い日向ちゃんのためならこれくらいなんてことないよー」
「わ、私も、日向ちゃんの力になりたい」
「あ、ありがとうございます……!」
それからしばらく五人で話していた。日向の味方も僕一人ではない。こんなにたくさんいるんだ。頑張って長谷川くんに「好きです」って言えるといいな。
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