第83話「友達」
あれから絵菜は2日学校を休んだが、その後は普通に学校に来ていた。
真菜ちゃんは今週は学校を休ませると絵菜が言っていた。昨日ビデオ通話で話した時は、『昼間は一人だからちょっと寂しいです』と笑いながら言っていた。
そして土曜日、火野と高梨さんも部活が休みなので真菜ちゃんに会いに行きたいと言っていたので、僕と日向は駅前に二人を迎えに行った。その後一緒に絵菜の家に行こうと思っている。
「おーっす、今日も寒いな、早く暖かくならねぇかな」
「やっほー、あのおいしいプリン買ってきたよ、みんなで食べよーね」
「ああ、ありがとう、それじゃあ行こうか」
火野の言うとおり、今日も風が冷たかった。やっぱり寒いのは苦手だ、早く春にならないかなと思っている。
みんなで話しながら、絵菜の家まで歩いてきた。僕がインターホンを押すと、『まあまあ、ちょっとお待ちください』と真菜ちゃんの声がした。すぐにドアが開くと、絵菜と真菜ちゃんが僕たちを迎えてくれた。
「い、いらっしゃい」
「まあまあ、みなさん今日はありがとうございます、寒かったでしょう、早く入って――うわっ!」
真菜ちゃんが言い終わる前に、高梨さんが猛ダッシュで真菜ちゃんに抱きついた。いつものように高梨さんファンが見たら羨ましい光景かもしれない。
「真菜ちゃーーん、会いたかったよぉぉ、怖かったねぇーよしよし、お姉さんはいつでも真菜ちゃんの味方だからねぇ」
「はわっ、優子さん、ありがとうございます、今日も綺麗ですね」
「おっす真菜ちゃん、元気そうでよかった、俺も優子も心配してたんだよ」
火野はそう言って高梨さんに抱きつかれている真菜ちゃんの頭をなでた。
「はわっ、火野さんもありがとうございます……私幸せ者です、みなさんにこんなによくしてもらって」
「あはは、みんな真菜ちゃんのことが好きなんだよ、困ったことがあったら何でも言ってね、力になるから」
「はわっ、あ、ありがとうございます……嬉しいです」
「なぁ、玄関で話さないで中に上がってくれないか……」
絵菜がぽつりと言って、真菜ちゃんが「ああそうです、みなさん上がってください」と慌てて姿勢を正した。うん、僕も心配だったけど、元気そうでよかった。
リビングに案内されると、お母さんが笑顔で飲み物とお菓子を持ってきてくれた。
「みなさんありがとうございます、寒かったでしょう、温かいもの飲んでね」
「お母さん、お久しぶりです! お母さん相変わらず綺麗なんだからーもー」
「まあまあ、優子ちゃん久しぶりね、しばらく見ないうちにまた美人さんになったんじゃない?」
お母さんと高梨さんがお互いを褒めまくっている。な、なんだろう、昔からこんな感じだったんだろうか。
「はじめまして、俺火野っていいます。俺も真菜ちゃんが心配でつい来てしまいました」
「まあまあ、はじめまして、絵菜と真菜の母です。いつも二人がお世話になっております。それにしても火野くんすごくカッコいいわね、びっくりしちゃった」
火野が褒められて照れているのを見ていると、いつの間にか横に来ていた真菜ちゃんが「お兄様、お兄様」と小声で話しかけてきた。
「ん? どうかした?」
「あの、火野さんはいつも以上にカッコよく、優子さんはいつも以上に綺麗に見えるのは気のせいでしょうか……」
「あはは、そうかもしれないね、二人とも真菜ちゃんのこと心配してたよ。早く会いたいってずっと言ってた」
「まあまあ、そうでしたか……でも、私はお兄様も負けないくらいカッコいいと思います」
「え!? あ、そうかな、自分ではよく分からないけど……あはは」
「真菜、団吉また困ってるから……ご、ごめん」
これまたいつの間にかそばで聞いていた絵菜がぽつりとつぶやく。だ、大丈夫、褒められることに慣れてないだけだから。
「それにしても、真菜ちゃん元気そうでよかったぁー、私もう心配で心配で、ずっとモヤモヤしてたよー。もう真菜ちゃん離さないんだから……絵菜、そろそろ私のものになってもいい頃よね!?」
「優子、落ち着いて……そろそろというのがよく分からないけど、真菜は私の妹だから……でも」
絵菜がそう言ってふーっと息を吐いた後、続けて話した。
「みんなありがと、真菜も私も嬉しい。みんながいてくれてよかった」
絵菜が少し恥ずかしそうに言うので、みんな笑顔で絵菜と真菜ちゃんを見つめる。
「おう、俺たちみんな友達だろ? 困った時は助け合っていかねぇとな」
「そそ、お互い様だよー。絵菜も真菜ちゃんもありがとね、そして可愛い日向ちゃんと真菜ちゃんは私のもの……ふふふふふ」
「ふええ!? あ、真菜ちゃん、また学校で女子の秘密の話しようね!」
「うん! あ、東城さんもぜひ一緒に!」
日向と真菜ちゃんが顔を合わせて「ねー」と言っている。だ、だから女子の秘密の話ってなんだ……?
「真菜ちゃん、元気出てきた? あんまり無理することないからね、学校なんて行きたくなってからでいいんだし」
「はい、大丈夫です、そういえば東城さんからたくさんRINEもらいました。日向ちゃんが話してくれたみたいで」
「そっか、東城さんも心配してたんだね。それはお礼言っておかないとね」
「はい、学校には日向ちゃんや東城さんや長谷川くんがいるし、私一人じゃないって改めて思いました、それに……」
なぜか急に「その、あの……」ともじもじする真菜ちゃん。続きがありそうなので何も言わずに待った。
「お兄様が、いつでもハグするって言ってくれたから、私頑張れます……お兄様のぬくもり、私大好きです」
「え!? あ、うん、できれば誰も見てない時がいいかな……あはは」
いやちょっと待て、誰も見てない時ってそっちのほうがヤバいのではないか? まぁいつでもいいか、真菜ちゃんが喜んでくれるなら。
「よし、沢井と真菜ちゃんが元気出るように、またみんなでこれやらねぇか?」
火野が「じゃーん」と言いながらトランプを差し出してきた。え、また持ってきたのか。
クリスマスイブの時と同じように二手に分かれてババ抜きを楽しむ。今度こそ僕が一番に……と思っていたが、また思いっきり負けてしまった。いや弱すぎだろ。
絵菜も真菜ちゃんも楽しんでくれたようで、たくさん笑っていた。二人の笑顔をこれからも大切にしたいと思った。
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