第31話「久しぶり」

 テーブルに、たくさんの料理が並んでいた。

 から揚げ、豚の生姜焼き、ポテトサラダ、ホッケの開き、麻婆豆腐……などなど。ちょっと母さん頑張り過ぎなんじゃないかと思うくらい、豪華だった。

 

「母さん、めちゃくちゃ頑張ったね……」

「そうよー、絵菜ちゃんにたくさん食べてもらいたくてね」

「はいはい! ポテトサラダと麻婆豆腐は私が作ったんだよー」


 うちの四人掛けのテーブルに四人座ることは久しぶりだった。みんなでいただきますを言って、食べ始める。

 

「絵菜さん! ポテトサラダどうですか?」

「うん、おいしい」

「ほんと!? よかったぁー。お兄ちゃんはどう?」

「ああ、おいしいよ」

「よーし! やったね!」


 ホッとしたのか、日向がニッコリと笑顔を見せる。

 

「ふふふ、日向ったら嬉しそうねー、今日もずっとそわそわしてて、お掃除しながらまだかなぁーまだかなぁーって言ってたわね」

「お、お母さんそれは言っちゃダメー!」


 ブンブンと手を振りながら慌てる日向を見て、僕も絵菜も笑った。



 * * *



 夕食を食べ終わった後、みんなでまた少し話した。

 相変わらず日向のテンションが高く、怒涛の質問攻めだったが、絵菜は嫌な顔せずニコニコして答えてくれた。

 絵菜と日向もすっかり仲良くなったようで安心した。最初は不思議そうな目で絵菜のこと見てたもんな……。

 

「あ、もうこんな時間か、そろそろ帰らなきゃ」

「あ、そうだね、家まで送るよ」

「うん……ありがと」

「えー! 絵菜さん泊まっていけばいいのにー」

「おいおい、無茶言うなよ……絵菜も帰らないと怒られるよ」


 ぶーぶー文句を言う日向だった。

 

「はー、仕方ないなぁ、絵菜さんまた来てくださいねー!」

「うん、ありがと」

「あら、絵菜ちゃん帰るの? 気をつけてねー。団吉ちゃんと送るのよ」

「はい、ありがとうございました、おじゃましました」


 絵菜が母さんと日向に挨拶をした後、僕たちは家を出た。

 

「ごめんね、日向なんかテンション高くて……うるさかったでしょ」

「ううん、楽しかった。いい妹さんだな」

「うーん、もう少し兄から離れてくれてもいいんだけど……」

「そのうち彼氏ができたら離れていくかもしれないから、今のうちに甘えてるのかも」

「そうだなぁ、その時までは我慢することにするよ」


 そう話しながら僕が笑うと、絵菜もクスクスと笑った。


「あのさ、そのうち、うちにも来てくれないか? 真菜と母さんが会いたがってる」

「あ、うん、ぜひぜひ、お邪魔でなければ」


 色々と話しながら絵菜の家の前まで来ると、真菜ちゃんが立っているのが見えた。

 

「あ、お姉ちゃんおかえりー」

「あれ、真菜、どうして」

「お姉ちゃんから帰るってRINEきたから、待ってたんだよ。あ、お兄様こんばんは! 今日は姉がお世話になりました」


 そう言って真菜ちゃんは深々と頭を下げた。

 

「あ、真菜ちゃんこんばんは、久しぶりだね」

「はい! お姉ちゃんがお兄様とデートするって聞いて、いいなぁと思っていました。楽しかったですか?」

「あ、うん、楽しかったよ」

「それはそれは! いいなぁ、いつか私ともデートしてくださいね」

「え!? う、うん、分かった」

「おい真菜……団吉困ってるから……」


 僕は妹に好かれる何かがあるのだろうか。


「いつかうちにも遊びに来てください! お母さんも会いたいって言ってたし、私もお話したいです」

「うん、ありがとう、遊びに行かせてもらうね」

「じゃ、じゃあ……団吉、今日はその、ありがと」

「ううん、こちらこそありがとう」

「あ、またRINEしてもいいか?」

「うん、もちろん。僕も送るね」


 絵菜と真菜ちゃんが手を振りながら家に入って行くのを見て、僕はとてもあたたかい気持ちになっていた。

 

(絵菜と真菜ちゃんのお母さんはどんな人なんだろうな……あ、会うのはまた緊張するかもしれない)


 そう思いながら、家へと帰った。

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