第71話「集合」
12月24日。今日は終業式の日だ。
今日は午前中で学校が終わる。全校集会があり、その後ホームルーム。ホームルームでは通知表をもらい、その結果にある人は喜び、ある人は落胆の顔をしていた。
僕は二学期も好成績を収めていたこともあり、通知表に刻まれた数字は立派なものだった。いや、自分で言うのもどうかと思うが、バイトをしているからこそ学業が疎かになってはいけないと思っている。三学期もこれまで通りの成績でいきたい。
「じゃあ、俺と優子は一旦帰ってから一緒に団吉の家に行くわ」
放課後になり、隣から火野が話しかけてきた。今日はこの後みんなが僕の家に来ることになっている。
「おう、了解。僕は帰って準備しておくよ」
「じゃあ、日車くんも絵菜もまた後でねー」
火野と高梨さんが手を振りながら教室を出て行った。
「絵菜はどうする?」
「私も一旦帰って、真菜と一緒に行こうかな」
「そっか、それがいいね、じゃあ帰ろうか」
「うん」
僕と絵菜は途中まで一緒に帰り、「また後で」と声をかけて別れた。一緒に帰るのもなんでもない日常だが、僕はこの時間がとても好きだ。
家に帰ると、先に帰っていた日向がエプロン姿でキッチンに立っていた。
「おかえりお兄ちゃん、さぁ忙しくなるぞー!」
「お、おう、ただいま、ってかもう作ってるのか?」
「もちろーん! みんな来るからね、ちゃんとおもてなししなきゃー」
「そ、そうか、じゃあ僕は先にちょっとリビングを片付けておくよ」
そういえば絵菜がうちに来た時も日向は「おもてなしー」って言ってたな。気に入ったのかもしれない。
それからしばらく経って、絵菜と真菜ちゃんが一緒に来た。
「いらっしゃい、さぁ上がって」
「お、おじゃまします」
「おじゃまします、お兄様、日向ちゃん、今日は呼んでくださってありがとうございます」
「あはは、いえいえ、今日の提案したのは火野と高梨さんだからね」
「まあまあ、そうだったんですね! お二人にもお礼言わないと!」
「絵菜さん、真菜ちゃんいらっしゃいませー、ささ、お席用意してありますので」
「おいおい、前から思ってたけどここはお店か?」
僕がツッコミを入れると、絵菜も真菜ちゃんもクスクスと笑った。
「あ、団吉、何か手伝おうか?」
「いやいや、絵菜と真菜ちゃんはゆっくりしてて。ここは僕と日向に任せてもらって大丈夫だから」
「そ、そっか、私できること少ないからな……」
「気持ちだけもらっておくよ、もうすぐ火野と高梨さんも来ると思うから」
絵菜と真菜ちゃんが来てから20分くらい経った頃、火野と高梨さんが両手に荷物を持ってやって来た。
「いらっしゃい……って、なんか大荷物だな」
「おーっす、持って行くものが多くなっちまったよ」
「やっほー、外は寒いねぇ、ちらちら雪が降ってたよー」
「え、そっか、もしかしてホワイトクリスマスってやつかな……とりあえず上がって」
火野と高梨さんをリビングに案内する。日向と真菜ちゃんを見つけた高梨さんは、すごい勢いで二人に抱きついた。高梨さんファンが見たら羨ましい光景かもしれない。
「やっほー、二人とも元気にしてた? 今日も可愛いねぇ、お姉さん食べちゃいたいよ」
「ふええ!? 火野さん、高梨さんお久しぶりです、私は元気ですよー!」
「火野さん、優子さんお久しぶりです、今日は呼んでくださってありがとうございます」
「あはは、おっす、久しぶりだね、沢井たちは早く来たのか?」
「あ、いや、そうでもない。20分くらい前に着いた」
「そっかそっか、あ、ジュース色々買ってきたぜ、みんな飲みたいの言ってくれー」
「ローストビーフとかケーキも買ってきたよー、日車くんごめん冷蔵庫入れさせてもらえるかな」
「ああ、ごめんありがとう、空いてるところに適当に入れていいよ」
みんなが揃って家の中が一気に賑やかになった。うちがこんなに賑やかになるのは想像できなかった。
「なになに、日車くんと日向ちゃん料理の準備してるの? 何か手伝おうか?」
「あ、大丈夫だよ、もうすぐ終わるから。ありがとう」
「そっかー、でもエプロン姿の日向ちゃんも可愛いねぇ、お姉さんドキドキしちゃうよ」
日向は高梨さんに頭をなでられて、「えへへー」と嬉しそうな顔をしている。気をつけろ日向、食われるぞ。
「おっ、これメロディスターズのCDか?」
火野がリビングにあるコンポの横にあったCDを見て言った。
「ああ、そうそう、あれからCD買っちゃったよ、聴いてみる?」
「おお、そうだな、せっかくだし聴きたいな」
CDをコンポにセットして再生する。一曲目はライブでも歌っていたデビュー曲の『メロディライン』だ。
「いいねぇ、私もあれからメロディスターズの曲よく聴くようになったよ。あ、今日東城さんも誘ってみればよかったかな? 日車くん連絡先知ってたよね?」
「え!? ま、まぁ知ってるけど、さすがに忙しいんじゃないかな……」
「聞いてみるだけでもいいんじゃない? 忙しかったら断るだろうし」
「ふふふー、私と真菜ちゃん、東城さんとRINE交換しました! 聞いてみますねー」
日向がスマホを片手にドヤ顔を見せた。え、いつの間にそんなに仲良くなってるの……って、人のこととやかく言えないか。
「おおー、日向ちゃん真菜ちゃんナイス! どうかなどうかなー」
「……あ、東城さん返信早い! えっと、『お邪魔でなかったらぜひ行きたいです!』とのことです。私後で迎えに行ってきますねー」
「あ、日向ちゃん私も行きたい!」
「よっしゃ、じゃあ日向ちゃんと真菜ちゃんと私の三人で行こうか! 楽しくなってきたー」
ま、マジか、東城さんは本当に予定とかなかったのだろうか。まぁ高梨さんの言う通り忙しかったら断るはずだから、今日はたまたま空いていたのだろう。
それにしても、友達と過ごすクリスマスイブとはこういう感じなのか。今まで経験がなかったから知らなかった。なんだか楽しくなってきた自分がいた。
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