88歳

第０話「古参の頑固者」

　型式（わし）はHBT7、宇宙戦艦の動力源（どうりょくげん）である転換（てんかん）炉（ろ）を内蔵する機関（きかん）部（ぶ）じゃ。

　しばらく虚空（こくう）を漂流しておったが運よく回収されてのう。整備（せいび）工廠（こうしょう）で修復を終えて待機しておったが、いよいよ出番の様じゃな。

　こんどの乗艦（じょうかん）の構造体は、型式（わし）に比べて若いヤツが多いのう。力場（りきば）制御部は新品じゃし戦闘指揮部は最新式ときた、随分（ずいぶん）と奮発（ふんぱつ）しておるようじゃ。

　若いと言えば艦長は17歳とな、大戦の頃は人手不足で卒業前の候補生が多かったのを思い出すのう。

　大戦中は何もかも不足しておったから貴重な転換炉を失うなど以（もっ）ての外（ほか）でな、機関部は厳重な防護対策が施（ほどこ）されたもんじゃて。

　お蔭で型式（わし）も、人間で言えば88歳の今だに現役バリバリじゃわい。

　そうもいかん構造部もある主武装の粒子（りゅうし）砲（ほう）じゃ、こいつは寿命が短くていかん。

　実用的な連射（れんしゃ）耐久度を確保する為に出力を抑（おさ）えて使用するのじゃが、結局のところ戦闘後には廃棄（はいき）されるのが粒子砲の宿命なのじゃ。

　このような粒子砲で敵の防御を突破するにはどうするか、それは装備している全ての粒子砲を一つの目標に集束（しゅうそく）し、それでも足りなければ二艦、三艦と撃破できるまで増やしていく連係攻撃を行うのじゃ。

　こうして数の優位を保つ必要があって、宇宙戦艦は艦隊を組んで運用される様になったんじゃよ。

　型式（わし）の経験から長距離（ちょうきょり）砲撃では敵艦の防御力場を突破するのも難しいハズなのじゃが、うちの艦長が指揮すると直近で直撃した如（ごと）く力場は消し飛び、複合装甲が溶けて逝（い）くのには驚いたのなんの。

　あの攻撃力は理解不能じゃ。まあそれでも型式（わし）なら生き残って見せるがのう。

　年寄りは話がくどくて長いじゃと？お前さんが次の機会まで生き延びられていたなら、今回の軽口（かるくち）は忘れておいてやるさ。

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　台詞（せりふ）は無いですが機関部HBT7も登場してます。

　関連作「ようこそ我が艦隊へ！新入生の皆さん宇宙実習の時間ですよ」は、こちら

　https://kakuyomu.jp/works/16817139555262222732